暴行された福山哲郎議員(写真:つのだよしお/アフロ)

「めし食えへんやんけ、どうしてくれんねん」

 酔っ払った男が怒鳴りながら近づき、拳を振り上げる。立憲民主党の福山哲郎参院議員らに暴行したとして、職業・住居いずれも不詳の坂野隆治容疑者(26)が暴行容疑で逮捕された。

 街頭演説中に起こった暴行事件に、蓮舫参院議員が反応。自身のツイッターに《政治活動中の国政選挙候補予定者への暴行は言論の自由、表現の自由を力によって封殺するもので、民主主義そのものを脅かします。強く断固抗議します》とつづった。

 街頭演説中の暴行事件は、過去にも例がある。2017年の9月には、堺市議補選で、候補者の応援に来ていた日本維新の会の衆院議員・伊東信久氏の顔を殴りけがを負わせたとして、無職の男性が現行犯逮捕されている。

「演説を聞いてカッとなった。胸を押しただけで殴っていない」と容疑を一部否認したが、公職選挙法違反(選挙の自由妨害)と傷害容疑で送検された。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏が言う。

「演説中の政治家を暴力で封殺しようとしたケースとして、たとえば1960年に、社会党の浅沼稲次郎書記長が暗殺されています。

 イデオロギー対立が激しかった時代とは性質を異にしていると思いますが、特権のある人間に対して怒りが噴出するのは、時代に関わらず起きる面もある。

 ただ、過去の例を見てもわかるとおり、暴力によって得られたものはない。暴力に生産性はない、ということを認識する必要があります。

 さらに、福山氏の暴行事件を含む昨今の事例を見ると、オール与党化していくなかで、ネット上では野党の議員に向けて本当に汚い言葉が飛んでいる。それがエスカレートして、ひょんなきっかけから暴行に至ってしまうこともあるのでは。

 言葉だけでは抗し切れない面もある。与党の役職者にはSPがつきますが、野党では代表と幹事長など一部にしかつきません。たとえば海江田万里衆院副議長などはSPの警護対象外です。警護対象を見直すことも必要になってくるでしょう」

 街頭演説中の政治家は、無防備な状態。ヤジがエスカレートして暴行に至る危険性にどう対処するか、考え直す必要がありそうだ。