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海外で主力の小型クロスオーバー

text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

日産は、新型キャシュカイの詳細を公開した。海外で展開するベストセラーのクロスオーバーであり、来年初頭のデビューに向けて開発を進めているモデルだ。

日産が「先駆的な」クロスオーバーと呼ぶ3代目キャシュカイは、欧州で300万台以上、全世界で500万台以上販売された歴代モデルをベースに、セグメントをリードすることを目指している。

新型日産キャシュカイのティザー画像    日産

英国で設計、製造され、新しいプラットフォームを採用する。従来のディーゼルエンジンは廃止される。

日産が公開したのは、カモフラージュされたプロトタイプと、ヘッドライトを拡大したティザー画像のみ。

しかし、プロトタイプの画像を見る限り、全体的なプロポーションは大きく変わらないものとなっている。フロントマスクは、あまり過激ではないものの、新型ジュークのデザインにインスパイアされている。

日産欧州法人の商品企画責任者であるマルコ・フィオラバンティは、デザインの目的は「より筋肉質でありながらダイナミックなイメージ」で、「このセグメントで最高のスタンス」を提供することにあるとしている。それを実現するために、より広いトレッド幅、より大径のホイール、より強いショルダーラインを採用したという。

現行モデルよりも大型化しているが、Cセグメントのサイズは維持している。全長は35mm延長され、そのうち20mmがホイールベースに、残りがフロントオーバーハングに追加されている。

また、車幅は32mm広く、車高は25mm高くなっている。トランク容量も50L拡大された。

軽量化と剛性アップを実現

キャシュカイの土台となるのは、ルノー・日産・三菱アライアンスのCMF-Cプラットフォームの新バージョンで、電動化に対応するための改良が施されている。日産によると、効率性とダイナミクスの両方を向上させるため、軽量化と高剛性を実現しているという。

現行モデルよりも超高張力鋼板の比率が高く(20%から30%へ)、床下構造の剛性が向上している。また、ボディの主要な接合部には構造的な接合が施されており、強度がさらに向上。全体的に現行モデルと比較して41%向上している。

新型日産キャシュカイのプロトタイプ    日産

同時に、トランクリッドと燃料キャップに複合材を採用したこと、ドアとボンネットにアルミを採用したことで21kgの軽量化を実現。ボディ全体で60kgの軽量化に成功した。

サスペンションのレイアウトは引き継がれた。最大19インチのホイールを備えた二輪駆動モデルでは、リアにトーションビームを採用。20インチホイールの四輪駆動モデルでは、マルチリンク式を採用している。

日産によると、トーションビームに垂直方向に配置されたスポッティングとダンパーが、「優れたアンチロール性能を維持しながら、落ち着きのある乗り心地」を実現しているという。

一方、ロードノイズを低減するためにブッシュを介してサブフレームに取り付けられたマルチリンクは、「乗り心地とダイナミックなレスポンスのバランスはセグメント最高クラス」とされている。

ディーゼル廃止、eパワー初採用

パワートレインはすべてハイブリッド化されている。標準は、12Vのマイルド・ハイブリッドシステムを組み合わせた1.3Lターボガソリンだ。日産は、48Vよりも、12Vの方が「コスト対効果の面で最良」だとしている。

MT、前輪駆動のモデルは140ps、CVT搭載モデルは157psを発揮。四輪駆動のCVT搭載モデルが最上位となる。

新型日産キャシュカイのプロトタイプ    日産

現行モデルではDCTを搭載しているが、新型ではCVTが採用された。CVT特有の低速域の滑らかさと、トランスミッションの「ゴムバンド」効果を軽減するための疑似変速機能を組み合わせ、両方のメリットを備えている。

また、販売台数の大半を占めると予想される、eパワーも用意されている。現段階では詳細は不明だが、前輪駆動のみで190psを発揮するという。

eパワーは内燃機関を発電機として使用してバッテリーを充電し、そのバッテリーがインバーターを介して電気モーターを駆動する。これによりEVと同じような走行を可能にしている。日本国内でも人気があるが、日産は「欧州の状況に合わせて」開発したという。

運転支援システムとして、より高度なプロパイロットを装備。センサーが改良されており、例えば、目の前を走るクルマだけではなく、その前方のクルマにも追従できるようになっている。

自動ブレーキは対応する速度域が拡大されたほか、レーンキープは動作がより自然なものとなり、最大0.2Gのコーナリングフォースでの自動ステアリングが可能となった。

また、自動的に法定速度を維持したり、コーナーやジャンクションなどで減速したりするシステムも備えている。

全車にLEDヘッドライトを標準装備。車載システムの詳細は未発表だが、無線アップデート機能が搭載される予定だ。

日産担当者インタビュー

日産欧州法人の商品企画責任者マルコ・フィオラバンティにインタビューを行った。

――なぜ新型キャシュカイにはディーゼルが設定されないのでしょうか?現行モデルではパワートレインの中核をなすものだったはずです。

マルコ・フィオラバンティ    日産

「地域的に、すでにディーゼルの展開を段階的に終了させる意図を伝えています。今日でも市場の一部を占めていますが、わたし達は、お客様にはガソリンとハイブリッドが最適だと確信しています」

「eパワーは通常のディーゼルよりもはるかに優れたパフォーマンス、洗練されたデザイン、同等の経済性、運転のしやすさを実現しています」

――プラグイン・ハイブリッドの計画はありますか?

「わたし達が提供するものではありません。わたし達は、eパワーがPHEVよりも優れたアクセシビリティとコストを実現できると確信しています」

――ルノーのように、クーペバージョンを導入しますか?

「今は(クーペスタイルのキャシュカイの)必要性を感じていません。キャシュカイのユーザー層は非常に広く、標準的なクルマをダイナミックでエレガントなものにできたと考えています」

――パフォーマンス重視のニスモバージョンなどの可能性はあるのでしょうか?

「それについては、今日は何も伝えられませんが、キャシュカイは欧州でのキーモデルであり、常にさまざまな可能性を探っています。これで終わりではなく、スタートです。ライフサイクルはこれまでよりも長くなるでしょうし、サプライズもあるでしょう。見守っていてください」