岡口裁判官の弾劾裁判は長期化も 弁護団「全面的に争う裁判になる」
SNSへの投稿などをめぐって、弾劾裁判所に訴追されている仙台高裁の岡口基一裁判官について、岡口裁判官の弁護団と、岡口裁判官を罷免しないよう求めている会が9月8日、都内で記者会見を開いた。弁護団の1人は、岡口裁判官の行為が罷免に該当するかどうかの評価について「全面的に争う」とした上で、裁判の長期化を示唆した。
弁護団の野間啓弁護士は、弾劾裁判について、裁判官の免官でなく、法曹資格の喪失を伴う「罷免」するかどうかのみを決めることや、一審制で異議申し立てができない点を紹介。過去の7件が、刑事犯罪によるものであったことを踏まえて「(弾劾裁判は)明白な非行に対して形式的に行うこと前提としていて、誰が見ても明確な場合において限定的な運用が想定されている」との見解を示した。
弾劾裁判が、限定的に運用されてきた理由として、政治による司法への介入という三権分立に関わる点を挙げ、「(裁判官の表現行為という)主観的評価や時代によって評価が変わるような問題で、弾劾裁判制度がこれまで自律的に守ってきた、最低限度形式的にやるルールを逸脱してしまっていいのかという問題意識がある」とした。また、野間弁護士は、岡口裁判官の一連の行為について、「弁護士会だとしたら、戒告などはあるかもしれないが、退会命令、除名は考えられない」との考えも述べた。
同じ弁護士団の西村正治弁護士は、弾劾裁判について、国政選挙が終わった後になるとの見通しを示した上で、「(罷免に相当するような行為かどうかの評価について)全面的に争う裁判だろう。どれくらい開かれるのかわからないが、(刑事犯罪を前提とした前例のように)2、3回では終わらないと想定している」として、裁判が長期化する可能性を示唆した。
「不当な訴追から岡口基一裁判官を守る会」世話人の1人である大貫憲介弁護士は「いままでの弾劾とはまったく異なるものがおこなわれようとしている。裁判官の私的表現が、弾劾裁判で裁かれるというのは、民主政治と両立するのかという大きな疑問をもっている」と話した。そのうえで、今後、弁護士会や弾劾裁判の裁判員である国会議員が所属する政党などに働きかけていく意向を示した。