「ソウルはコロナでロックダウン」北朝鮮がフェイクニュース
韓国では、今年3月に大邱(テグ)にあるキリスト教新興宗教団体の新天地で新型コロナウイルスの集団感染が発生した。その後、感染状況は落ち着き、4月に入ってからは新規感染者が1日1桁まで落ち込んでいたが、韓国極右を代表する人物の一人、サラン第一教会の全光莒(チョン・グアンフン)牧師が、ソウル市や保健福祉省の協力要請を無視して礼拝、集会を繰り返したことで、同教会の信徒ら550人以上が感染した。
これに伴い、韓国政府は、先月16日から防疫措置を「2段階」に、同月30日から今月13日まで「2.5段階」に引き上げ、店舗の営業などが制限されるなど、社会的に大きな影響が出ている。
北朝鮮は、韓国での感染状況を歪曲し、プロパガンダに利用している。
デイリーNKの内部情報筋によると、平壌国際空港管理運営局のイルクン(幹部)を対象に今月12日、政治講演会が行われた。壇上に上がったのは朝鮮労働党の宣伝員。
「今、南朝鮮(韓国)では再び悪性伝染病ウイルスが蔓延している」
それはその通りだ。しかし、次が問題だ。
「ソウルのような都市が完全封鎖されたという点で、南朝鮮は国際社会に深刻な医療状態であることを露呈した」
「南朝鮮も今回の(台風による)被害で多くの人的物的被害を受けたが、それに加えて悪性伝染病でソウルが完全に封鎖され、人々はまともな暮らしを送れず、焼け野原だ」
ソウルや大邱では様々な措置が取られたが、ロックダウン(都市封鎖)が行われたことはない。また、3月に大邱で感染者急増により一時的に入院ができなくなったが、それ以外で医療崩壊と言うべき現象は起きていない。
当の北朝鮮は、開城(ケソン)、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)、三池淵(サムジヨン)に対する完全封鎖措置を取っている。このような手法は、感染症対策としては原始的なものと言われているが、壇上の宣伝員はこんな話をしたという。
「しかし、わが党(朝鮮労働党)の予防と懸命な防疫政策などで、(韓国より)優れた対処を行っている」
新型コロナウイルスと関連し、北朝鮮当局は今までも「味噌やキムチを食べる民族は伝染病を免れる」「米国と南朝鮮(韓国)がウイルスを意図的に広げているから注意せよ」
などと言ったフェイク情報を流してきた。
体制の優越性を宣伝し、内部結束を高める目的があるものと思われるが、当局の流すこの手のプロパガンダ、フェイクニュースにさらされ続けてきた北朝鮮の人々は「免疫」があるのか、そう簡単に信じようとしない。また、韓国や米国のラジオ放送発の情報という名の「ワクチン」を得ている人も少なくない。
(参考記事:【写真】水着美女の「悩殺写真」も…金正恩氏を悩ませた対北ビラの効き目)
2007年、中国の親戚を訪れた咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)に住むキム・チュンシク(45)さんは当時のデイリーNKの取材に、党の幹部が人民班にやってきて「暮らしは良くなる」との講話をしたが、誰も信じようとしない空気を察知したのか、「今度は嘘ではない。本当に信じてもよい」と、住民をなだめようと必死になった様子を伝えている。