光熱費は日々節約を心がけていても、なかなか思うような結果に結びつかない場合があります。ガス代も然りです。毎月、請求書が届くたびに一喜一憂している人もいるでしょう。この記事では、ガス代の節約方法をガスコンロに着目して解説します。また、ガス会社の切り替えという手法についても紹介します。

家庭のガス代、4分の1はガスコンロ

家庭内では、冷暖房や給湯、照明など、さまざまな用途でエネルギーを消費しています。

【参考図】家庭内のエネルギー源の歴史的推移

出典:資源エネルギー庁「世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移」

資源エネルギー庁「世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移」によると、家庭内のエネルギー源は、1965年には石炭が35.3%と最も大きく、次いで電気22.8%、都市ガス14.8%、プロパンガス(LPガス)12%の順でした。

これが2018年になると、家庭内で石炭が使われなくなり、代わりに電気が51.2%と最も大きな割合を占め、次いで都市ガス21.9%、プロパンガス10.2%と大きく変わりました。

【参考図】家庭内のエネルギー消費用途の歴史的推移

出典:資源エネルギー庁「世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移」

家庭で使われるすべてのエネルギー消費を用途別に見ると、冷房、暖房、給湯、ちゅう房、動力・照明他(家電機器の使用等)の5用途に分類することができます。このうち給湯、ちゅう房(ガスコンロ)が占める割合は、2018年でそれぞれ28.4%、9.2%であり、この2用途をいずれもガスでまかなうと仮定して両者の比率を計算すると、給湯が約76%、ちゅう房(ガスコンロ)約24%になります。

家庭のガス代、4分の1はガスコンロといえるわけです。

都市ガスとプロパンガス

ガスには都市ガスとプロパンガスがある(写真はプロパンガス)

家庭内で使われるエネルギー源の一つであるガスには、都市ガスとプロパンガスの2種類があります。ガス代を節約するために、まずはこの2種類の違いを理解しておく必要があるでしょう。

都市ガスとプロパンガスの違い

〈成分の違い〉
都市ガスとプロパンガスとでは、成分が異なります。都市ガスはメタンを主成分とする液化天然ガス(LNG)が主原料になっているのに対し、プロパンガスはプロパン・ブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)が主原料です。本来はどちらも無色無臭ですが、ガス漏れを起こした際に気づきやすくするために、臭いが付けられています。

〈ガス導管かボンベか〉
ガスの供給方法には大きな違いがあります。都市ガスは、地下のガス導管を通じて契約者の家に供給されますが、プロパンガスは、ガス事業者からガスボンベが各契約者の家に届けられます。

〈都市ガスは都市部、プロパンガスは全国〉
都市ガスとプロパンガスは必ずしも自由に選択できるわけではありません。先述したように、都市ガスを契約者の家に供給するにはガス導管が必要です。ガス導管の設置工事には多額の費用がかかるため、ガス会社にとっては多くの利用者がいる都市部でなければ設備投資の回収が見込めません。都市ガスは、導管が敷設されている都市部でしか利用できない都市限定のガスなのです。

一方、ガスボンベによる配送で供給されるプロパンガスの場合は、ガス導管の設置工事は不要です。このため、全国どこででも利用可能なガスといえます。ちなみに、経済産業省「ガス事業の現状」によると都市ガスとプロパンガスの割合は2013年時点で、都市ガスが約53%、プロパンガスが約44%です。

プロパンガスは都市ガスの2倍高い

都市ガス、プロパンガスともに料金は一律ではなく、事業者や地域によって違いがあります。都市ガスも、人口が多く利用者が多い都市と、利用者が少ない都市とでは料金に差があります。

ただし、経済産業省「2015年10月19日第24回ガスシステム改革小委員会資料」によると、プロパンガスのほうが都市ガスより2倍ほど高いとされています。プロパンガスが高い要因としては、ガソリン代や車両費、人件費などの配送コストがかかること、料金規制がなく自由に価格を設定できることなどがあげられます。

ガスコンロでガス代を節約する方法

家庭で使われるガスのうち、約4分の1がガスコンロで使われています。ガス代の節約には、ガスコンロの使い方もポイントになりそうです。ここからは、ガス代節約につながるガスコンロの使い方について解説します。

電子レンジを活用

野菜の下ゆでは電子レンジで

料理をする際、電子レンジを上手に活用すると、ガス代だけでなく時間の節約にもなります。さらに、野菜の下ゆでなどは電子レンジを使うと短時間で済むうえに、お湯でゆでるよりビタミンの損失が少ないというメリットもあります。

資源エネルギー庁「家庭の省エネ徹底ガイド 春夏秋冬」によると、ほうれん草やキャベツなどの葉物野菜をはじめ、じゃがいもや里芋、にんじんなどの根菜や、ブロッコリー、カボチャなどの下ゆでを毎日電子レンジで行った場合、年間約3,240円の光熱費を節約できます。ただし、煮込みなどの時間をかけて調理する料理の場合は電気代よりガス代の方が安く済むので、調理によって電子レンジとガスを使い分けるとよいでしょう。

炎の調整

ガスコンロの炎を鍋やフライパンの底からはみ出さないように調節するのも、ガス代の節約や省エネに貢献します。資源エネルギー庁「家庭の省エネ徹底ガイド 春夏秋冬」によると、たとえば1 日 3 回水 1リットル(20℃程度)を沸騰させる時、強火から中火にした場合、年間約410円のガス代が節約でき、ガス2.38立方メートルの省エネにつながります。さらに、コンロの点火は鍋やフライパンをのせてから行うようにするのもポイントです。

ガスバーナーをこまめに掃除する

ガス代の節約には、ガスバーナーのこまめな掃除も大切です。ガスコンロのバーナーは、油はねや吹きこぼれなどにより汚れが付きやすい箇所です。

この部分が汚れているとガスや空気が通りにくくなり、本来の火力に達することができず、熱効率が下がります。バーナーの汚れは放置すると炭化して落としにくくなるので、定期的に掃除して詰まりを発生させないようにしておきましょう。

大きめの鍋でたくさん料理

料理をする際は、大きい鍋を使うと炎に接する面積が大きくなるため、熱効率がアップしてガス代の節約になります。調理法によってもガスの使用量が変わります。
もっともガスの使用量が少ないのは炒め料理で、次に蒸し料理、最後が煮込み料理です。煮込み料理をする場合は、圧力鍋や保温鍋などを使うと調理時間を短縮できるのでガス代の節約になります。また、料理は一度に家族全員分を作って、作り置きするとよいでしょう。

余熱を利用

ガス代を節約する調理法として、加熱後に蓋をして火を止め、余熱を利用するのもおすすめです。余熱を利用できる料理には、カレー、鍋物、ゆで卵などがあるほか、乾麺をゆでる場合などもゆでこぼしがなく便利です。また、カレーやシチューなどの煮込み料理は、一度沸騰させたら保温容器にセットするだけで調理が完了する保温鍋を使うと、煮込まなくて済むのでガス代がかかりません。保温鍋がない場合は普通の鍋で一定時間煮た後、ガスを止め、タオルやブランケットなどで鍋を包んでも同様の効果が得られます。

ガス会社を切り替える

毎日ガスの使い方に気を付けることは、ガス代の節約と省エネを同時に達成できて有意義ではありますが、ガス代の節約にフォーカスした場合は、ガス会社を切り替えるという方法もあります。ただし、切り替えの際は諸条件があります。
また、さまざまな料金プランがあるので、各家庭にあったプランを選ぶことも必要です。以下に詳しく説明します。

都市ガスの場合

都市ガスの小売自由化でガス会社を選べるようになった

かつての都市ガスは1地域1社に定められていましたが、2017年4月から始まった「ガスの小売自由化」により、料金やサービス内容などによって、自由にガス会社を選べるようになりました。戸建て住宅はもちろんのこと、分譲や賃貸の集合住宅でも1戸ごとにガス会社の契約変更ができます。

ガス会社切り替えることにより、コンロやガス器具などの取り換えや、新たな工事を行う必要はありません。料金は会社やプランによってさまざまですが、切り替え月から期限付きで適用されるスタート割や、電気とガスのセット割などがあり、従来のガス料金に比較するとかなりお得感が得られる料金設定になっています。

プロパンガスの場合

プロパンガス会社の切り替えの場合は、住宅によって難易度が異なります。戸建ての持ち家であれば、すぐに切り替えられますが、戸建てであっても賃貸の場合は、オーナーと相談する必要があります。また、集合住宅は、分譲であれば管理組合の合意が必要になり、賃貸であればオーナーの了解を得なければなりません。

切り替えを検討する際は、ガス事業者との契約内容を確認しておくことをおすすめします。ガスの配管工事費用をプロパンガス会社が負担し、給湯器やコンロなどの機器の無償貸与契約などを結んでいる場合は、違約金が発生することもあります。

ただし、違約金が発生しても、新たに契約を結ぶガス会社が違約金の精算や手続きを肩代わりしてくれる場合もあるので、諦める必要はありません。まずは、現在の料金の状況をしっかりと把握したうえで、ガス事業者のホームページを見て比較したり、相談したりしてみるとよいでしょう。

まとめ

毎月の固定費はできる限り低く抑えたいものです。ガス代は、日々コツコツと使い方に注意しながら節約するのが基本ですが、ガス会社の見直しで大幅な節約につながる可能性もあります。まずは、現状のガスの契約状況を確認してみることからはじめてみるとよいでしょう。