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コロナ禍で、静かな生活を送ることになった2020年。2021年には明るい話題に多く触れたいものだが、住宅市場は今後どうなっていくのだろう?いくつかの調査結果を確認しながら、見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」を実施/カーディフ生命

コロナ禍で住まい選びに大きな変化

2020年はコロナ禍で住まい選びに大きな変化が見られた。
●おうち時間が長いから気になる、住宅の基本性能。
●コロナ禍で普及する在宅ワーク、あなたは個室派?LD派?
●駅距離よりも家の広さが欲しい?コロナ禍で変わる住まい選び
●2畳だけでも個室がほしい!コロナ禍で変わる、間取り意識
●新型コロナの影響で、お出かけ先は自宅周辺へシフト
など、筆者も何度か住まい選びの変化について記事にしてきた。

コロナ下の「在宅時間の長期化」と「在宅勤務の普及」が大きな影響を与え、住まい選びが変化しているが、住宅の広さや部屋数へのニーズ、自宅周辺の環境を重視する傾向が強まり、「郊外志向」の増加も指摘されている。

テレワークの頻度によって、郊外か都心かが変わる?

では、2021年は、郊外に人気が集中するのだろうか?カーディフ生命が実施した「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」で分かりやすい結果が出ている。

住宅未購入者全体の住宅購入意向率は35%だったが、テレワーク経験者に限ってみると52%とかなり高くなった。また、購入したい場所は郊外か都心かを聞くと、住宅購入意向者のうち約54%が「郊外派」で、「都心派」は約46%だった。

一方、テレワーク経験者で見ると、テレワークの頻度によって違いがあり、テレワークの頻度が高い「半分以上テレワーク」は「郊外派」が、「テレワーク半分未満」は「都心派」が多いという結果になった。

テレワーク経験者の住宅検討場所(住宅購入意向者)(出典/カーディフ生命「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

逆に言えば、通勤する頻度が高いほど都心を志向し、通勤頻度が低いほど郊外を志向する傾向が見られるといってよいのだろう。

また、郊外志向の高まりは、戸建ての住宅市場には追い風となるだろう。

矢野経済研究所が12月16日にリリースした「戸建て住宅市場に関する調査を実施(2020年)」によると、「従前からの職場や都心へのアクセスの良さといった利便性に対するニーズはある一方、リモートワークの普及による在宅時間の長期化から、広さや快適性を求めるために郊外へ戸建て住宅を求めるニーズも増加しており、特にハウスビルダーが供給する建売住宅は値ごろ感とも相俟って販売増加につながっているなどの傾向もみられる。」と分析している。

新築マンションの供給は都市部に多い?

一方、新築マンションの販売動向では、相変わらず都市部への供給が続くと見られている。

不動産経済研究所が12月21日に公表した「首都圏・近畿圏マンション市場予測2021年」を確認しよう。
2021年の新築マンションの供給戸数は、首都圏で3万2000戸、近畿圏で1万8000戸と予測している。2020年はコロナ禍で供給が減ったが、2021年は奈良県を除く全エリアで前年を上回り、コロナ前の2019年並みに回復すると見ている。

エリアについては、首都圏では「引き続き都区部の大規模案件が市場をけん引、近郊エリアも注目タワーが始動」、近畿圏では「大阪市部の超高層物件は2021年も継続の見通し」などと、都市部のタワーマンションの供給が続くとしている。

一方、新築マンションの価格については、2020年(1~11月)の平均価格は、首都圏で6254万円(95.9万円/平米)、近畿圏で4249万円(69.8万円/平米)だった。いずれも2019年の首都圏5980万円(87.9万円/平米)・近畿圏3866万円(68.0万円/平米)を上回る結果となった。

コロナ下で一時的に住宅市場が縮小したが、2021年は従来通り好調維持か?

筆者は、2020年上半期の住宅市場について「緊急事態宣言の発令前〜解除後、首都圏の住宅市況はどう動いた?」という記事を書いた。この記事では、新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出された3・4・5月については、住宅の営業を停止した事業者も多かったことから、住宅市場は一時的に大きく縮小したが、6月以降回復基調にあると分析した。

7月以降の東日本不動産流通機構の中古マンションや中古戸建てのデータ(2020年7~11月)を見ると、成約件数は元に戻り、特に10月でいずれも大幅に上昇、成約平均価格も上昇をしている。一方で、新規に売り出される物件数は以前より少ないことから、市場の在庫戸数が減少している。つまり、新築マンションの供給数が減っていた影響もあって、中古住宅市場はこれまで好調に推移していると言えるだろう。

また、コロナ禍による地価への影響については、ホテルやオフィスなどの商業地で大きく下がっているものの、住宅地の下がり方はそれほど大きくはない。住宅購入の意欲も、新しいニーズが発生したこともあって、減退しているわけではない。

こうしたことから、総じて2021年の住宅市場に出回る戸数や価格などに大きな変動はなく、従来通りの傾向が続くと見てよいだろう。

ただし、これまでも二極化が指摘されており、全ての住宅に需要があるのではなく、特長のある住宅に人気が集まる傾向は続くだろう。通勤をする人たちは都心部へのアクセスがよいなど利便性がよい住宅を求め、テレワークが業務の多くを占める人たちは住環境がよく、わが街が充実している、手ごろな価格と広さの郊外の住宅を求めるなど、それぞれに住みやすい条件がそろう住宅が好まれるだろう。

さらに、「住宅ローン減税」が継続され、新たに「グリーン住宅ポイント制度」が設けられるなど、政府は住宅取得を促進する政策をとっている。住宅ローンの金利も低金利が続くと予測される。住宅を購入する環境は整っているので、住み替えを検討している人は不安視せず、自分たちが暮らしやすい住宅を探すとよいだろう。


(山本 久美子)