年末調整をすると、年末調整還付金を受け取れる場合があります。年末調整還付金が発生すると嬉しいものですが、これは誰もが受け取れるものではなく、一定の条件が必要です。この記事では、年末調整還付金が発生する条件や受け取り方法などについて、くわしく解説します。

年末調整還付金とは

会社員や公務員など給与所得を得ている人は、その年の所得税額が確定するまえに「源泉徴収」というかたちで、毎月一定の所得税を納めています。しかし、その税金額には扶養控除や配偶者控除などの各種控除が反映されていません。

年末調整を行ったときにそれらの控除を申請して税額の計算に反映させ、源泉徴収で納めすぎていた税金がある場合は、「年末調整還付金」が発生します。

ただし、年末調整還付金が発生する人は、源泉徴収で税金を納めすぎていた人のみに限られます。たとえば、特別扶養控除が適用されていた子どもの年齢が年内に24歳になったり、扶養家族の所得が増えたりして扶養控除の条件から外れた場合は、今まで適用されていた控除が適用外となるため、追加で税金を徴収される場合があります。

年末調整還付金は誰もがもらえるわけではないということは覚えておきましょう。

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年末調整還付金が発生する人の条件

年末調整還付金は、一定の条件を満たした人が受け取れます。それでは、その条件はどのようなものなのでしょうか。くわしく解説していきます。

生命保険や地震保険に加入している

生命保険や地震保険に加入している人は「生命保険料控除」や「地震保険料控除」を申告できます。申告すると一定額が所得金額から控除されるため、その結果所得税額が減り、納めすぎた所得税が還付されます。

生命保険料控除には2011年12月31日以前の契約である「旧制度」と、それ以降の契約である「新制度」の2種類があります。新制度では、新生命保険料・介護医療保険料・新個人年金保険料の3つに分けられており、それぞれ最高4万円を控除できます。地震保険料控除では、最大5万円を控除できます。

これらの控除を申請するときには、保険会社から送付される控除証明書が必要であるため、なくさないように保管しておきましょう。

個人型確定拠出年金や小規模企業共済に加入している

個人型確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共済に加入している人は、一定額の掛金を所得金額から控除できます。

個人型確定拠出年金とは、公的年金にプラスして積み立てられる「もうひとつの年金」です。個人型確定拠出年金は、掛金を全額所得金額から控除できること、会社員だけではなく自営業者や主婦も加入できることがメリットです。

それぞれで定められている掛金の上限までは全額所得から控除でき、納めすぎた所得税が発生すれば後日還付されます。

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員の人が、廃業や退職時の生活資金のために積み立てる制度です。掛金は月々1,000円から7万円の範囲で自由に設定でき、掛金全額を所得から控除できます。

扶養家族が増えた

所得が基準以下の親や親族と同居を始める、子どもが16歳になるときなどは、扶養親族の数が増えることになります。扶養親族が増えれば扶養家族扶養控除が適用され、納めすぎた所得税額が還付されます。

扶養家族の条件と控除は以下のとおりです。

※参考:国税庁「扶養親族」

2021年11月現在、16歳以下の子どもに対する扶養控除はありません。

本人もしくは家族に障害者がいる

納税者自身、および納税者の同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者である場合は、所定の額を所得金額から控除できます。

控除を受ける条件と控除額は、それぞれ以下の表のとおりです。

※参考:国税庁「障害者控除」

障害者か特別障害者かは、障害の程度によって判定されます。同居特別障害者とは、特別障害者であり、親族のだれかと同居をしている人のことです。

配偶者と離婚もしくは死別した人

配偶者と死別または離婚をして、ひとり親になった場合は「ひとり親控除」として35万円の控除を受けられます。このひとり親控除は、合計所得金額が500万円以下の人が対象です。

ひとり親控除に該当しない場合、女性であれば寡婦控除を受けられる可能性があります。寡婦控除の条件は以下のとおりです。

・夫と離婚後婚姻しておらず、扶養親族がいてなおかつ所得金額が500万円以下の人
・夫と死別後婚姻をしていない、または夫の生死が明らかでない人で所得金額が500万円以下の人(扶養親族の有無は条件にない)

ただし、毎月引かれている源泉徴収額にすでに反映されている場合は、年末調整還付金は発生しません。

住宅ローン控除の対象者(2年目以降)

住宅ローン控除では、1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で行うことができます。

住宅ローン控除は、控除額そのままの金額を「税額」から引ける「税額控除」です。たとえば、住宅ローン控除で戻ってくる金額が30万円の場合は、30万円がそのまま受け取れる計算になるため、年末調整還付金が高額になる傾向があります。

支払う所得税額よりも住宅ローン控除額のほうが大きい場合は、その分住民税額から控除されます。

年末調整還付金は必ず発生するものではない

年末調整還付金は「納めすぎた所得税を戻してもらう」というものであるため、控除が適用される場合のみ発生します。そのため、そもそも税金を納めすぎていない場合は、年末調整還付金はありません。

逆に追徴課税されることもある

年末調整は、その年の所得税額を正確なものに計算しなおすという作業です。もしも年末調整の計算で、源泉徴収分だけでは所得税の支払いが足りないと判断された場合は、追加で所得税を支払います。

子どもの独立により扶養親族が減る、配偶者が働きだし配偶者控除を受けられなくなる、といったことがあれば、今まで適用されていた控除は受けられません。控除がなくなるとその年の合計所得金額が増えるため、予想されていたよりも所得税額が多くなります。

年末調整で追徴課税が発生した場合は、税務署ではなく勤務先に支払いましょう。

年末調整還付金の受取時期と受取方法

年末調整還付金の受け取り時期は、一般的に年末調整で還付申請を行ってから1ヶ月ほどあとです。ただし、勤務先によっては異なる場合があるため、いつごろ年末調整還付金を受け取れるのかを知りたい場合は、勤務先に問い合わせたほうが確実です。

また、受け取り方法も、手渡しや、12月や1月分給与に上乗せしての振り込み、別途単体で振り込まれるなど、勤務先によってさまざまです。こちらも正しい受け取り方法が知りたい場合は、勤務先に問い合わせましょう。

まとめ

年末調整還付金は、年末調整で控除などが適用されて課税所得が減った人が受け取れるものです。源泉徴収であらかじめ納めていた所得税が「納めすぎであった」と判断された場合、納めすぎていた所得税分が年末調整還付金として受け取れます。

逆に、扶養控除や配偶者控除が適用外となった場合は、還付金でなく追徴課税が発生することもあります。

年末調整還付金の受け取り方や受取時期は勤務先によって異なるため、気になる場合は勤務先に確認することをおすすめします。