ハリウッド映画ではどのように爆発をド派手に演出しているのか?
アクション映画や怪獣映画では派手な爆発シーンも魅力の1つですが、現実の爆発映像を見ると思ったよりも派手さに欠ける見栄えであるケースもあります。科学や歴史などのトピックに関するムービーを投稿するYouTuberのトム・スコット氏が、実際にハリウッド映画で爆発シーンを演出する専門家を呼んで、ド派手な爆発シーンを実演してもらうムービーを公開しています。
Why Real Explosions Don't Look Like Movie Explosions - YouTube
なんと1kgものセムテックス。セムテックスはプラスチック爆薬の一種であり、ビル破壊などの商業的用途に使われているほか、テロ爆破事件にも利用されることで知られています。
たった250gで飛行機を爆破できるとも言われている危険な爆薬を設置し……
起爆スイッチをオン。
ドーン!という音と共に爆発しますが……
それほど火柱や煙が出るわけでもなく、「思っていたよりショボかった」程度の爆発しか起こりませんでした。
もちろんセムテックスの量が少なかったわけでも上手に爆発しなかったわけでもありませんが、カメラを通して見た爆発の派手さはそれほどでもありません。
映画業界では観客が期待する派手な爆発シーンを演出するためのトリックを使い、実際のものよりも映像映えする爆発を生み出しているとのこと。
先ほど実演した爆発では、実用的な場面で使用されるセムテックスを用いましたが……
爆発エンジニアとして活躍するスティーブン・ミラー氏は、「ハリウッドは軍事的用途で爆発を起こしているのではないため、セムテックスは威力が強すぎる」と指摘。
見栄えを重視する映画製作の現場では、最小限の威力で最大限の見栄えを実現する方法が使用されているとのこと。
ミラー氏がハリウッド式の爆発シーンを演出するために用意したのが、四角錐型をした鉢の底に分厚い金属製の塊を貼り付けたもの。
これらの鉢に爆発用の燃料を設置し、発火と共に燃料が炎と黒煙を噴きながら飛び散るようにするとのこと。「これは素晴らしい、大きな爆発効果を生み出します」と、ミラー氏は述べています。
また、撮影に使わない方向の爆発を演出しても意味がないため、鉢を設置するのはカメラがある方向だけ。
まずは粉末状の爆発物を入れた袋を用意し……
導爆線と呼ばれるロープ状の火工品を袋の中に入れました。導爆線の芯は爆薬となっており、一方の端が起爆するともう一方の端まで瞬時に爆発が伝達される仕組みとなっています。
少量の爆発物が入った袋を鉢の近くに配置。
続いて、粉末状の爆発物を入れたものよりも大きな袋の中に、用意しておいたケロシン・ガソリン・軽油・そこら辺の泥などを混合した液体を入れて……
こぼれないようにテープで留めます。この燃料は、黄色くて見栄えのよい炎や黒煙などを演出するために必要不可欠なものです。爆発物はこの燃料に点火して気化させて吹き飛ばすためだけに存在するため、視覚的な効果のほとんどが燃料によって演出されるとのこと。
続いてミラー氏は、再び導爆線を取り出しました。
ミラー氏は導爆線をちょうどいい長さで切断し……
くるくると巻いてパッド状にしました。
ミラー氏は作った導爆線のパッドを、鉢の底にある金属の塊に貼り付けて……
その前に燃料の入った袋を設置しました。パッド状にした導爆線はあくまでも爆発物として使用し、燃料を吹き飛ばすために使用する模様。
なお、導爆線や爆発物を使用する際に重要なのが、これらを鉢と直接接触させないという点。爆発物が鉢に触れた状態で爆発すると、鉢が破断して飛び散ってしまい、近くにいる俳優やスタッフがケガをする危険性があるとのこと。
そのため、爆発の衝撃波が直接鉢に伝わらないよう、間に金属の塊などを設置しているとミラー氏は説明しています。
また、爆発の派手さを伝えるにはカメラワークも重要です。
遠く離れた位置からズームで撮影することで、俳優と爆発の距離を近く感じさせたり……
画面一杯に爆発を映し出したりすることができます。
また、爆発をスローモーションでじっくりと見せたり、さまざまなアングルから何度も爆発を見せたりすることも、爆発のすごさを伝える役に立ちます。
画面全体の色味やエフェクトを変えることも重要だとスコット氏は述べています。
準備が整ったところで……
スコット氏が起爆スイッチをオン。
すると、背後ですさまじい爆発が発生。
さまざまなアングルで何度もド迫力の爆発シーンが繰り返し映されます。
専門家の手により、見事にド派手な爆発シーンの撮影に成功しました。