超高速水透過と脱塩を両立するフッ素化ナノチューブ(画像: 東京大学報道発表資料より)

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 東京大学は13日、海水を真水に超効率的に変えるフッ素化ナノチューブを開発したと発表した。研究グループによれば、今回開発に成功したフッ素化ナノチューブにより、海水を真水に変える超高速水処理膜の開発につながる可能性があるという。

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■世界的な水不足

 現在、世界的な水不足が深刻化している。その背景には、人口の増加や気候変動などがある。

 この問題を解決するための手段の1つが、海水の淡水化だ。だがこれまで開発されてきた水処理膜では、性能が圧倒的に不足している。

 そこで注目されているのが、アクアポリンだ。アクアポリンは、細胞の細胞膜に存在しているタンパク質の一種で、細胞の外部と内部の水の輸送に関わっている。

 だが今回研究グループが開発に成功したフッ素化ナノチューブは、このアクアポリンの4500倍の速さで、海水から水だけを透過するという。

■なぜ海水から水だけを超効率的に透過できるのか?

 研究グループが開発したフッ素化ナノチューブは、内径が0.9ナノメートルほどあるナノチューブで、その内壁がフッ素で密に覆われている。ちなみに、水素原子1個の直径は0.1ナノメートルほどだ。

 鍵はこのフッ素で密に覆われた内壁にある。研究グループによれば、ナノチューブの内壁がフッ素で密に覆われているため、マイナスに帯電。その結果、同じくマイナスに帯電した塩化物イオン、すなわち塩を通さないという。またナノチューブの内壁がフッ素で密に覆われているため、通常くっついて塊になっている水の分子がバラバラになり、水分子が通りやすくなるという。

 今回開発されたフッ素化ナノチューブは、これまで注目されてきたアクアポリンの4500倍の速さで、塩を通さず、水だけを通すという。

 研究グループによれば、これまでの水処理膜はもとより、現在開発が進んでいるアクアポリンの水処理膜やカーボンナノチューブの水処理膜よりも、圧倒的に水処理の能力が高く、超高速水処理膜の開発につながる可能性があるという。