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オーイシマサヨシ×Tom-H@ckによるデジタルロックユニットOxT(オクト)、13枚目のシングル「HIGHEST」がリリースされる。表題曲は、大人気ライトノベルが原作のTVアニメ『陰の実力者になりたくて!』のOPテーマとなった。ここでは、「主人公最強×圧倒的中二病×勘違いシリアスコメディ」という、ひと癖あるアニメの作品性にも溶け合う本作についてOxTの2人にインタビュー。Tom-H@ck 所属の別ユニットMYTH & ROIDの楽曲をカバーしたカップリング楽曲についても制作秘話を聞いた。

作品のOPテーマとしての“面食らう感” を追求して



――今回のシングルの表題曲「HIGHEST」の作曲は、どういった経緯でTom-H@ckさんが担当することに決まったのでしょうか。

Tom-H@ck 初めはKADOKAWAの音楽プロデューサーの若林 豪さんから、「今後OxTとして活動していくなかで、“OxTとしての見せ方“をきちんと決めなくちゃいけない」というテーマを出していただいたんです。そこで、過去に僕たちが担当したアニメ『ハンドシェイカー』のOPテーマ「One Hand Message」でのギターバトルのような、お互いのスキルを押し出してコラボするからこそできる楽曲を作るのがいいんじゃないかと。お互いに独立して色んな活動をしているからこそ、OxTでやるときの特別感はないといけない。そのうえで今回、『陰の実力者になりたくて!』のOPテーマとして(制作サイドから)”テクニカルな曲”というオファーをいただきました。

オーイシマサヨシ テクニカルでトリッキーな曲は、僕よりもTomくんの方が得意かなと思ったので、全幅の信頼を置いてお任せしました。

©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン

――お話に出た”OxTとしての見せ方“、そして『陰の実力者になりたくて!』のOPテーマという点も含めて、Tomさんはどういう風に作り始めたんですか?

Tom 今回の楽曲に関してだけは、若林プロデューサーが敷いてくれたレールの上を行かせていただいたという認識があります。もちろん、原作の要素も加味して「ここにこういう言葉を入れよう」といったことを(作詞を担当した)hotaruとも話すのですが、今回は特に、今までにないような曲というのを強く意識しています。

(編曲を担当した)KanadeYUKくんに「テクニカルな感じで仕上げてほしい」と託して出てきたものもかなり変わっていて、例えばサビ前のキメのフレーズの最初には16分休符が入っているんです。僕だとなかなか思いつかない未開拓の価値観でしたし、色んな人とのコラボレーションから作品のOPテーマとしての“面食らう感”が上手くできたかなと思いました。あとは、オーイシさんの裏声を使いたいというのもありましたね。なので、サビで裏声が出るような音域に作った記憶があります。

オーイシ サビ頭はちょっと不思議な音像になっていて、裏声とそのオクターブ下の声が同じくらいの音量で聴こえているのが、今までのOxTにない感じが出ているなと思います。

――このほか、曲作りにあたって特に意識した点はありましたか?

Tom 「一度聴いたら忘れないようなメロディーをサビの頭に入れてほしい」という指示もあったんです。なので、口ずさみやすく、でも少しJ-POPとは違う、そういう感じをこだわって作りました。あと、(若林プロデューサーに)「Bメロをおかしなものにしてほしい」とも言われたんですよ。Bメロが2つあって後半はラップみたいになるんですけど、オーイシさんから色んなボーカルテイクをいただきましたね。

オーイシ 確かに、2つに分かれている感じがあるよね。Bメロは音符じゃない感じを求めている気がしたので、メロディーを入れたものと、本当にメロディーのないラップっぽいトラックを両方渡して、どっちを選んでもいいようにしたら、結果、全部出すことになりました。

Tom 今聴くとラップ感は強いですね。

オーイシ 確かに。でも今までにない工夫というと、セクションの多い構成、TVサイズの中にAパートからEパートまで含まれた楽曲は、OxTの曲だけじゃなく、アニソンのなかでも非常に珍しい部類かなと思っています。その辺りがテクニカルで奇をてらった感じなのかなと。とっ散らかっている感じもしないし、よく出来ているなと思いますね。あとは、「覚える音符多いな」と思いながら(笑)、ボーカルを録っていました。

――hotaruさんの詞に関してはいかがですか?

Tom 彼はロジカルに歌詞を組み上げていくのが一番得意だなと思っていて。企画がかっちりしている今回のような楽曲はまさに得意分野ですよね。それから、彼は原作をきちんと深く理解して(詞を)書く人間なので、今回僕からは何も言っていないです。



テクニカルな歌唱も「リテイクなし」だったレコーディング



――オーイシさんはどういうアプローチで歌いましたか?

オーイシ まず一番難しかったのはキー決めで。どういうキーにするのかが、最初にぶつかった壁でしたね。

Tom 僕が曲を作った当初は、現状のものより6音くらい上だったんですよ。それをアレンジャーにちゃんと男性の歌えるキーにしてもらって。

――最終的に、普段オーイシさんが歌う曲と比べても高いんでしょうか。

オーイシ いや、そんなことはないですね。ライブの再現度も考慮したうえでのキー決めだったので全然大丈夫でした。ファルセットに合わせて他のボーカルも作っていくんですけど、すごくセクションが多い楽曲なので、歌うのは難しそうだなという印象でしたね。

――ちなみにレコーディングはどういう感じでしたか?

オーイシ 僕の全ての作品においてそうなんですけど、この6〜7年くらいボーカルは家で自分1人で録っていて。

――そうなんですね。ちなみにその利点というと……?

オーイシ 一度作った(機材の)セッティングをそのままで録音できる。あと、何度もリテイクできるところですね。スタジオを借りて録ると、どうしてもセッティングをそのままで何度も録り直すということができない。後日リテイクするという、ある意味タブーなことができてしまうのが自宅スタジオで録る利点です。

でも1つデメリットがあって、それはゴールが見えないこと。「もっといいボーカルが録れるんじゃないか」という、ぼんやりとした期待感のなかでレコーディングに臨んでしまうので、何回もリテイクをしてしまうのはデメリットかな。ただ、それをディレクションしてくれるのがTomくんだったりするので、そこはもう頼りにしてます。「HIGHEST」のボーカルに関しては、リテイクはなかったですよね?

Tom そうですね。

――Tomさんのギターレコーディングはいかがでしたか。

Tom オーイシさんがこう来たからギターはこういう風にしようというのは、毎回自然となっています。今回も最初は鋭い感じのギターのイメージでしたけど、オーイシさんの歌を聴いて、もっと支えるようなギターの方がいいと思ってレコーディングしました。

――楽曲として完成したものを聴いての感想はいかがでしたか?

オーイシ OxTは2人とも楽曲が作れるから、視点が2つ用意されているような感じなんですよ。Tomくんの視点と僕の視点ではまったく違うと思っていて、今回はTomくんベースでクリエイトが進んでいったので、僕はボーカリストとして呼ばれた感覚がすごく強いんです。今回の「HIGHEST」のトラックダウンのときは、自分たちのスタジオなのに、僕は「お邪魔します」と言って入っていったから。

一同 (笑)

オーイシ 「あんたボーカリストでしょ」という感じなんですけど(笑)、でもそれがまたOxTっぽいんですよね。

ボーカリストの力量が問われる、MYTH & ROID楽曲のカバー



――さて、カップリングの「Paradisus-Paradoxum(Mare Tranquillitatis)」についても伺います。この曲は2016年リリースのMYTH & ROIDの楽曲のカバーですが、どういう経緯で選曲されたんでしょうか。

Tom まず、MYTH & ROIDのシングル「Endless Embrace」のカップリング曲で、オーイシさんが作曲されたOxTの「Clattanoia」(アニメ『オーバーロード』OP)を、MYTH & ROIDのボーカルのKIHOWちゃんがカバーするというプロジェクトが先にあったんです。その時はテンポもアレンジもかなり変えて作ったんですけど、その出来がすごく良かったんです。僕がOxTとMYTH&ROIDという2つのユニットの架け橋になっているので、それをお互いがカバーしあったら面白いんじゃないかと。それでオーイシさんにどの曲がいいか話を振ったところ、「Paradisus-Paradoxum」が挙がりました。

――なぜこの曲を?

オーイシ 単純に好きだからです(笑)。あと、この曲はMYTH & ROIDの曲の中でも日本語詞が多いんですよ。カバーするにあたってBPMを少し抑えたバラード調にすることは決まっていたんですが、速いパッセージだったら気にならなかった発音も、バラードにしたら気になってくるじゃないですか。でもこの曲なら日本語詞も多くて歌いきれるなと思ったし、シンプルに歌ってみたいと思ったんですよね。

――今回カバーするにあたって、Tomさんが改めて感じたことはありますか?

Tom テンポを落としてアレンジを変えたんですけど、基本的なコードの積み上げはまったく変えていないので、個人的には真新しさはないですね(笑)。

オーイシ いや、僕は逆に真新しさはあったけどね。こんなに複雑な和音構成で作られていたんだなと思って、改めて「Tom-H@ckは天才だ」と思いました。

Tom 原曲はストリングスを生でレコーディングしているんですが、当時このストリングスラインを現代音楽風に落とし込んだんです。今回、それをストリングスじゃなくて(DTMの)パッドで鳴らしたので「当時こんなことを実験でやっていたんだな」というのは、作っているときに思い出しました。

――実際に歌ってみて、オーイシさんはどうでした?

オーイシ やっぱりBメロが難しいですね。入りが低いし、裏で鳴っている和音の構成がスリリングだからそこに引っ張られたり、歌いきれないテイクも何個かあったので、ここが一番録り直したかもしれません。でも単純に透明感のあるグッドメロディでしたので、あとはそこに身を任せる感じでした。ロマンチックな表現をすると、泉の中に自分がぷかーっと浮いているような感覚で気持ち良かったですね。

――でも、すごくボーカルの力量が必要なアレンジになっていませんか?

Tom オーイシさん、歌えない曲がないんですよ。

オーイシ いや、そんなことないですよ(笑)。もう大変です。でもやっぱり、いい機会なので自分としては色々試していて、音符では表現できない細かい息遣いは結構気をつけていました。普段ならブレスを切ったりすることもあるんですけど、息遣いすらもリズムを取っているようにするのを意識しながら今回は歌ってみました。



肩の力を抜いて、OxTを長く続けたい



――以前のインタビューで、「OxTは戻ってくる場所のような感覚もある」とおっしゃっていましたが、逆にこの先を見据えてOxTとしてやりたいことはありますか?

オーイシ 9月にライブをやって改めて「OxT楽しいな」と思ったのはもちろん、「すごくエキサイティングだな」と思ったんですね。自分も色んな名義でライブツアーをやっていますけど、やっぱりOxTでしか感じられないアスリート感がありますし、「改めてこの場所は大事にしたいな」とも思います。ただ、OxTって野望を大々的に提示しないことが良さなのかなとも思っているんですよ。なので、現時点でOxTがこうありたいというものとしては、「長く続けたい」というただその1点です。

Tom 同じですね。今のオーイシさんの話を聞いて勘違いしてほしくないのは、アーティストとか夢を与える側の人間は、ストイックに全てを懸けなくちゃいけないという“美”があると思うんですよ。でも現代は今まであった固定観念とは違う、まったく裏の価値観が息づいていたりするじゃないですか。それと同じものを僕はOxTで感じているし、大事にしたいなと思っています。あと哲学的ですけど、人間社会や人生で長くやっていくことに対しての逆説的なストイックさとかも大事だと思うんです。それを具現化したのがOxTなのかな。

オーイシ そうですね。だから「かっこつけすぎなくてもよくない?」というのもあるし、逆に今回のように新規の作品のお仕事のお話をいただけるということは、OxTとしての価値を見出してもらえているのはもちろん、各々がOxTとは別の形で頑張っているからこそだと思うので、ある意味副業的な、肩の力を抜いた形で2人が集まって好きな音を奏でる、という場所があってもいいんじゃないかなと思います。

INTERVIEW BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

TEXT BY 河瀬タツヤ

●リリース情報

OxT

「HIGHEST」

10月26日発売



品番:ZMCZ-16041

価格:¥1,320(税込)

■mora

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<収録曲>

1. HIGHEST(TVアニメ『陰の実力者になりたくて!』OPテーマ)

2. Paradisus-Paradoxum(Mare Tranquillitatis)

3. HIGHEST (instrumental)

4. Paradisus-Paradoxum(Mare Tranquillitatis) (instrumental)

●作品情報

TVアニメ『陰の実力者になりたくて!』

放送・配信中



[放送情報]

AT-X:毎週(水)22:30〜ほか

TOKYO MX:毎週(水)23:30〜

テレビ愛知:毎週(木)26:35〜

KBS京都:毎週(水)24:30〜

サンテレビ:毎週(水)24:30〜

BS日テレ:毎週(水)24:30〜

[配信情報]

ABEMA、dアニメストア にて地上波先行・最速配信中

その他サイトでも配信中。詳細は公式サイトをご確認ください。

<イントロダクション>

「陰の実力者」 それは、主人公でも、ラスボスでもない。

普段は実力を隠してモブに徹し、物語に陰ながら介入して密かに実力を示す存在。

この「陰の実力者」に憧れ、日々モブとして目立たず生活しながら、力を求めて修業していた少年は、事故で命を失い、異世界に転生した。

シド・カゲノーとして生まれ変わった少年は、これを幸いと異世界で「陰の実力者」設定を楽しむことにする。

「妄想」で作り上げた「闇の教団」を倒すべく(おふざけで)暗躍していたところ、どうやら本当に、その「闇の教団」が存在していて……?

ノリで配下にした少女たちは勘違いからシドをシャドウとして崇拝し、シドは本人も知らぬところで本物の「陰の実力者」になっていき、そしてシドが率いる陰の組織「シャドウガーデン」は、やがて世界の闇を滅ぼしていく――。

主人公最強×圧倒的中二病×勘違いシリアスコメディ!?

シリーズ累計200万部超の人気シリーズが、2022年TVアニメ放送決定!

©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン

関連リンク



OxT公式サイト

http://www.oxt-music.com

オーイシマサヨシ公式Twitter

https://twitter.com/Masayoshi_Oishi

Tom-H@ck 公式Twitter

https://twitter.com/TomOshima_TH

TVアニメ『陰の実力者になりたくて!』公式サイト

https://shadow-garden.jp/