相場展望6月27日 米国ではヘッジファンド中間決算、日本は株主総会前のお化粧買いで上昇 ⇒ 問題は7月の4〜6月期決算発表

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/23、NYダウ+194ドル高、30,677ドル(日経新聞より抜粋)  ・米連邦制度理事会(FRB)の積極的な金融引締めが景気悪化を招くとの懸念は根強く、相場の上値は重かったが、銘柄選別が進みハイテク・ディフェンシブが買われ、相場を押し上げた。  ・市場では、米国が来年にかけて景気後退に陥るとの観測が広がりつつあり、6/23の米株相場では業種毎の騰落で明暗が出た。業績が景気の影響を受けにくい日用品やヘルスケア・公益事業などディフェンシブが買われた一方、金融や資本財など景気敏感株は売られた。景気減速で原油需要が細るとの見方から米原油先物相場が下落し、石油株は売り一色だった。  ・米長期金利が一時3.0%と2週間ぶりの水準に低下し、高PERのハイテクには追い風となった。ただ、ハイテク銘柄の中でも選別が進み、マイクロソフトやアップルなど業績の安定感が強い銘柄が買われた反面、景気の左右されやすい半導体関連は総じて下げた。  ・米FRBのパウエル議長は6/23の米下院金融サービス委員会で証言し、インフレ抑制に向け「無条件で取り組む」と述べた。市場では「景気や金融市場の安定を犠牲にしてでも金融引締めを続ける姿勢を示した」と受止められ、景気敏感を中心に売りが強まり、一時▲190ドル近く下げる場面もあった。

【前回は】相場展望6月23日 6/21の株価反発は、小戻しの範囲か 金融引締め長期化⇒景気後退の長期化⇒株式下落構図へ

 2)6/24、NYダウ+823ドル高、31,500ドル(日経新聞より抜粋)  ・6月は前日までに▲2,300ドルほど下げ、短期的な戻りを期待した買いが入った。  ・消費者の期待インフレ率の低下を示す米経済指標の発表を受け、FRBの急速な利上げ観測がやや和らぎ、株買いを後押しした。  ・NYダウは週間で+5.4%高と上昇率は今年3番目の大きさ、4週ぶりに上昇した。  ・ミシガン大学の6月消費者態度指数は50.0と統計開始以来で最低となった。ただ、消費者が予想する1年先と5年先のインフレ率が低下し、利上げ加速への過度な警戒感が後退した。  ・米長期金利の上昇一服で、金利低下で買われやすいハイテク銘柄の追い風となった。  ・セールスフォース+7%高、マイクロソフト+3%、ボーイング+6%、ダウ+4%高。

●2.米国株:

 (1) ヘジファンドの6月末中間決算のお化粧買いで株価上昇 (2) 7月の4〜6月期決算、特に減益企業の動向に注目

 1)6/8〜17は、(1) 米FRBの+0.75%利上げ (2) スイスや英国の中銀が利上げに動き、市場は大荒れとなった。  ・米NYダウ   6/7 33,180ドル ⇒ 6/17 29,888 ▲3,292ドル下落

 2)6/21〜24はその反動で、米株式市場(NYダウ)は反発した。  ・米NYダウ  6/24 31,500ドル +1,612ドル高   下げ幅に対する戻り率は48.97%

 3)NYダウをチャートで見ると、1/4高値36,799ドルから、反発を交えながらも下落傾向が続いている。

 4)機関投資家の運用指標であるSP500指数もNYダウと同様の動きをしている。  ・SP500は、昨年12/27最高値4,791⇒6/16安値3,666と下落率は▲23.48%であり、「弱気相場入り」とされる▲20%を割った。ただ、直近の反動高で6/24時点では▲3,911と下落率は▲18.37%と「弱気相場から脱している」。  ・しかし、昨年末頃からのチャートを見る限り、先週の反発は下落過程の中の一時的上昇と見える。

 5)米欧の金融引締め⇒米国経済の失速、世界景気の後退・減速のリスクが台頭  ・インフレ抑制のために積極的な金融引締め段階に突入したが、その手段は『需要抑制』効果でインフレ退治しようとするものであり、必然的に『景気減速・後退(リセッション)』⇒『企業収益悪化』を伴う。

 6)商品先物指数CRB指数が下落⇒世界景気の減速・後退を示唆か  ・6/9高値329.54 ⇒ 6/24安値298.55  ▲9.40%下落  ・CRB指数の下落は、世界の商品需要が減少することを示唆した可能性がある。

 7)機関投資家の運用指標であるSP500構成企業は減益傾向  ・米企業業績は、エネルギー企業を除くと、減益方向に転じた可能性がある。原油高騰の恩恵を受けるエネルギー企業を除くと、4〜6月期の利益予想は前年比▲2.2%の減益となっている。  ・なお、WTI原油価格も最近下落を観測している。

 8)7月に発表される4〜6月期決算に注目  ・中央銀行のFRBなどの金融引締めは、需要減を伴い・利益率の低下となり企業業績にとってマイナスに働く。  ・つまり、PER(株価収益率)は低下する。  ・今まで割安と判断された株価は、『割高』に転じることになる。そうすると『株式は売られやすい環境になる』ため、4〜6月期決算発表を注視したい。

 9)ヘジファンドの中間決算は6/末 ⇒ お化粧買いの時期でもある  ・7月初旬は、そのお化粧が剥がれやすい。  ・今年に入って米国株式市場では、決算数値が期待外れとなった銘柄は大幅下落に見舞われている。ターゲット、ウォルマート、スナップ、インテルなど多数の銘柄  ・相俟って、4〜6月期決算発表で減益企業が多くなると株式相場に影響を与える可能性がある。

●3.シカゴ連銀総裁、数ヶ月内に大幅利上げ必要となる可能性(ロイターより抜粋)

 1)米シカゴ連銀のエバンズ総裁は6/22、40年ぶりの高水準に達しているインフレに対応するため、「今後数ヶ月で政策金利をさらに大幅に引上げる必要があると想定しる」という認識を示した。

 2)さらに、労働市場が「極めてタイト」な状況にあるとした上で、金利上昇は需要の抑制に寄与し、今後数年間にインフレを大幅に抑制する見通しとした。

 3)供給面での問題解消には、予想以上に時間がかかる可能性や、ロシアのウクライナ侵攻や中国の新型コロナ対策でのロックダウン(都市封鎖)の影響で、物価上振れ圧力が一層高まる可能性があるとの見方を示した。

 4)また、FRBの利上げは、  (1) インフレ低下に不十分な可能性があるほか、  (2) 「雇用情勢に重くのしかかる」恐れもある  とした。

●4.ボウマンFRB理事、7月FOMCで+0.75%の利上げ支持(フィスコ)

●5.セントルイス連銀総裁、利上げ前倒し支持、リセッション可能性低い(ブルームバーグ)

 1)インフレ抑制に「直接的かつ積極的に」行動を(ロイター)  ・そうしなければ10年間にわたって高く・不安定なインフレに苦しむ恐れがある。今は、まずインフレを即座に抑制し、2%への道筋に戻す、ことが必要との認識示す。  ・年内に政策金利を3.5%まで引上げたい、との従来の主張も繰り返した。

●6.米6月製造業PMIは52.4、予想56.05・5月57.0から大幅低下、パンデミック直後2020年7月で最低(フィスコ)

 1)6月サービス業PMIは51.6、予想外の3ヶ月連続低下、予想53.5・5月53.4

●7.国際通貨基金(IMF)、米経済2022〜2023年は辛うじてリセッション回避へ(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/23、上海総合+52高、3,320(亜州リサーチより抜粋)  ・中国景気の先行き不安が後退する流れとなった。  ・習・国家主席は6/22、今年の経済目標を達成する方針を改めて表明した。多くのアナリストによる「新型コロナ感染抑制策などにより、2022年の成長目標達成は困難」との指摘を否定した格好だ。    ・足元では、新型コロナの感染状況が一部を除き落ち着いているほか、当局の強力な景気テコ入れ策を相次ぎ打ち出している。国務院は6/22、李克強・首相の主催で常務会を開き、自動車消費などの支援策を強化する方針を確認した。  ・業種別では、自動車が牽引、不動産・ITハイテクも高く、幅広い業種が買われた。

 2)6/24、上海総合+29高、3,349(亜州リサーチより抜粋)  ・前日の好地合を受け継ぎ、国内での経済活動の正常化期待が高まったほか、当局が景気テコ入れ策を相次いで打ち出していることが引き続き材料視された。中国人民銀行(中央銀行)の資金供給拡大も好材料。  ・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、消費関連も高い、不動産は安い。 

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/23、日経平均+21円高、26,171円(日経新聞より抜粋)  ・経済活動の再開への期待から内需関連の上昇が目立ち、一時+200円を超える場面があったが、世界経済減速への警戒は根強く、景気敏感株に売りが出て上値を抑えた。  ・東エレクなど半導体関連が買われたが、このところ下げが目立っていただけに、売り方の買い戻しとの指摘があった。  ・財政面からの景気への下支えへの期待から、小売・鉄道・不動産の内需関連が上昇。  ・一方、米FRBの金融引締めへの懸念から、機械・海運・自動車・非鉄が売られた。

 2)6/24、日経平均+320円高、26,491円(日経新聞より抜粋)  ・前日の米ハイテク銘柄高を受け、東京市場でも投資家心理が上向き、10日ぶり高値。これまで大きく売られていた半導体関連やグロース(成長)の上昇が目立った。東エレク・ソフトバンクG・エムスリーの3銘柄で日経平均を+100円押し上げた。  ・中国・上海などアジアの主要株式相場が上昇したのも、相場の支えとなった。  ・ただ、米FRBの金融引締めが景気悪化につながるとの警戒感は根強く、自動車など景気敏感株の一角には売りが出た。  ・ダイキン・信越化・塩野義・花王が買われ、KDDI・ファストリ・エプソンが下げた。

●2.日本株: 7月中旬まで、6月のお化粧が剥がれやすいので注意したい

 1)日本株が堅調だった要因。  ・株主総会対策含めた自社株買い効果  ・6月末決算の運用のお化粧買いの季節要因  ・円安を享受し増益効果がある輸出関連銘柄の株価上昇による支え  ・日銀の超金融緩和策の維持

 2)世界の金利引上げの潮流に逆らえない、世界景気敏感の日本株。  ・欧米の金融引締めの目的は『インフレ退治』であり、現状のインフレ率の高さからすると、金融引締めは(1)金利引上げ幅は相当高くなる (2)長期化 を予想する  ・その場合、世界景気後退は免れず、景気減速では収まらない可能性が高いと思われる。  ・日本企業もその影響を受けやすい体質であるので注意したい。

 3)中国の景気回復に異変?  ・中国は国内インフラ投資もあって、世界の非鉄金属需要の約5割を消費してきた。そのため、国際商品の価格形成に大きな影響を持っている。  ・ところが、銅価格を見ると大きく値下がりをしており、中国経済の回復力に疑念が出てきた可能性がある。銅価格 3/4高値493ドル ⇒ 6/23安値374  下落率▲24.1%  ・加えて、中国の電力消費、個人消費なども前年比で見ると力強い回復とはいえない。  ・中国はゼロコロナ政策で、中国経済トップの上海市など主要都市でロックダウンを実施し、経済を毀損させてもコロナ感染根絶に邁進してきた。そして、6月初めに解除して、中国経済の回復に期待が集まった。ところが、その回復スピードが思ってたより速くないのである。  ・日本経済と日本企業は、中国経済への依存度が高いため、影響が懸念される。

 4)7月中旬までは、6月末の特有のお化粧要因の剥がれと、自社株買いの一服で株価軟調となりやすい経験則があるので慎重にしたい。  ・加えて、米国企業業績の影響と米株の動向にも目配りしたい。  ・利益確定売りは、株主総会前が賢明と思われる。

●3.海外投資家の日本国債売りが記録的ペース、日銀の政策を巡り弱気な見方(ブルームバーグより抜粋)

 1)世界的に金利が上昇する中で、日本銀行が国債利回りを抑え続ける能力を疑問視し、海外投資家は先週、記録的な量の日本国債を売却した。

 2)財務省が6/23に公表したデータによると、統計で遡ることが出来る2005年以降で中長期債を最大となる▲4兆8,046億円の売り越しだった。

 3)日銀は、低金利政策を調整せざるを得なくなるとの憶測から、日本国債に対する弱気の見方が強まってきた。    

●4.企業動向

 1)LIXIL  住宅設備、9月以降から最大27%値上げ(共同通信) 2)三井住友FG SBIに異例の800億円出資し資本提携(日テレ)

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・1893 五洋建設 ・7564 ワークマン ・8439 東京センチュリー

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou