酒提供めぐる政府文書、財務省「要請だから大臣にあげなかった」 ルールなき「お願い行政」の弊害か
酒の提供をやめない飲食店に取引金融機関から順守を働きかけてもらう趣旨の発言で批判を浴びた西村康稔経済再生大臣。政府文書により、こうした方針の決定には、西村氏が担当する内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室だけでなく、財務省や経産省などもかかわっていたことが明らかになった。
7月12日、国民民主党の山尾志桜里議員はツイッターにこの文書をアップ。
「発出前の事前調整は金融庁監督局監督調査室・財務省大臣官房政策金融課・経産省中小企業庁金融課の3部署と内閣官房でなされており、麻生大臣にはあげていなかったとのこと」
とつぶやいている。
同推進室によると、山尾氏の発言は事実で、西村氏の発言があった8日以前から調整を進めていたという。
●「政府系金融機関も使った脅し」
山尾氏のツイートを引用する形で、同党の玉木雄一郎代表は次のように投稿している。
「衝撃的なのは、金融庁監督局だけでなく、財務省の政策金融課や経産省の中小企業庁金融課が依頼の名宛人として入っていること。つまり、本来中小零細企業を助けるべき政府系金融機関も使って、ある種の脅しと締め付けを要請しようとしていたわけだ」
こうした点について、財務省の担当者に、取引金融機関からの呼びかけは事実上のプレッシャーになることは想定していなかったのか、と確認したところ、
「強制力のないお願いで、一般的な感染対策を呼びかけてもらうものだ。圧力をかけるという指導の趣旨はなく、大臣にはあげなかった。文書も、金融機関に『取引先』に対策の徹底を働きかけてもらうようお願いする内容で、『飲食店』に限定したものではない。働きかけは色々なところからあったほうが良いだろうという趣旨だ」
と説明した。
世論が反発し、撤回となったように取引金融機関からの呼びかけが、事業者にとって単なる声かけで済むとは考え難い。財務省の説明を前提にすれば、これまで批判されてきた「忖度」を期待した「お願い」で物事を進めようとする、政府の姿勢が改めて見える文書という評価もできそうだ。
なお、経産省は担当者が不在とのことだった。