春は子どもの便秘に注意。「トイレが怖い」と思わせない親の声かけ
入園や入学で環境が変化する春は、便秘に悩まされる子どもが少なくありません。多くの子どもたちの便秘を診察してきた細田和孝先生に、便秘のメカニズムやクセにさせない対処法を伺いました。
週に3回出なければ便秘です
寒い冬が終わり、うららかな春の気配が感じられます。子どもたちが薄着になる春から夏のこの季節は、着替えの手間が少なく洗濯物もよく乾くため、トイレトレーニングの好機だといわれています。
小さな子どもが言葉を話し、便意や尿意を伝えられるようになるのは喜ばしいことですよね。
一方、自分でトイレに行くことは、子どもにとって大きな環境の変化でもあります。大人と同じく、環境が変わるとうんちが出なくなる便秘に悩まされるお子さんは少なくありません。ある程度大きくなり、自分でトイレに行けるお子さんであっても、入園や入学などの節目の年に便秘に悩まされるケースもよく耳にします。
「一般的にはそう心配することのない子どもの便秘ですが、クセになってしまうと厄介な症状でもあります」と話すのは、ナビタスクリニック立川の細田和孝院長です。
大人でも数日に1回しか便が出ない状態になると「便秘がち」だと感じます。子どもの場合、明らかな便秘状態とはどのくらい便がない状態をいうのでしょう。
「大まかにいって週に3回うんちが出ない、もしくは5日以上うんちが出ないというお子さんの場合は、いわゆる便秘状態といっていいと思います」と細田院長。病気が原因の場合もわずかにあるものの、気候や環境の変化などがきっかけとなり、うんちが出にくくなるのが便秘の始まりだということです。
「うんちがたまると、便の水分だけが体内に吸収されます。残るのは便から水分がなくなった硬いうんちだけ。硬いうんちは当然、排便しにくいですから、どんどんたまる一方になってしまいます。硬いうんちを外に出すには、ふんばって頑張って出さなくてはなりません。子どもにとって痛みを伴う行為になってしまうのです」
うんちを外に出す器官である子どもの肛門は、大人よりも小さいもの。小さな肛門から硬くなったうんちを出さなくてはいけないのですから、痛みを感じるのも当然です。
硬いうんちをがんばって出すことで、肛門が裂けたり、お腹に力を入れることで、腹痛も感じたり、排便=怖いことと記憶されてしまうのです。
「1度うんちを出すのが怖いと思ってしまうと、お子さんはうんちをしたくなくなります。すると便がたまり、さらに硬い便がたまります。たまるからまたうんちをしたくなくなる…この繰り返しが悪循環となって便秘が悪化します。この状況を断ちきってあげなくてはならないのです」
筆者の場合、現在小学1年生のわが子が赤ちゃんの頃から便秘気味でした。岩のような硬いうんちを泣きながら出している姿は、見ている親のほうが辛かったのを覚えてます。
子どものつらい状態を見ている親は、薬を使ってすぐにうんちを出してあげたいと考えるのではないでしょうか。
「もちろん、お薬を使うのも1つの方法です。ただその前に水分を多く摂るなどを心がけることも大切です。目安としては体重が10キロくらいのお子さんであれば、1日1リットルのお水を摂るといいでしょう」
水を摂る目安量を話すと「そんなに!」と驚くお母さん、お父さんもいるのだとか。たしかに意識しないと難しい量かもしれません。また、適度な運動も便秘には必要だと院長。運動量は園児の場合、通常お友達と園庭を走り回っているようであればOKとのことです。
「それから、うんちをすることは怖いことではないと優しく諭してあげてください」と院長。
「水分量や運動量、うんちは怖くないと諭してあげても難しいようであれば、私たち専門家の出番となります」
よく聞くのが、便秘の際に浣腸や薬を使うと、使わないとうんちが出なくなる、クセになってしまうというお悩みです。
「便秘の治療として浣腸をしたり、お薬を使ったりすることがクセになっても問題ありません。問題となるのは便秘状態が長く続き、慢性化すること、便秘自体がクセになることなのです。ですからお子さんの便秘状態が続いているのであれば、悩まずに相談してほしいですね」
ちょっとした便秘だから…と甘く考え、かなりの日数が経過してから通院すると、かえって治療が大変になってしまうのです。
病院を受診する前に、お家でできるケアや注意点についても教えていただきました。
「硬いうんちが出た後、お子さんのお尻をよく観察し、肛門周辺を清潔にするように気をつけてあげてください。おへそを中心に時計回りにのの字を描くマッサージもおすすめです。強すぎてはいけませんので加減が難しいですが、優しすぎずある程度力を入れて右の下、下腹から上、横、下に下がって直腸、肛門とうんちの流れに沿って、のの字を描きましょう。またできるようであれば、市販のグリセリン浣腸製剤を使って浣腸をしてあげてもいいでしょう」
「子どもは環境の変化で、簡単に便秘になってしまうもの。便秘自体をクセにしないために早めの対処が肝心」と話す細田院長。何日か便秘が続き、お子さんがつらそうであれば、早めにかかりつけの小児科で相談してみましょう。
子どもの便秘について、こちらの動画もチェック!
<文/本山ことま>
●教えてくれた人
ナビタスクリニック立川(エキュート立川内)院長。1999年に新潟大学医学部を卒業後、国立循環器病センター小児科、山形県鶴岡市荘内病院などでの勤務を経て、2014年より現職。小児内科、小児循環器病を専門に診察。
週に3回出なければ便秘です
子どもに多い便秘。週に3回出なかったら「水」と「のの字マッサージ」で対策を
寒い冬が終わり、うららかな春の気配が感じられます。子どもたちが薄着になる春から夏のこの季節は、着替えの手間が少なく洗濯物もよく乾くため、トイレトレーニングの好機だといわれています。
小さな子どもが言葉を話し、便意や尿意を伝えられるようになるのは喜ばしいことですよね。
「一般的にはそう心配することのない子どもの便秘ですが、クセになってしまうと厄介な症状でもあります」と話すのは、ナビタスクリニック立川の細田和孝院長です。
●子どもの便秘は便通が週に3回より少なかったり、5日以上出ない日が続いたりする状態
大人でも数日に1回しか便が出ない状態になると「便秘がち」だと感じます。子どもの場合、明らかな便秘状態とはどのくらい便がない状態をいうのでしょう。
「大まかにいって週に3回うんちが出ない、もしくは5日以上うんちが出ないというお子さんの場合は、いわゆる便秘状態といっていいと思います」と細田院長。病気が原因の場合もわずかにあるものの、気候や環境の変化などがきっかけとなり、うんちが出にくくなるのが便秘の始まりだということです。
●水分だけが体内に吸収され、便がかちかちになり便秘が悪化。硬くなったうんちが子どもたちを苦しめる
「うんちがたまると、便の水分だけが体内に吸収されます。残るのは便から水分がなくなった硬いうんちだけ。硬いうんちは当然、排便しにくいですから、どんどんたまる一方になってしまいます。硬いうんちを外に出すには、ふんばって頑張って出さなくてはなりません。子どもにとって痛みを伴う行為になってしまうのです」
うんちを外に出す器官である子どもの肛門は、大人よりも小さいもの。小さな肛門から硬くなったうんちを出さなくてはいけないのですから、痛みを感じるのも当然です。
硬いうんちをがんばって出すことで、肛門が裂けたり、お腹に力を入れることで、腹痛も感じたり、排便=怖いことと記憶されてしまうのです。
「1度うんちを出すのが怖いと思ってしまうと、お子さんはうんちをしたくなくなります。すると便がたまり、さらに硬い便がたまります。たまるからまたうんちをしたくなくなる…この繰り返しが悪循環となって便秘が悪化します。この状況を断ちきってあげなくてはならないのです」
筆者の場合、現在小学1年生のわが子が赤ちゃんの頃から便秘気味でした。岩のような硬いうんちを泣きながら出している姿は、見ている親のほうが辛かったのを覚えてます。
●薬に頼らずに、まず生活習慣や食事の見直しから便秘の解消を
子どものつらい状態を見ている親は、薬を使ってすぐにうんちを出してあげたいと考えるのではないでしょうか。
「もちろん、お薬を使うのも1つの方法です。ただその前に水分を多く摂るなどを心がけることも大切です。目安としては体重が10キロくらいのお子さんであれば、1日1リットルのお水を摂るといいでしょう」
水を摂る目安量を話すと「そんなに!」と驚くお母さん、お父さんもいるのだとか。たしかに意識しないと難しい量かもしれません。また、適度な運動も便秘には必要だと院長。運動量は園児の場合、通常お友達と園庭を走り回っているようであればOKとのことです。
「それから、うんちをすることは怖いことではないと優しく諭してあげてください」と院長。
「水分量や運動量、うんちは怖くないと諭してあげても難しいようであれば、私たち専門家の出番となります」
●浣腸や便秘の薬はクセにはならない。できるだけ早めの受診を
よく聞くのが、便秘の際に浣腸や薬を使うと、使わないとうんちが出なくなる、クセになってしまうというお悩みです。
「便秘の治療として浣腸をしたり、お薬を使ったりすることがクセになっても問題ありません。問題となるのは便秘状態が長く続き、慢性化すること、便秘自体がクセになることなのです。ですからお子さんの便秘状態が続いているのであれば、悩まずに相談してほしいですね」
ちょっとした便秘だから…と甘く考え、かなりの日数が経過してから通院すると、かえって治療が大変になってしまうのです。
●お家でできる簡単な便秘ケアと気をつけたいポイント
病院を受診する前に、お家でできるケアや注意点についても教えていただきました。
「硬いうんちが出た後、お子さんのお尻をよく観察し、肛門周辺を清潔にするように気をつけてあげてください。おへそを中心に時計回りにのの字を描くマッサージもおすすめです。強すぎてはいけませんので加減が難しいですが、優しすぎずある程度力を入れて右の下、下腹から上、横、下に下がって直腸、肛門とうんちの流れに沿って、のの字を描きましょう。またできるようであれば、市販のグリセリン浣腸製剤を使って浣腸をしてあげてもいいでしょう」
「子どもは環境の変化で、簡単に便秘になってしまうもの。便秘自体をクセにしないために早めの対処が肝心」と話す細田院長。何日か便秘が続き、お子さんがつらそうであれば、早めにかかりつけの小児科で相談してみましょう。
子どもの便秘について、こちらの動画もチェック!
<文/本山ことま>
●教えてくれた人
【細田 和孝先生】
ナビタスクリニック立川(エキュート立川内)院長。1999年に新潟大学医学部を卒業後、国立循環器病センター小児科、山形県鶴岡市荘内病院などでの勤務を経て、2014年より現職。小児内科、小児循環器病を専門に診察。