繊細で感受性が強く、傷付きやすい人を指すHSP(Highly Sensitive Person)という概念が認知されつつある。カウンセラーの時田ひさ子氏は、「HSPの気質を持っていながら外向的で明るく刺激を求める、HSS型HSPという気質の人もいる。HSS型HSPの人は自分の二面性に罪悪感を抱き、人知れず苦んでしまう」という--。
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■ちぐはぐな特性は「かくれ繊細さん」の可能性が…

元気なのに繊細。大胆なのに傷つきやすい。

外向的でテンションが高いのに、小さな発言でクヨクヨ一人反省会。一人になるとどっと疲れて表情がなくなる。

自虐ネタで笑いをとりにいくも、いじられすぎると傷つく。さまざまな会合をその場のノリで「おもしろそう!」と企画はするのに、近づいてくると「自分は仕切りに向いていない」と自信がどんどん小さくなって逃げたくなる。

アイデアマンでのめり込んだらやめられない。なのに、目標達成まであと一歩のところでやめてしまう。完璧主義なのに極めない。

やったことないことへの好奇心はめちゃくちゃ強い。一回やったことには興味が薄れる。あれこれ興味が広がりすぎて同時発進してしまい、収拾つかなくなる。

年に何回か、周囲に気づかれないように自分の世界に閉じこもる。誰にも話しかけてもらいたくないし、誰にも見せられない状態になる。きっと誰も、いつも明るくておおらかで生き生きとしている自分に、こんな裏の姿があるなんて想像もしないに違いない。

結論のない話につきあうのが苦手で、早く帰りたいと思っている。でもその場を楽しんでいないと見破られるのは悪いので、頑張って合わせたフリをする。ひとりになると「はぁぁ」と大きなため息をつきたくなる。

どうですか? 上記のような特性が、ご自身に思い当たるとしたら、あなたは「かくれ繊細さん」かもしれません。

繊細で感受性が強く、傷付きやすい人を指すHSP(Highly Sensitive Person)という概念が、最近広く知られつつあります。そのきっかけのひとつが、カウンセラーの武田友紀さんの著書『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)です。武田さんはHSPを「繊細さん」と呼んでいます。

先に例に出した「外向的なのに家では一人反省会」という極端でちぐはぐな特性を併せ持つ人は、「かくれ繊細さん」(HSS型HSP)と呼ぶことができます。

■繊細で敏感なのに刺激を欲しがる

HSPである「繊細さん」は、生まれながらの感度の高いアンテナを持っていて、人が気づかないこと(場の変化や雰囲気や人の気持ち)によく気づき、たくさんのことを感じ取ります。とても豊かな感性を持ち、人の気持ちを思いやる優しさがあり、予測から行動までの思慮が深く慎重であるという生まれながらの特性を持ち合わせています。

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その一方で、ささいな刺激を受けがちで、気持ちが圧倒されやすく、オロオロしたり、固まったり、頭が真っ白になったり、異常に緊張したりで、疲れやすいと感じています。傷つきやすく、不安になりがちで、ストレスを強く感じます。

一方、HSS(High Sensation Seeking=刺激探求型)型HSPである「かくれ繊細さん」は、繊細で敏感で感受性の強さを持ちつつも、それと一見相いれない「好奇心旺盛さ」「刺激を欲しがる」という衝動性特性を一個体の中に同時に持ち合わせています。

「静」と「動」、「ブレーキ」と「アクセル」が共存しているのです。こうした「かくれ繊細さん」は、人口の6%ほど存在していると言われています。

■自分の「二面性」に罪悪感を持ってしまう

「かくれ繊細さん」は、新たな出来事や情報を求めています。これは刺激を欲するHSSの特性です。新しいことを知りたくてたまらないので、情報を収集するために検索したり、調べたり、外に出て人と関わります。

そうした新たな情報を求めて外に出ると、そこでさまざまな人に出会い、そこで起こる出来事に簡単に傷つき、打たれてフリーズしたり、真っ白になったり、オドオドした弱い自分が顔を出します(繊細で感受性が強く、刺激に圧倒されやすいHSP特性による)。

傷ついているので、本心では外にいたくなくなりますが、刺激を欲する特性ゆえにコミュニケーションスキルはある程度磨かれており、内面がどうであれ人目のあるところではそれを表面化することなく淡々とひょうひょうとした自分を演じ切ることができる現状キープ力を持ち合わせています。この段階で、外面と内面との乖離(かいり)がはなはだしく生じます。

そして、そのことに「罪悪感」を持ちます。「二面性を持ってしまった」「ありのままの自分でいれれなかった」ということに、です。

これは、「裏表のある人間であってはならない」という強固な一般常識のルールから逸脱したことによる「罪悪感」であり、そういう一般常識的でない自分に対する「不信感」であり、今後の人生でこんな自分でうまくやっていけるだろうかという未来への「不安」を感じてしまうというメンドクサさ、いや繊細できめ細かく、自己を否定しがちなのです。

■「かくれ繊細さん」はこれまであまり認知されてこなかった

刺激はほしい(HSS)けれども、傷つきやすい(HSP)。その両方を持ちながら、自分を社会で生かしたい。求められる人になりたい。そのように激しく葛藤してジレンマを抱えているのが、「かくれ繊細さん」の姿であると言えます。

そして、この人たちは、自分と世の中の人たちとの違いが理解できず、どうしたら思ったように自分を取り扱えるようになるか、どうしたらこのギャップによる生きづらさを解消、克服できるのか、その方法を探していらっしゃると思います。

もしかしたら、自分は鬱なんだろうか? 親の育て方のせいでこんなふうになってしまったんだろうか? だとしたら、アダルトチルドレンだろうか? 感情の起伏が激しくて、自分で自分の機嫌もとれなくて、上がったり下がったりするから躁鬱だろうか? みんなが仲良くコミュニケーションとって気軽につきあっているのに自分にはそういうことができないし、とにかく飽きっぽい。これって、発達障害の傾向があるのかも?

……などと解決策をあれこれ探ってみてはいるものの、いまだにこれといった解決策に至っていない。こんなことを話せる人もいないし。と、夜な夜なネット検索しているかもしれません。

その理由は、「かくれ繊細さん」がこれまでその特徴を知られていなかった、ということに尽きるのです。

■「繊細さん」と「かくれ繊細さん」の違い

「繊細さん」と、「かくれ繊細さん」の違いは、大きく2つ挙げられます。

一つは、好奇心旺盛で新しい情報を常に求めている、という特性。早くたくさんの情報を得て結論を知りたいので、せっかちで気持ちがはやる。それでおのずと早口な人が多いのではないかと考えられます。焦りやすく、落ち着きがないという欠点にもなりやすい側面です。

また、もう一つは、自分がどう見られるかに強い関心があるという点です。見た目や話し方や持ち物、服装、化粧の仕方など、人からの印象を左右するものに対して強い関心を払う傾向が「かくれ繊細さん」には強い。持ち前のバランス感覚や芸術的なセンス、イメージを捉える力が生まれながらに備わっている(HSP的特性)ことと相まって、見栄えにHSPよりも強くこだわる傾向があるのは、HSPとのわかりやすい大きな違いと言えます。

「かくれ繊細さん」の人物像としては、やんちゃで気分屋で新しいことを知りたがる。大きな声で笑い、人との付き合いも活発。やりはじめたらやめられない。でも最後までやれない。頑固。表情豊か。人前に出ることも嫌いじゃない。リーダーや幹事を任せれば、気の利いた采配をしてくれる。けれど本人は「もう少しできたんじゃないか」と反省。着眼点やアイデアや発想力がある。普通の人が苦手とすることをするするとやれるのに、みんなが淡々とこなせることにはつまずいてへこむ。気にしている風には見えないのに、急に何日か伏せってしまい、人に弱いところを見せないので、周囲の人たちには気づかれづらい。

ちなみに、私が個人セッションをした中では、HSS特性が旺盛で「体力がある若い時期に長期間海外に滞在した経験がある」方が半数ほどを占めます。日本にいると「常識的な人」の枠の中で生きなければならず、本来の自分の姿を表現することができないため、海外で生きるほうが楽に感じる方が多いのだと思います。

■発達障害やうつ病と間違いやすいが、ここが違う

この特性を持っている方たちは、これまでずっと自分について理解することができず、正解を求めてさまよい歩く迷い人だったと言えます。

性格を直したい。みんなと同じようになりたい。自分だけ浮きたくない、発言を控えるようにしよう。なぜこんなにクヨクヨするのだろうか? 気にしなければいいということはわかっているけれどもそれができたらこんなに悩んでいないのに!!(笑)

……と悩みを検索しては、「ぴったりのものがなくがっかりする」といった経緯をお持ちかもしれません。

これまでに自分がそうかもしれないと疑ってこられた分野としてよく3つの分野が挙がります。その代表格が「発達障害」です。発達障害も神経システムが敏感で、小さな違いに気づいたり、こだわりが強いので、HSPが発達障害チェックテストをするといくつかの項目で該当します。ですが、自閉スペクトラム症やアスペルガー症候群の場合は人の表情や雰囲気や意図を読むのが苦手なのに対して、「かくれ繊細さん」を含むHSPは人の顔色を見てばかりいます。

あるいは、場の空気を読み続けています。自動機能するスキャナーを持っているように、外部の情報を読み取りつづけます。他人の意向を表情の変化から読み、周囲が求めていることを優先的に実現しようと忖度(そんたく)する姿勢をベースに持っている点においては発達障害とHSPは真逆と言えます。

2つ目として、抑うつ状態が続き「うつ病」を疑ったことのある方も多いのではないでしょうか。うつ病になりやすい特性ではあるので、うつ病かどうかを判断するためにまずやってみていただきたいことがあります。人の目のないところで自分ひとりの時間をしっかりとり、外に出っぱなしになっている意識のベクトルを自分に戻してやることです。誰にも気を使わずにたっぷり寝た後、昨日まであれほど憂うつだったのに少し気分が落ち着き、やる気になるのであれば、かくれ繊細さん特有の「人目にさらされすぎ疲れ」ですので、できるだけ意識的に誰にも見られないひとりの時間(ダウンタイム)を取るように心がけて、ベクトルのバランスをとるようにしてください。

■同時にアダルトチルドレンである場合も

3つ目として、アダルトチルドレンを疑ったことのある方も多いと思います。HSPは、非HSPに比べて、同じ出来事から受ける心の痛みが大きいことがわかっています。親がなにげなく言った一言がグサッと心に突き刺さって何十年も抜けないまま、そのうちに親に対する強い恨みになっていくこともありますので、HSPと同時にアダルトチルドレンでもある可能性があります。

その場合は、アダルトチルドレンの心理療法を受けることで、HSPの自分を理解し、受け入れやすくなるので、検討してみてはいかがでしょうか。親への不信感について正しく理解した上で、ご自身の心の傷を含めた自己理解をすることで、親に対するネガティブな感情の受け入れ方が変わっていくかもしれません。

■「かくれ繊細さん」は、ここを意識すればラクに生きられる

かくれ繊細さんは、流れに乗るために嫌々ながらしている(にも関わらずそう見られることはない)ことがたくさんあるはずです。嫌々やるしかない最大のポイントは起床時ではないでしょうか? 起床時は、踏ん切りをつけて世の中にわが身を滑り込ませなければならないからです。

時田ひさ子『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』(フォレスト出版)

その「決心」は、毎日のことながら、なかなかに苦痛なものであることは、想像に難くありません。ましてや気が重いスケジュールや責任の重い仕事、イメージのつきづらい相手と話す予定、ひとりの時間がなかなか持てない長時間拘束などのある朝はなおさらではないでしょうか。

そんな時、頭の中の言葉をいったん脳から外にアウトプットしてみるという方法を覚えておいていただけると、何かの役に立つと思います。難しいことは何一つありません。脳内をぐるぐると思考しているだけだと、自分の中がどんどん重くなってきます。そうではなく、自分の口から「弱音をつぶやく」+「と、思っているんだね」というセットをつぶやくこと。これが、嫌々切り替えるときの「建設的なひとり言」のフォーマットです。

建設的なひとり言は、人に聞かれてはいけません。あくまでもマスクの中で自分ひとりの耳に入るくらいの小声でつぶやくこと。例えば「行きたくない。と、思ってるんだね」というように。そしてこれは、脳内で繰り返しているだけではひとり言にはならないので、必ず口から音として外に出して自分の耳に入れ直してくださいね。

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時田 ひさ子(ときた・ひさこ)
HSS型HSP専門心理カウンセラー
HSP/HSS LABO代表。早稲田大学文学部心理学専修卒業。繊細でへこみやすいが同時に好奇心旺盛で新しいものへの探求欲が旺盛なHSS型HSPへのカウンセリングをのべ5000時間実施。講座受講生からのメール、LINEのやりとりは月100時間以上。自身を含むHSS型HSPに有効な生きづらさ克服の方法を発案、実践し、長年の生きづらさを解消したいHSS型HSPの相談を年間のべ1300時間以上受ける。
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(HSS型HSP専門心理カウンセラー 時田 ひさ子)