全館グランドオープン

 1971年6月5日、日本の超高層ホテル第1号である京王プラザホテルが完成した。地下3階、地上47階建てで、高さ178メートルと、当時、日本一の高さを誇った。

 京王プラザホテルは、西新宿の開発プロジェクトの一環として建設が始まった。

 1950年代、首都機能を分散させるための「副都心計画」が持ち上がり、新宿・池袋・渋谷の開発が一挙に進む。

 新宿では、京王プラザホテルや住友ビルを皮切りに、三井ビルや都庁といった高層ビルが次々と建設されていく。

 新しく生まれるものがあれば、必ず何かが消えていく。冒頭の写真を見ると、京王プラザホテルの左横に、広々とした空き地が確認できる。これは、かつて新宿にあった淀橋浄水場の跡地だ。

 東京都水道局の担当者が、こう語る。

「江戸時代は、神田上水、玉川上水などに川や池の水を導き、そのまま飲用水として使用していました。

 明治時代に入ると、上水の汚染や木樋(もくひ:木製の水道管)の腐食といった問題が起こり、1886年(明治19年)にはコレラが大流行し、多くの市民が犠牲となってしまいました。

 これを契機に東京の水道の近代化が図られ、1898年12月1日、淀橋浄水場から神田・日本橋に給水が始まりました」

 以降、徐々に給水地区が東京全体に広がっていく。市民は、蛇口からいつでも清潔な水を得られるようになり、東京の衛生環境は大きく変わった。

 1965年、「新宿副都心計画」により、浄水場は東村山に移転。東村山浄水場は、いまでも東京都4大浄水場の1つとして、東京の給水インフラを支えている。

 京王プラザホテル横にある新宿中央公園には、淀橋浄水場職員たちの憩いの場であった六角堂が残されている。浄水場があった頃、六角堂から富士山が綺麗に見えたそうだ。

写真提供:京王プラザホテル