いっこうに広まらない男性育休。とうとう厚生労働省は事業主に対し、働き手へ取得を個別に働きかけることを法律で義務付ける方針を固めた。また、男性「産休」も新設されるということで、男性の育児参加に追い風が吹いているようにみえる。

では、実際の現状はどうだろう。夫婦の考えをまとめた資料をちょっと紐解いてみたい。

男性の育休取得に関するアンケート調査
https://univ.curama.jp/7033/
※「くらしのマーケット」調べ

■パパはやる気、ママは微妙……


「くらしのマーケット」会員(男女522名)に対して行った「男性の育休取得」に対するアンケートによると、意識の高いパパは、「育休を取りたい」「取って良かった!」と大興奮。

それに対して妻はといえば「夫、思っていたより……(妻、心の声)」が多い結果に。その気持ち、よくわかります。

1人目の育休ならまだしも、2人目以降になると、ママとパパの育児レベルは雲泥の差になりがち。仕事しかしてこなかった男性が「育児レベル1」だとしたら、ママは育児・家事、時には仕事のマルチタスクをさばき、レベル55くらいになっていると見積っていい。赤子をバウンサーに入れて、足でこぎながら仕事を片付けるくらいはザラじゃないでしょうか。そしてたいがいこの手の夫婦の家事能力も差があるものだ。

つまり、このアンケート結果から読み取れるのは、「一見戦力に見える身体に出産ダメージのない夫は『新人クン』で、すでにマネージャークラスとなった妻の足をひっぱるの図」だ。「常に指示待ちでイライラ、完成度も低かった」という妻のボヤきを見ていると、管理職のそれと重なる。

結果「男性育休をとって給料を減らされるくらいなら、アタシ一人で育児するから、仕事にいっとけ!」という、現状ニッポンの本末転倒に陥るのである。

■「よい男性育休」のキモは、目指すレベルのすり合わせから


では一体どうしたら、妻も満足する男性育休となるのだろう。
「くらしのマーケット」が示唆しているように、夫の家事力を上げるのは必須なようだが、ちょっと待って。まず、夫婦が求める「育児レベル」と「住環境レベル」をすり合わせるのが先決ではないだろうか。それが揃ってないと、高いレベルを望む方に不満が出やすい。

まず育児レベルにおいて、蝶よ花よと赤ちゃんをかまって最上級のサービスを提供するのか、元気で健康ならOK!とするのか。住環境においても、ホテル並みにクリーンにするのか、掃除は週3でOK!とするのか。

ママが母親教育を施される産院によっては、「赤ちゃんが泣いたら、すぐ抱っこして!」というところもある(筆者の場合は2ケースともそれ)から、産後ナイーヴな妻の方が高いレベルを望む傾向があると推測される。

ちなみに筆者は以前、友人夫婦が娘さんのおむつを替えているシーンに出くわしたことがある。そこで妻があまりにキメ細かく夫にダメ出しをするのでびっくりした。尻を拭くだけで半ギレなら育児生活、推して知るべし。奥さんの求めるレベルは「五つ星」だと感じたものだ。

つまり、アンケート結果のズレは、育児家事スキルのズレのほかに、「レベルの高い子育て環境を目指す」妻と「男性育休を取って満足した」夫という、感情面のズレも存在していると思われる。だからまずそこを埋め、2人が納得できる着地点を見通しておけたら……いいのでは、ないか?……弱腰なのは、それをできなかった者の後悔ゆえなのですが。

■夫の家事レベル上げは「全権委任」で


夫婦共通の「育児と住環境レベルの着地点」が見つかったら、夫の育児・家事レベルを上げてもらおうではないか。

じゃあ、どうやって? 思い浮かぶのは、マネージャー妻が新人夫に教え込むの図である。うーん、でも育児のほかに「夫の教育」もしなきゃいけないなんて理不尽だし、出産前に教え込むったって、私が妊婦だったらすごく面倒。だから、個人的におすすめしたいのは、出産前に2〜3週間行う家事の「全権委任」、言い方を変えたら家事ワンオペだ(後半、育児ワンオペも)。

何事も「お手伝い」ベースでは当事者意識が芽生えない。短期で経験値を詰み、レベル40くらいの戦力になるためには、一度ひとりで切り盛りし、スピード感とマルチタスクをさばく力を身につけてもらったらどうだろう。

おすすめは、産後の生活を想定し、高すぎる目標を掲げないこと。例えば1日の食事のうち1食は「つくらない」として、ではいつ、どこで、どんな惣菜を買うのか。米だけは炊くのか、などこまかーいことまで実際に動いてみることだ。

妻はここが正念場だ。皿を割られても、時間がかかっても、洋服がシワだらけでも、手は出さず、生暖かく見守ろう。そもそも女子と一緒に家庭科を習ったし、家庭内で家事を担当していれば家事修行なんざ不要なものだが、悪しき習慣をぶち壊すのは今だ。ここでマスターしてくれたら一生モノとなり、子どもにも背中を見せられる。

ちなみに筆者は第二子妊娠中に切迫流産となり、30日間入院した。入院中は、母が家事を切り盛りしてくれたのだが、退院後は夫が自主的に家事をすることが多くなり、ラクになった(数ヵ月後に戻ったけど)。やはり「働きアリ」の法則は的を射ていて、働くアリが消えれば、怠けていたアリも働くのだ。

■知られているのか「両立支援等助成金」


ここで話は事業者側に飛ぶ。ひそかに男性育休をとってもらっては困ると思っている事業主さんは、以下の助成金をご存知だろうか。社会福祉は申請主義のわが国ニッポン、知っていれば57万円をもらえるかもしれない。


厚生労働省 両立支援等助成金
https://www.mhlw.go.jp/content/000696083.pdf
より一部抜粋

また、先のアンケート結果から男性育休をとる妨げになる一番の理由は「収入減に困る」。やはりカネが原因であるからして、上記の助成金を労働者に補填するか、育児休業給付金(※)の増額を検討してはどうかと思う。

2019年人口動態統計によると、出生数は86万5,234人と前年より5万人以上減少したから、出産育児一時金(1人あたり42万円)は、少なくとも210億円は浮いたはず(健康保険は育休補助金と同じ厚生労働省が出どころ)。

出生数増と女性活躍のためと言っている男性育休取得者を増やしたいなら、当事者たちのハードルを下げるのは当然だと思うが、浅はかだろうか?

※厚生労働省 Q&A〜育児休業給付〜
休業開始時賃金日額×支給日数×67% 6か月以内
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html

■スウェーデン式は、「パパもワンオペ」


さて、話は再び夫婦に戻ろう。実際に育休生活が始まり、なんやかんやで妻に不満がたまってきたら、夫にワンオペ育児をしてもらうのも手だ。例えばスウェーデンでは、夫妻で交互に数ヵ月ずつ育休を取るがゆえに、妻も夫も必然的にワンオペ育児を経験するという。日本の場合、妻が1年育休を取り、夫がサポート的に数日〜数週間育休をとるパターンが多いと思われるので、夫は当事者意識のない「お客さん」になりがちだ。

だからこそ、育児の全権委任だ。働くマネージャーアリ(妻)が身を隠せば、怠けがちな新人アリ(夫)は晴れて戦力になれるのでは。それくらいの荒療治がないと、「育休は休暇」という誤解は変わなそうだから。

最後にアンケートにおける「男性育休を取得できない原因」を見てみよう。一番多い「収入減に困る」に続くのは、「取得しづらい雰囲気」や「仕事が回らなくなる」「復帰後にポジションがなくなりそう」というもの。

このネガティブな職場環境は、男性育休を取る人が2019年で7.48%(※)という圧倒的マイノリティだから起こりえる(※厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」より)。マジョリティとなれば、わざわざ「『男性』育休」なんて性別を強調せずともよくなり、イクメンという言葉も滅びるはずだ。
……さて、それは一体いつになることやら。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。