農業アイドル最低賃金訴訟、請求棄却 「労基法上の労働者であったと認めることはできない」
アイドル活動の給料が最低賃金法の基準を下回っていたとして、愛媛県を中心に活動する農業アイドルの遺族が当時の所属事務所に対し、約8万円の未払い賃金を求めた訴訟の判決で、東京地裁(佐藤卓裁判官)は9月7日、「労働基準法上の労働者であったと認めることはできない」と請求を棄却した。
原告側の代理人弁護士が判決後、都内で会見を開き、「裁判所はアイドルがイベントに参加するかしないかを選べたか選べなかったかを労働者かどうかの決め手であるという判断をしたが、諾否の自由に偏重しており、安易な認定だ」と控訴する方針を示した。
●判決の内容は
訴えたのは、愛媛県松山市を中心に活動する農業アイドル「愛の葉Girls(えのはがーるず)」のメンバーだった大本萌景(ほのか)さん(当時16)の遺族。遺族は萌景さんが自殺したのはパワハラや過重労働が原因だとして、所属事務所などに対し損害賠償を求める訴訟を起こしている(東京地裁で係属中)。
個人事業主は労働基準法や最低賃金法の適用対象外だが、原告側は「大本さんは労働基準法の労働者であり、支払われた報酬額は、最低賃金法の基準を下回っていた」とし、差額の約8万円を未払い賃金として請求していた。
判決は、大本さんはグループのイベントの9割程度に参加していたが、イベントへの参加はシステムに予定として入力されたイベントについて大本さんが「参加」を選択して初めて義務付けされるもので、「不参加」を選択したイベントへの参加を強制されることがなかったことなどから、「タレント活動を行うか否かについて諾否の自由を有していたというべき」と指摘。
所属事務所に従属して労務を提供していたとはいえないとして、「労基法上の労働者であったと認めることはできない」と結論づけた。
原告側の「少なくとも地産地消フェアでの販売応援に関しては、芸能的要素はなく、労基法上の労働者として業務に従事していた」という主張については、「直接、お客に商品を売って代金を受け取るなどの売り子業務はしていなかった。店舗における販売活動そのものとはいえず、芸能的要素を伴った活動であったというべき」と退けた。