「サポカー限定免許」対象車両が狭すぎ? 後付け装置NG 新車に買替え一択か その「条件」
2022年から、「サポカー限定免許」が創設されますが、その対象車両は、意外と少ないかもしれません。衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い防止装置などの後付けは、すべてNG。限定免許の申請にはクルマの買い替えが必要になってきそうです。
運転できる車両 保安基準と性能評価認定で厳格に
2022年から、運転できる自動車を先進安全機能のついた車両に限定する、「サポカー限定免許」が創設されます。それに関連して警察庁が2021年12月17日、道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令などの概要を公表し、パブリックコメントを求めています。施行は2022年5月13日です。
スバルの運転支援システム「アイサイト」。こうした先進安全装備のついたクルマの限定免許が導入される(画像:スバル)。
限定免許の導入そのものは、すでに決まっており、今回の一部改正は、その免許で運転できる車両の具体的な線引きを決めるものです。警察庁は「普通自動車」の中でも、次の2種類の条件にあてはまる先進安全技術を搭載した車両を対象に定めます。
・衝突軽減ブレーキを、道路運送車両法令の保安基準に基づき搭載している場合。
(40km/hで走行中に前方の静止車両に衝突しないなどの条件をクリアする車両)
・衝突軽減ブレーキと、ペダル踏み間違い時加速抑制装置が、先進安全技術の性能評価に基づいて認定されている場合
(20km/h以上で走行中に前方を横断する歩行者に衝突しないなどの条件をクリアする車両)
保安基準と性能評価認定は、先進安全技術を搭載した車両の基準を示している点では同じですが、趣旨が違います。
性能評価認定では、国土交通省が先進安全技術の普及を目指し、後付け装置でも積極的に認めてきました。しかし、警察庁は後付け装置については「サポカー」と認めませんでした。この理由について運転免許課は、次のように話します。
「サポカー限定免許に変更されると、サポカー以外の車両を運転すると無免許運転で罰則の対象になる。そのためサポカー対象車両を明確に定める必要がある」
こうした「線引き」を実施しても、警察庁運転免許課は「対象となる車両は、2021年12月時点で300型式ある」と、けして少なくないことを説明します。
限定免許は買い替え前提?
ただ、こうした線引きは、免許の切り替えを難しくすることが懸念されます。
例えば、警察庁が求める保安基準を満たす車両は、2020年11月以降の新車から搭載が義務付けられた新しい基準です。それ以前の車両で仮に同じ性能であっても保安基準を満たしているわけではないので認められません。また、性能評価でその点がカバーできたとしても、そもそも車両に後付けして対応することを警察庁はサポカーとして認めない方向です。運転免許課はこう説明します。
「後付け装置については、それが正しく取り付けられているか判別できず、それを確認する仕組みもない」
サポカー限定免許は運転に不安を覚えた人が免許返納までのステップとして創設される新免許制度ですが、これらのことを考えると、車両の買い替えとタイミングが重ならなければ、限定免許の申請に至らないことが想定されます。
トヨタと名古屋大学が開発した後付けの安全装置。これもサポカー限定免許の対象車としてはNGになる(中島みなみ撮影)。
また、高齢者が申請しても、運転適性基準で有利になるなどの優遇は一切ありません。サポカー限定免許は、普通免許で運転できる車両がサポカーに限定されるだけの純粋なダウングレード免許です。制度の仕組みが違うので同列に語ることはできませんが、免許取得前の教習数が短縮されるといった動機付けのあるAT限定免許などとは異なります。
サポカー限定免許の主たる利用者層になるであろう高齢者はどう考えるのか。そうした国民の意見を、パブリックコメントで反映できるかもしれません。期限は来年1月15日まで。警察庁のウェブから「お知らせ」「パブリックコメント」で、募集ページを閲覧することや応募ができます。
対象となる車両の具体的な型式などは、5月の施行までに警察庁ウェブサイトで掲載される予定です。