艶やかな空気感が漂う港区は、知る人ぞ知るもつ鍋の激戦地。

正統派を貫く名店が根づく一方で、先鋭的なエリアにふさわしく、斬新な創作もつ鍋を提供する専門店もあるのだ。

今回は、賑わいをみせる「港区のもつ鍋」の全貌に迫る!



※まん延防止等重点措置期間中につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。


1.日本酒だけで煮込むスープの深みは唯一無二
『かね萬六本木』

「もつ鍋」3,860円(2人前)。国産もつの中で特に脂つきのいいものを厳選。酒の香りとわずかに酸味を感じるスープは、野菜の甘みが加わって絶妙の塩梅に。〆は「ちゃんぽん」460円が人気


「屋号をいただいた以上、もつ鍋の作り方は一切変えられません」と明言する『かね萬六本木』の店主・和田雅史さん。

その作り方とは、日本酒だけでもつを煮込む独自のスタイル。7年前に惜しまれつつも閉店した、博多・天神の老舗『かね萬』から継承した。

南部鉄器の丸鍋を使うのも本店譲り。鍋に日本酒をなみなみ注いだら、そこにたっぷりの生もつと、なんとタマネギを投入していく。


水を一切使わない独自の仕込みで、驚くほど濃厚な味わいを引き出す!


沸いてくると自然に引火し、豪快な炎が立ち上る。完全にアルコールが飛ぶまで、約30分。

煮上がった鍋をそのまま提供するため、もつとスープの追加注文は不可が『かね萬六本木』の流儀だ。

「手間も経費もかかる作り方で、今はウチ以外、やるところがない」。

大ぶりにカットした国産牛のもつは酒の効果か、ブリブリの食感。

ほのかに酸味のあるスープで甘みが強調されている。塩と醤油、香りづけの胡麻油のみで調味するため、コクもダイレクトに感じられる。

シンプルにして、まさに唯一無二の奥深い味わいなのである。


スープ&もつのこだわり


大量の日本酒だけを使って、生のもつをタマネギ、ニンニク、鷹の爪と煮込んでいく。

炎が消えたら、キャベツとニラも投入する。

白もつのほか、歯応えある牛ハツが入るのもユニーク。2人前で300gあり、ボリューム満点だ。

本店と同じ博多の精肉店から、今も取り寄せている。


こだわりのもつを天ぷらに!


鍋と同じもつを使用する「もつ天ぷら」1,080円。

カリッと揚がった衣の中はふわふわの食感。おろしポン酢でさっぱりといただく。




創業以来変わらない、素朴な店内がなんとも落ち着く『かね萬六本木』。

六本木の中心だが、ミッドタウン向かいの裏通りにひっそりという立地もいい。


西麻布交差点のすぐ近く、シャンパンも楽しめる西麻布の最新店!


2.“艶やかなもつ鍋”を体現する西麻布の最新店
『博多 鶴ふく 西麻布店』

「味噌もつ鍋」1,980円(2〜3人前)。濃厚な合わせ味噌と特製スープがパワフル。もつに匹敵するコク深さがあり、最後まで飽きることなく楽しめる。〆には「ちゃんぽん」300円がオススメ


西麻布交差点から徒歩2分の『博多 鶴ふく 西麻布店』は、オープンしてまだ1年にも満たない最新のもつ鍋店だ。

もつ鍋は醤油と味噌味があるが、濃厚さを求めるなら断然、味噌だ。米味噌をベースに、白味噌など、複数種をブレンドして酒やみりんで溶き伸ばし、元ダレを作っている。

これに合わせるのは豚骨と鶏ガラをじっくり炊き込んだ白濁スープで、これも調味前からトロリと濃厚。

ごぼうと煮ることで独特の香りも加わり、しっかり甘くコクはたっぷりという『博多 鶴ふく 西麻布店』ならではのスープができあがる。


米味噌ベースのコク深いスープが、脂のりのいいもつと響き合う


ひと口食べればガツンと香る美味しさの要は、仕上げにたっぷりのせた刻みニンニクと粗挽き一味。

煮込むほどにスープに溶け込み、どんどんエネルギッシュな味わいへと変化していく。

西麻布らしくシャンパンも充実しており「日本一安く飲めるのでは(笑)」と、店長の菊池 潤さんは話す。

濃厚な鍋とキレある泡との組み合わせは実際抜群で、もつ鍋の新しい可能性を知るだろう。


スープ&もつのこだわり


提供する直前に、元ダレとスープを合わせる。こうすることで味噌の香りがしっかり活きるのだ。

濃厚ゆえに、寒い時季は特に人気とのこと。




もつは甘い脂がしっかりついたものを仕入れ。

丁寧に下ごしらえし、大ぶりにカットすることで存在感が際立つ。2〜3人前で約100g。


西麻布といえばシャンパン!


シャンパンはボトルで7銘柄をリストアップ。

「ニコラ・フィアット グランレゼルヴ」4,500円〜など、驚くほどリーズナブルな価格で楽しめる。




ローソンから二股に分かれる“ザ・西麻布”なロケーションが魅力の『博多 鶴ふく 西麻布店』。

数寄屋造りの純和風の内装で、キッチンに面したカウンターは臨場感抜群だ。


博多を代表する名店のレシピを継承した、都内屈指の人気もつ鍋店!


3.もつ本来の旨みに驚く!名店譲りの妥協なき仕入れ
『和楽』

「みそもつ鍋」3,360円(2人前)。食材は国産にこだわり、結びこんにゃく、ごぼう、キャベツ、豆腐などが入る。〆に人気の「チャンポン麺」450円は、博多の製麺所で作る風味豊かな麺を使用


博多を代表する名店『やま中』で15年間修業した店主・野口省一さんが、東京でも同じ味を楽しんでほしいとオープンして11年。

今や、都内屈指の人気店へと成長したのが西麻布の『和楽』だ。

本家のレシピを継承するもつ鍋はなんといっても、もつの鮮度とジューシーさが別格!

扱うのは、本場でも希少な鹿児島産黒毛和牛の小腸。通常2日かかるところを空輸で仕入れ、鮮度をキープしている。


もつの質と鮮度を突き詰め、雑味や臭みとは無縁の味わいに


醤油味も人気だが、冬はこっくりした味噌味がオススメ。6種類の味噌を秘伝の配合でブレンドし、濃厚かつクリーミーに。

そこにもつの旨みが溶け合い、よりコク深いスープへと昇華する。惜しげもなく入るもつは、噛むほどに脂の甘みがあふれ、素材の上質さを実感できる。

青森県三戸のすりおろしニンニクや、辛みの角が取れ風味が強調される九州産角切り唐辛子を使用するなど、味を底上げする薬味にも妥協は一切なし。

コスト度外視で美味しさを追求し、本物の味を伝え続ける。


スープ&もつのこだわり


ブレンド味噌に動物系と魚介系の出汁を加えて、丸1日かけ完成する。

弱火でじっくり煮込んで、コクを生み出すのだ。

もつは傷みやすいため、最短ルートでの仕入れを徹底。

「最高級のもつだから、下処理せずとも嫌な臭いがなくプリプリ食感で歯切れもいい」。2人前で約200g。


熊本直送の馬刺しがおすすめ!


毎朝空輸で送られてくる、熊本直送の「赤身馬刺し」1,580円も名物。

タテガミ、フタエゴ、赤身の豪華3点盛りを楽しめる。




『和楽』は、星条旗通り沿いのビル1階に位置する。

白を基調とした店内はテーブルがゆったり配置され、落ち着いた雰囲気。予約は2週間前がベター。


40年受け継がれる秘伝の“こいダレ”は、地元民の支持多数!


4.40年受け継がれる秘伝の醤油味に癒やされる
『博多もつ鍋 幸 西麻布』

「和牛もつ鍋」3,256円(2人前)。素材の持ち味を活かすスープで煮込まれる山盛りキャベツが、しなっとしてきたら食べごろ。〆は本店から取り寄せる「ちゃんぽん玉」500円が定番だ


博多・薬院に本店を構える『幸』は、40年以上も前に創業した古参のもつ鍋店。

地元民の支持は厚く『博多もつ鍋 幸 西麻布』は「東京に出張した際、同じ味が食べたい」という常連からのリクエストを受け、14年前に暖簾分けされた。

味を決める「こいダレ」は博多の主人が独自に調合した特製で、定期的に直送される。

「ベースは九州産の少し甘みがある醤油ということ以外、誰も知らない企業秘密」と、料理長の平山達也さんは語る。


余分な脂を落としたもつと上品なスープは飽きがこない


合わせる出汁はできたてを重視し、毎日自ら鰹節と昆布で丁寧にとっているのだ。

仕上がった黄金色のスープは、火にかけるとカツオと醤油の食欲をそそる香りが柔らかく立ち上ってくる。

もつはピンク色に輝く、国産牛。見るからに鮮度抜群で、プリッとした歯応えは心地よく、噛み締めれば甘い脂がジュワッとあふれ出す。

これぞ正統派博多もつ鍋の実力!旨みを纏ったキャベツやニラも秀逸で、優しい美味しさに心まで和むはずだ。


スープ&もつのこだわり


香り豊かな和だしに「こいダレ」を合わせたら、すぐに提供する。

醤油味一本で勝負するスタイルも、本店同様だ。

国産牛のもつは、鮮度を重視して東京の業者から仕入れる。

余分な脂を丁寧に下ごしらえしたあと、ゆがいて臭みを完全に除去してから鍋に盛る。2人前で約120g。


和牛の希少部位が楽しめる!


「名物和牛焼きさがり」2,750円。

塊のまま焼き、スライスして提供。ほんのりロゼ色で肉の旨みが強く、特有の歯切れの良さも楽しい。




『博多もつ鍋 幸 西麻布』が店を構えるのは、西麻布交差点近くの路地裏のビル2階。

高い天井が開放感を与える店内は、カウンターやテーブルのほか、座敷や半個室も完備する。


まるで地元の居酒屋のような雰囲気!麻布十番で人情味あふれる女将のもつ鍋店


5.人情味あふれる女将が、もつ鍋の“うまかもん”を追求
『麻布十番 ばり博多』

「もつ鍋」3,740円(2人前)。野菜はキャベツ、ニラのみで博多の王道スタイル。丁寧に出汁をとったスープは香りも芳醇だ。〆は長崎から乾麺で取り寄せる「ちゃんぽん」500円で


カウンター越しに「今日は寒かねぇ」と気さくに話しかける女将の青山順子さんは「生まれも育ちも」と語る、生粋の博多っ子。

『麻布十番 ばり博多』では、手作りのおばんざいなどを用意し、まるで地元の居酒屋のような雰囲気。だが、誰もが間違いないとオーダーする鉄板メニューがもつ鍋なのだ。

そのもつ鍋は、醤油味オンリーにこだわって提供している。


透明感のあるスープに凝縮した旨みが、和牛の持ち味を引き出す!


スープの要となる元ダレは「秘伝です」と笑うが、出汁はカツオと昆布のほか、サバ節やアゴまで加えており、複雑かつ上品に仕立てるのが青山さん流。

古くから懇意にする博多の業者から直送されるもつは、丁寧に下ごしらえをしてから一度サッと茹でこぼしており、旨みだけを抽出するひと手間を欠かさない。

もつは国産かと尋ねれば「もちろん!」と、小気味よく即答。

本場と変わらない美味しさと女将のフレンドリーな接客で、多くの常連の心をわしづかみにしている。


スープ&もつのこだわり


秘伝の元ダレ、削り節を使って複雑な旨みを醸す出汁は日々、店内で仕込む。

割合は1:5が目安。営業開始に合わせ、その日のスープを作る。

もつは国産牛で、2人前なら160g程度。

生の状態で仕入れ、下ごしらえにひと手間をかける。これがさっぱりとした味わいの秘訣だ。


骨付きの唐揚げを豪快にかぶりつく!


「骨付もも唐揚げ」990円は、絶妙な塩加減。

低温の油でじっくり時間をかけて揚げることで衣はパリッと、中はジューシーに仕上がる。




麻布十番のメイン通りの一本裏手に『麻布十番 ばり博多』は店を構える。

カジュアルな居酒屋の趣に心安らぐ。一直線に延びたカウンターで、女将との会話を楽しみたい!


鮮やかなトマトを丸ごと使用した、イタリアンなもつ鍋!


6.鮮やかなトマトもつ鍋は、撮って食べて大満足!
『西麻布 博多もつ衛門』

「伊衛門」1,980円(1人前)。ベーコンの香り、タマネギの甘み、トマトの酸味が三位一体となったスープ。粉チーズと粗挽き黒胡椒をアクセントにした〆のリゾット550円もユニークだ。(写真は2人前のポーション)


『西麻布 博多もつ衛門』は、六本木通りから一本入った路地裏にある、まさに隠れ家。

黒を基調とした店内は仄暗く、デート向き。その意外性にまず惹きつけられるもつ鍋店である。

肝心のもつ鍋も、これまでの常識を覆す斬新なスタイル。

カツオだしの醤油、豚骨ベースの塩といった王道だけでなく、韓国風やすき焼きなど、他店ではお目にかかれないスープを豊富にそろえ、未体験の美味しさを提案している。


もつ鍋の概念を覆す!さっぱりと酸味の効いたスープが染み渡る


なかでもカップルに一番人気なのが、洋風コンソメ味のトマトもつ鍋。

丸ごと1個のトマトが鍋の中央にドンと鎮座する見た目のインパクトは絶大で、まさに“映え”ビジュアル!

キャベツとニラ以外に、タマネギとベーコンが使われている点も個性的で、これらは甘みと塩気、香りを足す重要な役割を担う。

こうして、すべてが一体化したスープはもはやイタリアン。〆はリゾットがオススメという話にも納得である。

あらゆる食材をがっちり受け止める、もつ鍋の包容力に感激してしまう。


スープ&もつのこだわり


スープの仕上げはテーブルで行う。

キャベツやタマネギがしんなりしてきたら、トマトをお玉で崩し、全体に行き渡るように煮溶かしていく。ポトフを思わせる滋味深い味わいだ。

もつは鹿児島産を中心に国産牛を仕入れている。

黒毛和牛が入ることも。2人前で約160g。


もつ鍋店なのにふぐも楽しめる!


同店でもつ鍋と並ぶ看板メニューが、ふぐ料理。

「てっさ」4,180円は、下関産のとらふぐが厚めにカットされた贅沢なひと皿だ。




西麻布交番横の路地にひっそりと佇む一軒家『西麻布 博多もつ衛門』。

お忍び感ある店内は巷のもつ鍋店とは一線を画したムードで、上質な夜を約束する。



冬の定番といえば、やっぱり鍋。

特にもつ鍋は、ぷりっぷりのもつの旨みが体と心に沁みわたるはず。

寒い日々が続くが、もつ鍋を食べて英気を養おう。

▶このほか:上質なワインを破格で楽しめる新店が青山に誕生!フードも充実で1人飲みにもぴったり