iOS 16には大小さまざまな新機能が加わっている。写真のeSIM転送も、その1つだ(筆者撮影)

iPhone 14シリーズの発売に先立ち、iOS 16の配信が9月13日に始まった。本連載でもパブリックベータ版を取り上げたが、最大の目玉はiPhone史上最大の変化となるロック画面。時計の書体や色をカスタマイズできたり、ウィジェットを配置できたりと、ロック画面を見るだけで必要な情報を取得できるようになった。iPhone 14 ProやiPhone 14 Pro Maxは常時表示のディスプレーに対応しているため、新しいロック画面をさらに生かすことができそうだ。

一方で、アップデートされた機能はこれだけではない。大小合わせると、さまざまな機能が新たに加わっている。細かくて見逃されがちだが、設定してみると便利な機能も少なくない。標準設定ではオフになっているものもあり、設定の中身を1つひとつ丁寧に見ていかないと気づかない機能も存在する。せっかくOSがアップデートされたにもかかわらず、それを使わないのは宝の持ち腐れと言えるだろう。

そこで今回は、見逃されがちな一方で設定すると利便性が大きく向上するiOS 16の新機能を紹介していきたい。こうした機能の多くは、一部非対応の端末はあるが、過去に発売されてきたiPhoneにも対応する。ここでは、キーボード入力時の振動フィードバックや、バッテリーの残量表示、eSIMの機種変更機能の3つを紹介していこう。

キーボードが触覚フィードバックに対応

iPhoneのキーボードが、タップするとカチカチという音が鳴り、キーを押したことが聴覚を通じて伝わる仕様になっている。キーボードと言っても物理的なそれではなく、画面上に表示されるソフトウェアキーボードのため、疑似的な音をつけることで、キーを押した感覚を再現しているというわけだ。一方で、キーボードのサウンドは、消音モードにしていると機能しない。公共の場所で使うには、少々うるさいという問題もある。


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競合他社のAndroidスマートフォンは、以前から端末のバイブレーションでフィードバックを返す機能が搭載されていた。これに近いフィードバックが、iOS 16で搭載された。設定しておけば、消音モードのときにも端末からわずかに振動が返ってくるため、キーをタップしたことが触覚を通じて把握できる。キーを押したかどうかわかりやすいことに加え、間違って同じキーを2回タップしてしまった際に気づきやすいなど、設定しておくメリットは大きい。

残念ながら標準ではオフになっているため、iOS 16にアップデートしたら、振動でのフィードバックを有効にする必要がある。設定メニューは「一般」の「キーボード」ではなく、「設定」アプリの「サウンドと触覚」にまとめられている。この画面を開いたら、「キーボードのフィードバック」をタップする。標準の状態では、「サウンド」だけが有効になっている。


「設定」の「サウンドと触覚」で、「キーボードのフィードバック」を選び、「触覚」を有効にする(筆者撮影)

このメニュー内部にある「触覚」のボタンをオンにすると、キーボードでの触覚フィードバックが有効になる。

iPhoneは、iPhone 7でホームボタンを物理的なボタンからセンサーに変えたころから、疑似的に押し込んだ感覚を再現する触覚フィードバックに取り組んできた。

iPhone 11シリーズからは、感圧式の押し込み操作を行う「3D Touch」を廃止し、代わりに振動で押し込んだような感覚を伝える「触覚タッチ」を採用している。

キーボードの触覚フィードバックにも、こうしたノウハウが生かされており、タップすると、まるで本物のキーを押したかのような感覚になる。ただし、触覚フィードバックが有効になるのは、iOSに搭載されている標準のキーボードだけ。サードパーティ製のアプリには効果がない。アプリの中には独自機能として触覚フィードバックに対応しているものもあるので、必要なときはそちらを利用するといいだろう。

バッテリーの残量を%で表示する

バッテリーの残量を、1%単体の数字で常時表示できるようになったのも、iOS 16からだ。元々iPhoneでは同様のことができたが、バッテリーメーターの横に残量が表示されていた。ところが、iPhone X以降のiPhoneは、フロントカメラやFace IDなどに使うセンサーが画面上部に配置され、ディスプレー部分に食い込むような“ノッチ”を採用。それに伴い、上部に各種情報を掲載できるスペースが少なくなってしまい、バッテリー残量を数値で表示できなくなった。

数値が表示できなくてもバッテリーメーターでおおよその残量は把握できるし、画面右上を下方向にスワイプしてコントロールセンターを開けば細かな数値が表示される。iOS 15で採用されたウィジェットを使って、ホーム画面に常時バッテリー残量を表示する手もあった。一方で、どのぐらいバッテリーが残っているのかを正確に把握したいニーズは根強かった。ウィジェットも、ホーム画面のスペースが埋まってしまうのは難点だったと言えるだろう。

そんな課題が、iOS 16で解決された。ディスプレー上部のスペースが狭いのは変わっていないが、バッテリーメーターの中に数値を表示するという方法でこれを実現。やはり、ここに数値でバッテリーの残量が表示されていたほうが、すぐに見ることができて便利だ。文字は小さいが、そこまで高頻度で目にする数値でもないため、これで十分だ。ただし、こちらの機能も標準ではオフになっているため、ユーザー自身で設定を変更する必要がある。


「設定」の「バッテリー」にある「バッテリー残量(%)」をオンにすると、バッテリーメーター内に数字が表れる(筆者撮影)

手順は次の通りだ。まず、「設定」アプリを開き、設定メニューの中から「バッテリー」を選択する。ここにある、「バッテリー残量(%)」をオンにするだけだ。

すると、バッテリーメーターの中に、白抜きの文字で残量が表示される。

「%」という単位がないのは、ホームボタンを搭載したiPhone SEなどとの違い。単位がない数値には少々違和感を覚えるかもしれないが、まったく数値がないよりはあったほうがいい。

コントロールセンターのバッテリー残量表示には、引き続き対応する。文字が小さいというときには、上記のようにウィジェットを活用するといいだろう。

ただし、今のところは、iPhone 12 miniなどが非対応。全画面のiPhoneすべてで有効になるわけではないのが、少々残念だ。

iPhone同士でeSIMの転送が可能に、機種変が楽に

iPhone XSで初めて対応したeSIMだが、アップルはその後のモデルに続々とこの機能を搭載。iPhoneはもちろん、iPadも含め、現行モデルはすべてeSIMに対応している。eSIMとは、端末に埋め込まれたチップにSIMの情報を書き込む仕組みのこと。物理的なSIMカードとは異なり、オンラインで契約から発行、インストールまでができる。郵送でSIMカードが送られてくるのを待ったり、店舗を訪れたりする必要がなく、すぐに通信機能を開通できるのが魅力だ。

一方で、物理的なSIMカードにあった気軽さが足りない。中でも困るのは、機種変更のときだ。手続き方法はキャリアによっても異なるが、オンラインで契約者用のサイトにアクセスして、eSIMのプロファイル(契約者情報の入ったデータ)の再発行が必要になる。再発行時に、身分証明書を用いた本人確認を行うキャリアも。抜き差しだけで簡単に契約者情報を移せるSIMカードと比べると、かかる手間が多くなってしまうケースがある。

そんな不便を解消する機能が、iOS 16に搭載された。「eSIMクイック転送」がそれだ。これを使うと、新旧のiPhoneがBluetoothやiCloudでつながり、eSIMの情報を移すことが可能になる。契約者用サイトにアクセスしてQRコードを再発行したり、本人確認を再度したりする必要がなくなるというわけだ。ただし、この機能はキャリア側の対応が必要。現時点で対応しているのは、KDDI(au、UQ mobile、povo2.0)と楽天モバイルの2社のみになる。

Bluetoothを使った方法は、次のとおり。新しく購入したiPhoneの場合、セットアップの途中で「eSIMクイック転送」の画面が表示される。セットアップを終えてしまった場合は、「設定」から「モバイル通信」を開き、「eSIMを追加」をタップしたあと、「その他のオプション」に進み、「近くのiPhoneから転送」を選択する。すると、eSIMの情報を移したいiPhoneの画面に、「電話番号を転送」というウィンドウがポップアップする。


eSIMのプロファイルを、古いiPhoneからBluetooth経由で転送することが可能になった(筆者撮影)

eSIMの情報が入った古いiPhoneで「続ける」をタップすると、検証コードの入力画面が現われる。

新しいiPhone側には、6ケタの検証コードが表示されるため、それを入力すると、移行が可能なeSIMのプロファイルがある場合、一覧が表示される。あとは転送したいeSIMを選択して、待つだけだ。しばらくすると、この新しいほうのiPhoneでeSIMが利用できるようになる。

物理的なSIMカードを抜き差しするより、少し時間は取られるが、キャリアに再発行を依頼するよりははるかに手軽。ドコモやソフトバンクにも、ぜひ対応を検討してほしい。

(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)