キメ細かく平滑な路面でもスリップからすぐ転倒も!

どんな路面だとグリップが良く、もしくは滑りやすいのか、そんなことを心配しながらツーリングしていたら、気疲れして楽しくなくなってしまう。
それに路面ばかり見つめて、景色もろくに目に入らない走り方になっていたら、逆に余裕がなくなっている証拠なので、どこかでひと息つくか走りながらでも両肩を回して深呼吸……。
何れにしてもムリせず走っていれば、路面が滑りやすいか否かなど気にしなくて良いはず。しかし知識として知っていたほうが、刻々と変わる状況変化に対応する上でも役に立つので、目を通しておくのをお奨めしておきたい。

まずは幹線道路や有料のワインディングではない、街の裏通りや山間の狭い生活などでよく見かけるアスファルト舗装。キメが細かく平坦で新しいとキレイに感じる路面だ。
これは密粒度アスファルト舗装といって、平たく仕上がりやすく短時間で舗装できる最も簡易的な舗装のひとつ。このキメの細かさ、つまり表面の小砂利が小さくお互いがくっついているかのような状態で、手で触ってもザラザラしないスムーズさが特徴だ。
こういう表面は路面のμ(摩擦係数)でいうと、平滑だとタイヤとの接触面も多くグリップが良いということになる。
ところが、ひとたび滑りはじめるとスムーズな表面が災いして一気にスライドへ移行し、悪くするとスリップダウンに陥る可能性もある。
もちろん一般公道でムリが禁物なのはいうまでもないが、新しくてキレイな舗装路だからと調子に乗らないよう心がけたい。

高速道路や国道はカーブでなくてもグリップが良い

高速道路や国道などの幹線道路で大事な安全性を左右するのが、雨が降ったときハイドロプレーニングを起さないよう濡れた路面に雨水が溜まるのを防ぐこと。そこで高速道路や幹線道路では、排水性アスファルト舗装がされている。
これは舗装表面の砂利が小さくなく、角も尖った状態で並ぶため、その隙間から雨水が舗装面を通って側溝へ排水される構造なのだ。
つまり表面が相応に粗いワケで、それこそ立った状態からウッカリ転んだりすると、膝頭を擦り剥いたりしてしまう「痛い」路面でもある。
この尖った表面に、タイヤのトレッドはひっかき傷をつけられたようにグリップしていくことになる。いってみればそれだけ摩耗もするのだが、安全性を優先すればそれは許容すべきだろう。
このように、カーブでもないのに高速道路や幹線道路は良好なグリップが得られる仕様なのだ。

サーキットはさらに粗い表面の舗装がされている

そうしたグリップ性能でいえば、レーシング・サーキットが最も舗装面が粗い仕上げになっているのは容易に想像できると思う。
路面を触ればすぐその凄さがわかるはずだ。
だからコーナーによってはタイヤが擦り付けられ、トレッドのゴムが削り取られたブラックマークがつく。
もちろん猛烈な勢いで摩耗して瞬く間に減ってしまう。
ただサーキットによっては、この粗さ加減をいくぶん弱め、滑りやすいまでは落ちないものの、そこそこのグリップで妥協している場合もある。理由は粗い表面の鋭い角が丸まってくると、極端に滑りやすく危険な状態となるのを防ぐため、頻繁に舗装をし直す工事がとてつもなく高価だからだ。それを意識して各コースの舗装面を見てみると、その違いに気づくに違いない。
それと注意したいのが、徐行などでレコードラインを外れコースの両脇もしくはコーナー外側を走るときだ。クルマの削り取られたトレッドのゴムが溜まっていることが多く、これを愛車のタイヤが拾ってしまうと、悪くすると思わぬ転倒に結びつきかねない。クルマのトレッド・コンパウンドは、モーターサイクル・タイヤのコンパウンドほどデリケートではなく、そのくせ違うゴムにも貼り付いたようにくっつくので、ピットへ戻ったら目で確かめて手で剥がすなり対応したほうが良い。

でも一番重要なのが路面温度とタイヤ温度

こうした舗装面のμ(摩擦係数)より、もっとグリップ性能を左右するのが路面温度。
タイヤのゴムは暖めると柔らかくなり、この柔軟な粘りで路面をなぞるように密着する……これがグリップ性能のベースとなっているからだ。
レースじゃあるまいし、フツーのツーリングで路面温度など意識する必要はないはずと思われるかも知れないが、春や秋に平地から高度のあるワインディングへと踏み入ったときは忘れず注意すべきだ。
大雑把な概念をお伝えしておくと、気温20℃以上であれば、ほぼ気にせずとも済むが、15℃となると山間のカーブは路面温度が日陰だと10℃以下の可能性もある。
そして気温が10℃を下回ったら、コーナリングで深くバンクするのはご法度だ。
さらに注意したいのがタイヤの温度。それこそ真夏でも、路面が濡れた箇所を通過したら、その瞬間に回転しているタイヤは走行風で冷える効果も加わって、呆気ないほど滑りやすくなる。
試しに温まったタイヤのトレッドに水をかけてドライヤーで冷風を数秒当て、どれだけ表面から粘りがなくなるか、経験されるのをお奨めしたい。
そんなデリケートさがリスクにならないよう、スーパースポーツでも夏を除けばツーリングスポーツの上位タイヤを履くのが賢い選択だ。

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