サバジェンヌがこれまで幾度となく“進化系”“進化系”と言い続けてきた「サバ缶」。まだまだあります。今回は3つのサバ缶をご紹介。アレンジしながら、実食しました!

その進化がとどまることない「サバ缶」。2022年の春も、度肝をぬくようなコンセプトのサバ缶が登場している。そんな「春の新作サバ缶」をご紹介!

「肉系」サバ缶の進化形! 中華の定番をサバで再現

「油淋さば」信田缶詰

昨年、「サバの干物」を使った斬新なサバ缶「鯖とば燻製風味」を作り上げた千葉県銚子市「信田缶詰」から、またまた攻めた商品が登場した。

その名は「油淋さば〜揚げサバの香味ソース仕立て」。なんと、中華の定番「油淋鶏(ユーリンチー)」をサバで再現してしまったのだ。

信田缶詰「油淋さば〜揚げサバの香味ソース仕立て」(398円)

「多彩なサバ缶が登場している今、取扱店のベーシックなサバ缶の反応がいまひとつ、という状況が続いておりまして……」と語るのは、開発にも携わった営業部の小林俊之さん。鯖とば燻製風味に続く、画期的なサバ缶を思案する日々が続いていた。

鯖とば燻製風味のサバ缶とは!?

そんなある日、開発チームの女性メンバーが、他社にない味付けとして、「油淋鶏」のタレをベースにした調味液を発案。「わたしも地元の中華料理店でよく油淋鶏を食べていたので、サバで作ったらイケるのでは! と確信して開発を進めました」(小林さん)

揚げた鶏肉に長ネギなどが入った醤油ベースの甘酸っぱいタレをかけた油淋鶏。サバ缶では珍しい「揚げたサバ」を使う必要があるものの、信田缶詰のベストセラー商品である「サバカレー」で、すでに使用済み。

培ってきた「揚げの技術」をベースに、タレを工夫。玉ネギ、しょうが、ニンニク、醤油、酢、ゴマ油、砂糖をブレンドした特製の香味ダレに揚げたサバを漬け込んでサバ缶を完成させた。

缶詰は加熱すると、酸味がとびやすい。「酸味を残し、ゴマ油をほどよく利かせる塩梅に試行錯誤しました」と小林さん。

しかし、そこは1905(明治38)年創業、缶詰づくりに高い技術をもつ信田缶詰。「最高の自信作です」と小林さんは胸を張る。

油淋さばを開缶すると、タレがしみた衣に包まれたサバが登場!

揚げたサバにタレがしみた姿が食をそそりすぎる! 食べきりサイズなのもおつまみにうれしい

食べてみると……。これがもう、激ウマ! 玉ネギやしょうが、ニンニクが利いた甘酸っぱいタレが、こんがり揚がったサバにジュワッとしみて絶品! タレの絶妙な味付け、またもろっとタレが染み込んだ衣の感じがたまらない〜。もちろん国産サバの旨みもキッチリ堪能できる!!

正直、「缶詰感」はゼロ。さらに町中華というより、気の利いた小料理屋さんの一品的なレベルである。

見た目も、缶詰から出した感じがしないんですけど……

そして、ビールがすすむ!! おつまみに最高だけど、甘さも辛さも程よいので、お弁当に入れてもよさそう。あと、「サバの南蛮漬け」が好きな人は間違いなくノックアウト!

それにしても「缶詰」で「揚げたサバ」を使用して、こんなに効果的に「タレがしみた」衣の演出や酸味が活かされてるって何事!? と動揺すら覚えるジェンヌ。これからは、油淋鶏はサバでいい !!

小林さんのおすすめの食べ方は「冷やし中華」にトッピング。ということで、やってみました!

ひゃ〜、これ、めっちゃアリですよ! 油淋さばを冷やし中華のタレにちょいしみさせて「追いタレ」し、からしを漬けてかじるもよし(からしが合います)、お箸でほぐして麺や具といっしょにグワーっと混ぜて、ずるずるとすするもよし。「油淋さばの冷やし中華」、この夏の定番に決定!!

油淋さばの冷やし中華。油淋鶏でやるとトゥーマッチだと思うが、サバならするっとイケます

日本初!「コーヒーに合うサバ缶」で「サバサンド専用サバ缶」

SOL’S COFFEE「SABA’S COFFEE」

カフェメニューでサバ、といえばサバサンド。そしてお供はコーヒー。

おうちで、サバサンドでカフェ気分……というときに、ピッタリのサバ缶が出ましたよ!

本記事でも以前ご紹介させていただいた、東京・蔵前/東京スカイツリー/福井・若狭町で大人気のスペシャリティコーヒー専門店「SOL’S COFFEE(ソルズコーヒー)」によるサバ缶「SABA’S COFFEE」。

おそらく日本初の「コーヒーに合うサバ缶」なおかつ「サバサンド専用サバ缶」! 

ソルズコーヒー「SABA’S COFFEE」(700円)
SOL’S COFFEEのサバサンドとは!?

ソルズコーヒーで大好評の「サバサンド」に使われている「特製サバペースト」の味わいをサバ缶で再現! 醤油、ゴマ油、ナンプラーなどを隠し味にした、コーヒーにぴったりのサバ缶だ。

ソルズコーヒーで大人気のサバサンド。特製サバペーストはサバキッシュにも使われている

製造は福井県小浜市の「福井缶詰」。もともと、特製サバペーストに使われていたのも、福井缶詰の水煮缶だ。

「福井缶詰さんのサバ缶を使うとバツグンに美味しくなるんですよ〜。ほんと、すごいです」と語るのはオーナーの荒井利枝子さん。ならばいっそのこと、「サバサンドの中身をサバ缶にしてしまうのはどうか」という話になったらしい。

じつは、ジェンヌさんもこの商品の開発をお手伝いさせていただいた。料理を缶詰で再現する場合、実際に使われている調味料の配分と同じにしても、まったく同じには仕上がらない。それどころかまったく違う味になってしまうこともある。

ゴマ油が目立ったり、ナンプラーのクセが強かったり。何度も使用する調味料のメーカーを変えたり、配分をサバ缶用に細かく調整し試食を重ねて完成。おそらく日本初の「コーヒー屋さん」が作ったサバ缶がデビューを果たした。

いったん蒸して雑味をとるという工程をふむ、福井缶詰のサバ缶。調味料が入っているのにこの透明感!

厳選したサバの身はふっくら、旨みいっぱい。

使われている調味料は和、中華、エスニック、だけど不思議なことに「心地よく美味しい」!

脂のりバツグンのサバを使用。醤油、ゴマ油、ナンプラー入りなのにくどさはゼロ。ナチュラルな味わい

パンにサンドすると、ジュワッとほどよくしみてパン生地のやさしさと合い間って、あぁ美味しいな、幸せ、と頬がゆるむ「気負いのない美味しさ」。そのまま食べるとちょっと味付けが濃いかもしれないけれど、パンに挟むとちょうどいい塩梅。

「SABA’S COFFEE」を使ったソルズコーヒーのサバサンド。パプリカたっぷりバージョン

そして特筆すべきはコーヒーとの相性! 普通、サバ缶を食べてコーヒーを飲むとサバの味が消えるけれど、 SABA’S COFFEEを食べてコーヒーを飲んでも、サバが消えない! そればかりかふわ〜っと口の中で「まろやかで、ふわっとした味わい」が広がって、サバもコーヒーも美味しくなるというミラクル現象!

SABA’S COFFEEで「サバサンド」を作るときは、まずはソルズコーヒーの「サバサンド」レシピにするのがおすすめ。

パンにトマト、レタス、青じそまたはミョウガとともにサンドすると、「ベストサバランス」! 最高!! 青じそと、ミョウガは絶対あったほうがいい! パンはどちらかというと、甘めで固くないものがおすすめ。あと缶汁もちらっとかけるとよし!

ミョウガがとても合う! 野菜たっぷりがおすすめ!

ソルズでは、香ばしくもちっとしたコッペパン風の自家製パンを使っていますがジェンヌさん、食パンで作ってみました。うーん、やさしいよ〜。ソルズのサバサンドを彷彿とさせる「癒し系サバサンド」。コーヒーとの相性もしっくりくる。

ジェンヌ作「SABA’S COFFEEサバサンド」。こんがり焼いたトーストで作っても香ばしさが加わって美味しい!

あと、パンの耳に缶汁をしみしみさせて食べるとまたウマし(涙)。

ぜひ、SABA’S COFFEEとともに、おうちですてきな「サバカフェタイム」を。

高校生が開発したサバ缶が大気圏突入!

福井物産「若狭宇宙鯖缶」

鯖街道のお膝元・福井県小浜市から、とんでもないサバ缶がデビューした。

日本を飛び越え、世界を飛び越え、地球を飛び越え、大気圏に突入という「宇宙系サバ缶」である。「若狭宇宙鯖缶」は、若狭高校海洋科学科の生徒たちが開発した「宇宙食のサバの缶詰」を「地上向け」にして商品化したもの。

2018年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「サバしょう油味付け缶詰」として宇宙日本食に認証! サバ缶がついに宇宙に到達してしまったのだ(涙)。恐るべし、ユニサバース缶!!

若狭宇宙鯖缶(756円)。宇宙鯖缶の商品開発は、若狭高校と統合される前の「小浜水産高校」時代からスタート

開発は2006年からスタート、宇宙にたどり着くまでの道のりは容易なものではなかった。生徒たち、そして小坂康之先生の懸命な努力があってこそ成しえた快挙である。

若狭高校の生徒たちが、地元企業と協力して開発、商品化された 写真提供/若狭高校

このあたりのことは、ぜひ小坂康之先生が上梓された『さばの缶詰、宇宙へ行く』(イースト・プレス)を読んでいただきたい! 生徒たちのアツい想い、そしてその想いを実現するために奔走した小坂先生のドラマ。サバらしい !!

そんなドラマティックな若狭宇宙鯖缶は、味覚が鈍くなるという宇宙空間に対応した味付けと、食事はすべてスプーンのため、程よい柔らかさに。そして無重力でも飛び散らないように、くず粉でとろみをつけてある。

その味わいは、無重力空間で食べた宇宙飛行士・野口聡一さんが絶賛!!! アメリカやロシアの宇宙飛行士たちにも「美味しい」と大好評だった!

そして地上で食べるサバ缶は、その味わいをいかしながら「地球用」に生徒たちと、地域商社の福井物産、福井缶詰の協力のもと、開発された。企画、味、価格、販売活動まですべてに生徒たちが関わるというキャリア教育となっており、缶詰の売上は高校に還元される仕組みになっている。

パッケージの、若狭高校の校章が入った宇宙服を着たサバのイラストも生徒たちによるものだ。

地上で味わう宇宙鯖缶の身はとろける味わい、そして醤油の程よい味わいが旨みをひきたててウマい! 

くず粉でとろ身をつけた「プルン」とした仕上がり

そして宇宙用につけた「とろみ」が、「魅惑の煮こごり」状態!!! ほかにないですよ、「サバ缶の煮こごり」(笑)。炊き立ての白飯にのせると、ニヤニヤする美味しさ!

見てください、まさに「煮こごり」!

お酒好きのみなさんは、「サバの身で一献」「煮こごり部で一献」を! ジェンヌさんのお気に入りは、「煮こごり×薬味」。カイワレ大根や三つ葉と一緒に食べると、日本酒がすすむ〜。

三つ葉やカイワレ大根などの薬味をたっぷり添えて。ゆずやすだちなどをちょいしぼっても美味しい

ぜひ、宇宙に思いをはせながら「サ晩酌」を! それにしても、宇宙一サバ缶がアツいのは地球だな(たぶん)。

以上、ジェンヌが地球からお届けしました(誰に)。

●信田缶詰
https://shidakanzume.theshop.jp/
●ソルズコーヒー
https://www.sols-coffee.com/
●福井物産
https://fbk-wakasanotakara.raku-uru.jp/
※都内では福井県アンテナショップ「ふくい南青山291」(銀座)、日本百貨店まちだ(町田東急ツインズイースト内)、BCC「宇宙の店」(https://spacegoods.net/)にて販売

取材・撮影/池田陽子