古馬のダート重賞、GIIIエルムS(札幌・ダート1700m)が8月7日に行なわれる。

 東京五輪開催による開催日程の変更で、函館競馬場で行なわれた昨年は4番人気のスワーヴアラミスが勝利し、2着に7番人気のオメガレインボー、3着に11番人気のロードブレスが入って、3連単は19万4430円という高配当をつけた。

 とはいえ、荒れたのは函館だから、というわけではない。通常の札幌開催でも伏兵の台頭がしばしば見られ、波乱含みの一戦と言える。実際、過去10年で1番人気はわずか2勝。昨年も含めて、3連単では5万円を超える好配当が6回も生まれている。

 そうしたレースにあって、好走馬には「ある傾向が見られる」というのは、デイリー馬三郎の吉田順一記者だ。

「最近は、7月の前半に函館・ダート1700mで施行されているオープン特別のマリーンSからの転戦組が幅を利かせています。現に、目下4年連続で勝利を飾って、直近7年で計7頭が連対を果たしています。

 それぞれ脚質は異なりますが、いずれも小回りコースに長けていることは間違いありません。前半にアドバンテージをとって粘り込むか、一瞬の脚を効果的に使ってまくりを炸裂させるか、小回りコースの形態を存分に生かして上位争いを演じていますからね」

 そして今年も、前走マリーンS(7月9日)組が7頭出走。同レースで上位にきた馬について、吉田氏はこう分析する。

「今年のマリーンSは、先行争いを演じたフルデプスリーダー(牡5歳)、ウェルドーン(牝4歳)、ロードエクレール(牡4歳)の3頭が上位を独占。その3頭が今回もそろって出走してきます。

 近年の傾向からして、この3頭は注視すべきだと思いますが、今回は前走でオープン特別の大沼S(6月26日/函館・ダート1700m)を勝ったアイオライト(牡5歳)が内枠を引き、徹底先行型のアメリカンシード(牡5歳)も別路線から参戦。マリーンS以上にタフな流れになるのではないか、と予想されています。

 そうなると、狙いはまくりを得意とする馬。特にハンデ戦から別定戦となって斤量が0.5kg軽くなる、4着馬オメガレインボー(牡6歳)に目がいきます。ただ、同馬は発馬を含めて人気よりも信頼度が低いタイプ。馬券的な妙味は今ひとつで、軸には別の馬を考えたほうがいいと思っています」


エルムSでの巻き返しが期待されるブラックアーメット

 そこで、吉田記者はマリーンSでは馬群に沈んだ4歳馬の巻き返しに期待する。

「ブラックアーメット(牡4歳)です。ここ2走の函館戦はこの馬なりに脚を使っていますが、前残りの競馬でワンパンチ欠く内容。2走前の大沼Sが4着、前走のマリーンSは8着に敗れています。

 しかし今回は、先にも触れたようにマリーンSの上位組とアメリカンシード、さらにアイオライトらがしのぎを削る先行争いが激化。今年の北海道シリーズで、最もタフな舞台になるのではないでしょうか。

 とすれば、差し馬に向く流れになることは明らか。2走前くらいの時計で走れば、ブラックアーメットにも十分にチャンスが回ってくる算段です」

 昨年11月にオープン入りして以降、勝ち鞍からは遠ざかっているブラックアーメットだが、すべて勝ち馬から1秒以内の敗戦で大きく負けてはいない。展開さえ向けば、大駆けがあっても不思議ではない。

 吉田記者はもう1頭、マリーンS組以外から推奨馬を挙げる。

「前走のGIIIプロキオンS(7月10日/小倉・ダート1700m)で2着と復活を遂げたベテラン、ヒストリーメイカー(牡8歳)です。

 今春のGIIIアンタレスS(4月17日/阪神・ダート1800m)とGIII平安S(5月21日/中京・ダート1900m)で、9着、15着と惨敗を喫して一気に評価を下げてしまいましたが、今回と同じ小回りの1700m戦で2着にきている点は高く評価すべきでしょう。

 長く脚を使えて最後まで踏ん張れるタイプ。前が速くなるなら、向正面から進出していった前走と同じような立ち回りが可能と見ます。相手関係も格段に上がった印象はなく、今回も人気の盲点となっているだけに積極的に狙っていきたい1頭です」

 波乱ムード漂うエルムS。ここに挙げた"キレ者"2頭が、熾烈な先行争いの間隙をついて最後の直線で突き抜けてくるのか、注目である。