ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第49回は「#ルーロー飯」。

台湾グルメが引き続き人気。インスタグラムでの「#ルーロー飯」は投稿件数が約5万件


ルーロー飯は台湾の小皿料理「小吃(シャオチー)」のひとつで、醤油、砂糖、酒、油葱酥(ヨウツォンスー:揚げた玉ねぎ)と豚バラ肉を煮込んだ‟肉そぼろ丼“といったところだ。台湾では定食屋の超定番メニューで、台湾料理でおなじみのスパイス、八角が利いていたり、そぼろ状ではなく角煮のように大ぶりなブロック肉がのっていたりと、店によってレシピも様々だという。

インスタグラムで「#ルーロー飯」の投稿数は現在(2021年5月時点)で5万件。その多くが台湾旅行で食べた思い出のルーロー飯や、コロナ禍でテイクアウトしたもの、自宅で作ったものだ。親子丼、海鮮丼などに次ぐあらたな丼ものとして日本人になじみやすかったのか、半熟卵と青菜を添えた盛り付けが写真映えするためか、最近、多くの人が自宅でルーロー飯を楽しんでいる。

○台湾から20年前に上陸。日本における元祖はここだ

‟台湾の吉野家”とも言うべき、1960年創業の台湾の老舗飲食店チェーン「鬍鬚張魯肉飯(ひげちょうるうろうはん)」は20年程前に日本に初上陸した。一時は日本でもチェーン展開し、渋谷の道玄坂にも店があったのだが、いつのまにか東京から姿を消した。だが今でも日本で1店舗だけ、石川県に「鬍鬚張魯肉飯工大前店」が残っている。嬉しいことにレトルトの通販も行っている。

台湾でもおなじみの鬍鬚張魯肉飯(1パック420円、送料別)は石川県の「鬍鬚張魯肉飯」通販サイトから取り寄せができる


同店でセントラルキッチンの工場長を務める加納宏二さんは、魯肉(ルーロー/豚肉の煮込み)作り20年というベテランだ。

「この店は17年目になりますが、使っている調味料、香辛料はすべて台湾の『鬍鬚張魯肉飯』から直輸入したものです。輸入できない肉については、日本の精肉業者さんに台湾に行ってもらい、本家と同様の豚ほほ肉とそこに付いた脂身の切り取り方を学んでもらっています。このほほ肉と脂身によってトロッとした独特の仕上がりが生まれますから、他のどの店にも真似のできない唯一の味だと思います」と話す。

店で人気なのはもちろん「魯肉飯」(420円)。白飯にコラーゲンたっぷりの煮込んだ豚肉をかけたシンプルなスタイルだ。魯肉に煮卵、青菜、もやしも加わった「鬍鬚張丼(750円)と人気を二分する。通販サイトからはレトルトパックになった魯肉は取り寄せることもできる。1人前100g入りで420円(送料別)。

レトルトパックを取り寄せてみた。湯で2~3分温めて封を切ると、八角の香りがした。トロっとした汁にそぼろ大の豚肉がたっぷり。ごはんにかけて汁ごとかき込んでみると、見た目より味が濃くなく、サラサラといくらでも食べられそうだ。甘辛い味わいに揚げた玉ねぎの香ばしさがいいアクセントになっている。常備しておけば、疲れた日にもサッとスタミナメニューができて便利だ。

「昨年4月の緊急事態宣言以降はコンスタントに売れていますね。昔、店舗のあった首都圏からの注文が圧倒的に多いです。もともと基本的にレトルト商品は昔からのファンの方々に思い出の味を届けたいという思いから始めたもので、少量生産のためすぐに売り切れてしまい、ご迷惑をおかけすることもあります」(加納さん)。

○挽き肉を加えて炒めるだけの「素」も! 完成度の高さに驚き

豚の挽き肉を炒め合わせるだけでできる「菜館Asia ルーロー飯の素」(162円)


温めてごはんにかけるだけのレトルトとは即席度で負けるものの、豚ひき肉を加え、フライパンで炒めて3分の「菜館Asia ルーロー飯の素」(162円)は、本格度×手軽さで2018年の発売以来、人気が高い。発売元は中華やエスニック料理をはじめ調味料、スパイスを幅広くそろえるエスビー食品だ。

「家庭でエスニックメニューを作るとなると、専用調味料やふだんはあまり使わない食材を用意するのがハードルになりがちです。身近な素材を使って、調理も簡単にでき、しかもお店で食べるような本格感のある香り、味わいをお楽しみいただけるのが『菜館Asia』シリーズです。八角とオイスターソースで香り豊かな甘辛いルーロー飯の素もそのひとつです」と、同社広報・IR室の七野知未さんは言う。特に40代の男性、30代の女性の利用が増えているそうだ。

同社のレシピサイトには約6500種類のレシピが公開されており、「ルーローハン」は検索数No.1とのこと。人気の高さがうかがえる。一からルーロー飯を作るのもいいが、小一時間は調理にかかるので、すぐに空腹を満たしたいときは「ルーロー飯の素」が頼りになる。

○フレンチビストロなのに、〆にルーロー飯!?

浅草のビストロ「NOURA」でテイクアウトできる「魯肉飯」(1080円)


「ミシュランガイド東京2021」で「ビブグルマン」(価格以上の満足感が得られる料理を、6,000円以下で楽しめる店に与えられる)を獲得したフレンチビストロ「NOURA(ノウラ)」では、食事の〆にルーロー飯がいただける。

同店および姉妹店であるミシュランガイドの2つ星に輝くフレンチレストラン「Hommage(オマージュ)」のオーナーシェフ、荒井昇さんは同店のルーロー飯の生みの親だ。「台北に行ったときに初めて食べたルーロー飯がおいしくて、オマージュのまかないで作っていたのですが、2018年にオープンしたノウラでは当初から食事の〆としてお客様に出してきました」。

「まだ、ルーロー飯が今ほど流行しておらず珍しかったので、お客様にたいへん好評で、これを楽しみにいらっしゃる方も多くなりました。ノウラの食事はボリュームがあるので、ルーロー飯まで行き着けない方のために、テイクアウトも開店当初から用意しています。コロナ禍の影響で、昨年はテイクアウトの注文数も増えました」(荒井さん)。

荒井シェフのルーロー飯は、岩手産高原豚のバラ肉およびゼラチン質たっぷりの豚足を、台湾醤油や国産の黒糖と煮込んだものだ。ノウラではプリフィクスのディナー(6380円)を提供しており、〆にルーロー飯(フルサイズ:550円、ハーフサイズ330円)を追加注文すると、こってり煮込まれた豚肉と卵が白飯にのせられて運ばれてくる。

テイクアウトはごはんに盛り付けた「魯肉飯」(1080円)のほか、真空パックにした魯肉2人前(200g、1620円)も販売。営業時間中はいつでも販売されているが、時間帯によっては対応ができないこともあるので、事前に電話で要確認だ。

自宅での食事、弁当にも応用できそうなルーロー飯は、飲食店のメニューだけでなく、レトルトや身近な食材に混ぜるだけでできる「素」、テイクアウトとしても人気だった。ネット検索してみると、ふりかけまで登場しているようだ。コロナ禍で台湾旅行のできない今、家庭で味わいつつ旅気分を味わうのもいいだろう。