ブルーインパルスも飛んだ東京パラリンピック開会式当日、会場となる新国立競技場の周辺には多くの人が詰めかけました。周辺道路の完全封鎖する異例の厳戒態勢、その周辺では騒然とした光景が見られました。

首都高の料金所があったことすらわからない「完全封鎖」ぶり

 2021年8月24日(火)13時過ぎの東京・新国立競技場周辺には、ブルーインパルスの飛行を待ち受ける人が詰めかけていました。東京オリンピックの開催に続いて、東京パラリンピックにも多くの関心が集まっていることがわかります。

 しかし、小池百合子東京都知事が「感染状況は災害級」と警告を発する中で開催される東京2020パラリンピック。現場にはテレビカメラが見せない開会式直前の新国立競技場周辺の風景がありました。

 周辺を歩いてまず目につくのは、これでもかというほどの厳重な道路封鎖です。新国立競技場に最も近い首都高速「外苑」出入口周辺の道路は料金所の前にもフェンスが設置されたため近づくことができません。入口はパネルで仮囲いされ、バリケードのためでしょうか、足場も組んでありました。料金所は渋滞緩和や要人通行のために閉鎖されることがありますが、料金所があったことすらわからないほど厳重な閉鎖は見たことがありません。

 幹線道路の外苑西通りから外苑出入口に通じる道は、さらに念を入れた警備体制が敷かれています。機動隊の大型車で道路を塞いだうえに、防犯用パネルゲートを設置し、クルマも人も完全遮断していました。

●開・閉会式当日は、深夜まで幹線道路を完全封鎖


首都高の外苑出入口周辺はバリケードで完全封鎖。2021年8月24日(中島みなみ撮影)。

 オリンピック開催中は、この新国立競技場前で反対デモが行われている様子がニュース映像などで流れていますが、実際にそこで留まることができる人は、ほんの一部でしょう。開・閉会式当日は、競技場の半径1.5kmほどの範囲で道路が閉鎖されます。会場周辺の住民は、こう話してくれました。

「オリパラの開・閉会式の4日間は、特に規制が厳しくなって、周辺の道路が長時間通行止めになるのでクルマが出せないですね。規制のかかっていない午前中にうっかりクルマで仕事に出た人は帰ってこられず、遠くの時間貸し駐車場にクルマを止める羽目になったって人も近所にはいますから。私も千葉県に親戚がいて、いつもなら外苑から首都高に乗れるのですが、霞が関まで行って利用しましたね」

 開・閉会式はおおむね15時頃から翌1時頃まで、幹線道路の通行を完全に遮断します。朝夕の通行規制などでは住民が申請すれば許可されることがありますが、オリパラ、特にこの時間は例外がありません。

「歩道から出て!」「会場の導線あけて!」押し込められる歩行者

 JR千駄ヶ谷駅前24日昼過ぎ。1964年の東京オリンピック会場となった東京体育館前にも多くの人が詰めかけていました。千駄ヶ谷駅は、24日夜の東京パラリンピック開会式会場となる新国立競技場の最寄り駅。会場への出発点です。

 それもあってか、13時には多くの人がブルーインパルスの記念飛行を待ちわびていました。入間基地を飛び立つ14時頃、人はさらに増えて、歩道柵には待ち人がびっしり。すると、通行規制にあたる機動隊員が、人々を歩道の点字ブロックより外側へと押し出してしまいました。

「点字ブロックの外側に入ってください。(地下鉄)出入口の邪魔になります」(第五機動隊)

 呼びかけからすると、歩行者の通行を妨げる恐れがあると判断したのでしょう。しかし、東京体育館側に押し込められた人たちは、今度は大会運営者から、こう指摘されてしまいました。

「会場の導線をあけて下さい」

 集まった人は、例年の通行量からすると、むしろ少な目。ただ、東京体育館前は本来、入口まで広場のようなアプローチがあるのですが、オリパラのための工事用パネルで囲まれていて、その広場も歩道幅ほどの余地しかありませんでした。

●来訪者を寄せ付けない競技“城”


千駄ヶ谷駅前でブルーインパルスの飛行を観覧する人々。2021年8月24日(中島みなみ撮影)。

 東京体育館と国立競技場の周りはフェンスで遮断されているだけでなく、体育館と新国立競技場を結ぶ道路もすべて通行止めです。人々は、フェンスと道路端のあいだにできた幅1.5mほどの路地に密集しました。

 この路地も飛行を見届けた人で埋まっていました。外出自粛が求められている時期だから、警察も歩行者にまったく考慮する必要ないという考え方もありますが、本当にそれでよかったのでしょうか。この路地を利用するのは、足腰に自信のある人ばかりではありません。

 また、オリンピックでは五輪マークの競技場広場がシンボリックに放送されましたが、実際の競技場は“下界”と遮断されています。フェンス越しに建物にカメラを向けることが、競技場を目にした人ができる精いっぱいのことです。

 足場を組んだ頑丈なゲートと、競技場を囲む高いフェンス。そして、物々しい警備。まるでお城のような競技場が、外出自粛で静まり返る下界とコントラストを作っていました。