神奈川県警には唯一無二の警察車両が存在します。それは全世界でたった422台しか製作されなかったR33スカイラインGT-Rの4ドア仕様がベースの交通取締用パトカー。そんな希少車が2022年9月、イベントで披露されました。

現存は世界でも1台のみ 4ドア仕様GT-Rパトカー

 神奈川県の有料道路、小田原厚木道路にある大磯PAで2022年9月21日(水)、交通安全キャンペーンが開催されました。

 このイベントは秋の全国交通安全運動に合わせて神奈川県警が実施したもので、交通安全グッズの配布などが行われる中、来場者の目を集めていたのが、第二交通機動隊に配備されている日産「スカイラインGT-R」パトカーの展示でした。


大磯PAで行われた交通安全キャンペーンで展示された神奈川県警のR33スカイラインGT-Rパトカー(柘植優介撮影)。

 スカイラインGT-Rパトカーというと、2022年9月現在「R34」と呼ばれる最終型を埼玉県警が保有していますが、神奈川県警の車両はひと味違います。こちらは「R33」というひとつ前のタイプ、加えて4ドア仕様なのがポイントです。

 これは「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」と呼ばれるもの。その名が示すとおり、日産車のチューニングや特装車の企画・開発を手掛けていたオーテックジャパン(現日産モータースポーツ&カスタマイズ)が、スカイライン誕生40周年を記念して生み出した特別仕様で、たった422台のみ製作された限定車です。

 4ドアのため、一見するとセダン仕様のスカイラインをGT-Rテイストにチューニングしたように思えますが、そうではなく、2ドアのGT-Rをベースに金型から新たに起こしたリアドアとリアフェンダーを取り付ける形で造られたそうです。

セダン並みの使いやすさとスーパーカーに比肩する走行性能を両立

 ほかにも、2ドアのスカイラインGT-Rでは標準で装備されているリアスポイラーを取り外したり、フロントバンパーも専用品に交換したりして、2ドアのGT-Rと比べ落ち着いたテイストにまとめられています。

 とはいえ、フロントグリル中央や後部トランクリッド右端には「GT-R」のエンブレムが輝いており、パトカー仕様でも外されることなく付いたままです。なお、トランクリッドの左端には、これまた「Autech Version(オーテック・バージョン)」のエンブレムが存在感を放っています。


大磯PAで行われた交通安全キャンペーンの様子。NEXCO中日本の道路パトロールカーや白バイも展示されていた(柘植優介撮影)。

 荒天時でも高い走行安定性を発揮する4WDの足回りと、最高出力280馬力、最大トルク37.4kgmを発揮する水冷直列6気筒DOHCターボエンジン「RB26DETT」により、交通取締用パトカーとして屈指の走行性能を誇っています。ただ、この「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」がパトカーとして優れているのは足回りやエンジンだけではありません。

 4ドアのため、違反者や被疑者を車内に収容しすいのです。この点は2ドア仕様のパトカーにはないメリットだといえるでしょう。クラウンやレガシィなどがベースの4ドアセダンパトカーと同じ使いやすさを持ちながら、動力性能は2ドアのスカイラインGT-Rと同等、そして路上を走っている際に醸し出す存在感や交通違反に対する抑止効果も一定程度持っているという、ある意味「最強」のパトカーだといえるでしょう。

民間登録された車体も残っているのは希少

「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」は前出のとおり総生産台数は422台で、そのうち4台が警察車両になっています。


大磯PAで行われた交通安全キャンペーンで展示された神奈川県警のR33スカイラインGT-Rパトカー(柘植優介撮影)。

 導入したのは埼玉県警と神奈川県警で、どちらも交通取締用としてですが、前者は反転警光灯付き、いわゆる覆面パトカーで、後者のみ白黒仕様として導入しました。なお、「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」が販売されたのは1998(平成10)年1月で、神奈川県警に配備されたのは同年9月、そして12月にはR33のスカイラインGT-R自体が販売を終了しているため、パトカーとして調達された4台は、すべて1998(平成10)年式です。

 それから四半世紀近く経っているため、2022年9月現在、現役で残っているのは神奈川県警第二交通機動隊の1台のみ。その点では極めて希少なパトカーだと形容できるでしょう。ある意味、いつ運用を終えてもおかしくない激レア車両といえます。

 ちなみに、民間の「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」、インターネットの中古車サイトなどで検索してみると、四半世紀前の車体であるものの概ね900万円程度から、モノによっては1400万円で並んでいました。