コロナ感染恐れて帰省中、夫は不倫していた…相手は学生の可能性、慰謝料は請求できる?
コロナ禍の感染不安を理由に、子連れで実家に帰省した女性から「帰省中、夫が不倫していました」と、弁護士ドットコムに相談が寄せられています。
相談者の女性によれば、感染が広がり始めたころ、小さな子どもがいたため、首都圏を出て実家に帰省しました。不倫の証拠として、相手女性の部屋に入るところや職場から腕を組んで歩いているところ等の複数枚の写真があります。発覚後、夫は自宅を離れ、不倫相手と同棲を始めたそうです。
不倫相手が学生の可能性があるため、慰謝料を請求したとしても、支払われないのではないかと相談者は心配しているようです。女性はどう対応するべきなのでしょうか。下大澤優弁護士に聞きました。
●相手が学生の場合、慰謝料はどうなる?
ーー不倫相手が学生でも慰謝料請求はできますか
結論からいいますと、不貞相手が学生であっても慰謝料請求をすることができます。
民法第712条には、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」がない未成年者は賠償責任を負わないと規定されていますが、本事案の不貞相手がこのような知能を欠くことはないでしょう。
ーー先方に支払い能力がない場合、相手の親に請求したり、相手が社会人になってから支払わせたりすることはできるのでしょうか
不貞行為の責任は不貞相手本人のみが負うことになるため、不貞相手の親に対して慰謝料等を請求することはできません(責任能力のない未成年者の場合は、親権者の監督義務が問われることになりますが、本事案は対象外です)。
不貞相手本人に支払能力がない場合には、判決等で支払義務を確定させておき、将来社会人となり支払能力が生じた時点で取り立てをすることも可能です。請求(訴訟提起も含む)が遅れると慰謝料請求の消滅時効(民法第724条)が完成してしまうリスクがあるので、請求だけは早めにしておいた方がよいでしょう。
●さらなる証拠が必要となる可能性も
ーー不倫を否定された場合、相談者が提示している証拠で不倫を立証することはできますか
一般的に「不貞」とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係をもつことを意味します。
つまり、単に親密な関係であることを立証するだけでは足りないわけです。本事案の証拠(写真)は、夫と不貞相手とが性的関係にあることを疑わせる要素を含むことは間違いありませんが、立証という視点で考えると不足感が否めません。
「女性の部屋に遊びに行っただけ」、「腕を組んだが、それ以上の関係にはない」といった弁解をされたとき、これを覆すためにはさらなる証拠(不貞相手の部屋に長時間滞在していたことを裏付ける写真など)が必要だと思います。
ーーなお、今回のケースでは明らかではありませんが、既婚者の場合、相手に既婚と伝えていないケースも多くあります。その場合、慰謝料はどうなりますか
不貞相手に「過失」があったか否かが問題となります。より具体的にいいますと、「既婚者だと知らなかったことについて不注意がなかったか」という問題です。
この点は具体的事情によりますが、本事案の夫には子がおり、相応の年齢かと思われます。既婚者であってもおかしくない年齢の男性と交際するにあたり、既婚か否かを一切確認することがなかったとすれば、不貞相手に過失が認められる可能性はあると思います。
その他、既婚者であることを疑わせる事情(例えば、左手の薬指に指輪をつけていたなど)が存在すれば、不貞相手の過失が認められる可能性は高まります。
【取材協力弁護士】
下大澤 優(しもおおさわ・ゆう)弁護士
2012年司法試験合格、2014年に弁護士登録。勤務弁護士を経て2016年に定禅寺通り法律事務所(仙台市)を開設。離婚・男女関係のトラブル(婚約破棄等)に注力している。
事務所名:定禅寺通り法律事務所
事務所URL:https://jozenji-law.com/