60代、無理するくらいなら孤独でいい。面倒な人づきあいをラクにするコツ
年齢を重ねるほど老後の不安は出てくるもの。その不安を解消するため、食事やし好品、お金などを節制して将来に備えている人も多いはず。そういった考えに反対するのは、話題の書籍『60歳からはやりたい放題』(扶桑社刊)を上梓した精神科医の和田秀樹さん。今回は、本書の中から60歳からの人づきあいのコツについて紹介します。
60代からは「やりたい放題」でいい。面倒な人づき合いをラクにするコツ
「嫌な人とつき合うよりは、孤独でいい」と和田さんは語ります。家族、友人との関係、そして孤独との向き合い方について教えてくれました。
●子どもに介護を期待しない
60代以降の家族とのつき合い方を論じる上で、避けて通れないのが「介護」と「子ども」の問題です。
日本という国では、欧米に比べて、自分の親が認知症や要介護になると、とても面倒見がよい人が多いです。施設には入れようとせず、在宅介護で一生懸命、介護しようとします。美徳のようでもありますが、じつは非常に封建的な一面といってもいいでしょう。
その半面、日本は親が元気なうちにコンタクトをする回数においては、先進国のなかではもっとも少ない国といっていい状況です。
たとえば、欧米では、もっと密な親子関係が一般的です。海外ドラマなどを見ても、大人になっても「ママ」にはずっと頭が上がらなかったり、スープの冷めない距離に住んでいたり、親の家でパーティをしたり…。多い人では週に一回、少ない人でも月に一度くらい、親と食事を共にすることも海外では珍しいことではありません。
でも、日本でそれほど密な親子関係を築くと、マザコン・ファザコンといった依存関係を疑われるでしょう。夫が週に一度、母親に連絡するだけでも、マザコンだと言いきってしまう女性も少なくないでしょう。
日本では、ふるさとは遠くにあって思うもの。親に会うのは盆暮れ正月くらいのもので、実家に帰ることも少ないため、子どもに対しては、自分が元気なうちの「親孝行」は期待できないものと考えたほうがよいでしょう。
日本の場合は、親孝行をしたいと考えたとき、すでに親は要介護になっているケースが多いものです。長い間、ほったらかしにしていた罪悪感から、挽回するために介護を頑張る風潮があるのだと私は思っています。
●嫌な人とつき合うくらいなら孤独でもいい
「夫婦」「親子」と同様に役割に縛られるがゆえに、無理して関係を続けるべきではないのは友情関係においても同じです。
友達はとても大事なもので、配偶者には見せたくないような面でも受け止めてくれます。いい距離感を持てている友人であれば、それは一生モノのおつき合いをするべきでしょう。整理すべきなのは、これまで惰性やしがらみでつき合っていた人たちです。
たとえば、仕事の上で業務を円滑にするために友達のような関係を築いていた人や、ママ友のように子どもがいたからこそ仲良くしなければならなかった人たちと、老いてからも無理につき合う必要はありません(もっとも、そのような関係は自然と切れていくものではありますが…)。
まず、大前提としては、老後も誰かとの人づき合いを維持するに越したことはありません。心身共に老化予防になりますし、メンタル面にもよい影響が多いといえます。ただし、義務感で仕方なくつき合っていたような人がいるのであれば、逆にストレスやうつ病の原因になりえます。
自分にとって余計な人間関係は維持しなくてよいのです。昔の上司や先輩とのつき合いを続けている人も多いかもしれませんが、昔と違い、そこには金銭が発生しません。ときがたってみれば友情関係も生まれているかもしれませんが、そうでない場合、無理してつき合う必要はありません。
ストレスを感じる人間関係ならばつき合いを控え、新たな人間関係を開拓するほうが、人生は幸福に生きられます。
●孤独は避けるべきものではない
孤独が避けるべきものだと思うのは、ある種、私たちの勝手な価値観だと思います。
多くの人は、周囲から人が離れて、自分が孤独になったとき、「これはいけないことではないか」と思いがちです。でも、周囲の人間関係がなくなったとたんに、スカっとさわやかな気持ちになって、自分の人生と向き合い始める方もいます。
孤独になれば周囲からいろいろ言われる機会も減るので、いよいよ第二の人生として自分の人生を謳歌し始めるケースもあるようです。「人と仲良くしなければならない」「うかつなことを言わないように、周囲の人に合わせなければならない」というのは、ある種、我々の勝手な思い込みなのかもしれません。
また、60代以降は「性格の先鋭化」が顕著になります。「じつはひとりのほうが気楽だった」という人は、もっとひとりを好むようになります。だからこそ、60代以降の人間関係は「したい人だけすればいい」と思います。人とコミュニケーションをとると疲れてしまうならば、無理する必要はないのです。
『60歳からはやりたい放題』(扶桑社刊)では、ほかにも長生きの鉄則、よい医師や病院の選び方、そして人生の楽しみ方など、老後の暮らしがラクになるコツが満載です。ぜひチェックしてみてくださいね。