「啓蟄」という言葉がある。「冬籠りの虫が這い出る」(広辞苑)という意味だ。

柳の若芽が芽吹き、ふきのとうの花が咲くころでもある。

2021年3月5日は、啓蟄だった。全国各地から春の訪れを知らせる便りが、数多く届いている。早くも桜が開花し始めたところもあるらしい。

北の大地、北海道岩見沢市にある北海道教育大学岩見沢校の公式ツイッターアカウント(@HUE_iwaPR))からは、次のような写真付きのツイートが投稿され、話題となっている。

写真は、一面の雪の中から顔を出した自動販売機の様子だというが......、いったいどういうことだろう? このツイートには、7万8000件の「いいね」が付けられ、今も拡散している(3月12日昼現在)。

ツイッターにはこんな声が寄せられている。

「おお、もうすぐ春ですね」
「春の訪れを感じますね」
「まさに春の訪れを告げる自販機ですね!」
「啓蟄過ぎると自動販売機も動き出すのか...」
「ふきのとうみたいな出てき方しますねw」

Jタウンネット記者は、3月11日、北海道教育大学岩見沢校にこの自動販売機について聞いた。

「立ち上がった北國の勇者たち」


北海道教育大学ツイッター公式アカウント(@HUE_iwaPR))より

取材に応じたのは、北海道教育大学岩見沢校の広報担当者だった。

「あの自動販売機は、サッカーグラウンドの横に置かれています。
運動の後、学生たちがよく利用するものです。岩見沢は今年はとくに雪が多くて、積雪2メートルを越したほどでした。自販機の高さは、1.8メートルほどですが、1月から2月はすっぽり隠れていました。動植物の気配もまったくありませんでしたね」

3月に入って、ようやく寒さも緩んできた。それでも日中は、マイナス3度くらい、夜間はマイナス10度くらいだというが......。

啓蟄の日、少しだけ顔を見せた自販機。そしてその後、事態は進展を見せた。

3月10日、大学構内除雪用重機が登場、自動販売機を掘り起こすことになったのだ。


北海道教育大学ツイッター公式アカウント(@HUE_iwaPR))より

除雪用重機は手慣れた動きで、自販機周りの雪をかきわけ、全体を掘り返した。北海道教育大学岩見沢校のツイッター公式アカウントには、「立ち上がった北國の勇者たち」というコメントが添えられている。


北海道教育大学ツイッター公式アカウント(@HUE_iwaPR))より

所要時間わずか15分間、というスピード作業だったという。勇者たちはやはり頼もしい。

公式アカウントには、「\ 春 き た よ /」というコメントも添えられているが、全身を現した自動販売機も、心なしか嬉しそうである。


北海道教育大学ツイッター公式アカウント(@HUE_iwaPR))より

さて、問題はこれからだ。中身が凍っていたら、どうしよう? そんな不安がよぎるのだが......。

「凍ってないです。自販機すごい」


北海道教育大学ツイッター公式アカウント(@HUE_iwaPR))より

通電さえしていれば、自動販売機は一定の温度で保存してくれるようだ。

ツイッターにもこんな指摘が多かった。

「電源は入ってないと凍るパターンだな」
「通電出来ていれば、北海道ならではの『凍らせないための冷蔵庫』がまさにそこに」
「これが 噂に聞く『保温庫』ですね!!」
「キンキンに冷えてやがるっ」

道民には常識かもしれない、「保温庫」。つまり、「凍らせないための冷蔵庫」の機能が発揮されたようだ。