「エール」42話 またまた仲里依紗熱演。二階堂ふみと山崎育三郎も参戦、喫茶バンブー劇場

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第9週「東京恋物語」42回〈5月26日 (火) 放送 作・清水友佳子 演出・橋爪紳一朗〉



42回はこんな話

「椿姫」のオーディションの二次審査に残った音(二階堂ふみ)だったが、双浦環(柴咲コウ)に「何も伝わらなかったの、あなたの歌からは」と言われてしまう。

喫茶バンブーでやけ食いしながら、音は「椿姫」の内容をざっと振り返ってみることに。
保(野間口徹)と恵(仲里依紗)のバンブー劇場のはじまりはじまり〜。

バンブー劇場開幕

「椿姫」のヒロイン、最有力候補は、東京帝国音楽大学の優秀生・夏目千鶴子(小南満佑子)。彼女には技術ではとうてい敵わないと思った音は表現力で対抗しようと試みたが、特別審査員の環の評価は厳しかった。

表現で……と言っていた音だが、審査で「歌ってるときに何を考えていたか」と環に質問され、歌って楽しいと思っていたと答えている(41回)。楽しさを表現していたってことなのか。でも「椿姫」ってそういう話しではない。悲恋である。環は音に「自分だけ楽しんでいてはプロではない」と指摘した。

ということで、喫茶バンブーで、裕一(窪田正孝)と共に音の愚痴を聞いていた久志(山崎育三郎)が保と恵に「椿姫」を演じさせる。窓際の客席をどかして、店内に簡単な舞台をつくってまで。カウンター席が客席で、裕一と音はそこから見る。歌いながら真っ赤な緞帳を引っ張る久志。衣裳もあって、スポットライトまで点灯している。誰が照明やっているんだ? 脳内劇場という設定か。

久志は歌に解説、演出も担当。保はヴィオレッタに恋する青年アルフレードと、その父の二役。恵はヴィオレッタ。
保は慣れない演技でやや棒読み、恵は熱演。

「椿姫」は社交場の華・ヴァイオレッタと田舎の御曹司・アルフレードが身分違いの恋をするが、アルフレードの父に反対されヴィオレッタは身を引いたうえ、結核を患うという悲しいすれ違いの物語。

「思い出すな〜、旅芸人の一座にいたこと」と恵の謎の過去がさらに増えた。
保の芝居なんてやったことない感がうまいのと、椅子の上の台本を盗み読むなど小芝居をしているところなどはさすが野間口徹。

音、「真珠夫人」を読む

音はヴィオレッタの気持ちがちっともわからない。身を引くなんてことは音にはわからないのである。なにしろ、音は、思ったら即行動のタイプだから。

気持ちがわからない役のオーディションをよく受けられるなあと思うが、そこはドラマ。道理のわかる登場人物だけでは面白くない。歌が好きで野心もあるが、プロの仕事とは何かわかっていない未熟な音の成長が描かれていくのだろう。「紺碧の空」で裕一が成長したエピソードの音バージョンである。


音はもっと恋愛を学ぶべきということで、でも人妻だから実践は無理。そこで、音と久志と恵が大仰な演技で盛り上げる。二階堂ふみと仲里依紗がおかしさを増幅させるべく、いかにも極端な演技をあえて小憎らしく演じているように見えるが、山崎育三郎の気取った演技はそんなに鼻につかないところが救い。山崎育三郎は素敵な王子さまキャラのはずなのに、何かと気遣う苦労人感がにじむところも愛嬌がある。

恋を学ぶために恋愛小説を読み始める音。学校で音が読んでいたのは「真珠夫人」。「憎い男に嫁ぐって意味わからない」と混乱する音。「真珠夫人」は恋人との仲を引き裂かれた男に嫁ぎ、復讐していく。菊池寛の名作で、平成の世、昼ドラになって大受けした。このことについては、過去、エキレビ!「花子とアン」の蓮子さまは「真珠夫人」のモデル。華麗なる「白蓮事件」をチェックで少し記している。

裕一は裕一で、「紺碧の空」で一歩抜けたかと思いきや、地方小唄にまた悩んでいた。中身のない大衆歌の歌詞の何を伝えていいかわからない。

音、カフェーで働く

音は直情的すぎて「椿姫」や「真珠夫人」の屈折した女性の気持ちがまったくわからないため、カフェーで一週間、女給として働くことで実践を試みることにする。裕一が木枯に誘われた店である。裕一ははじめて、ヤキモチを焼く音の気持ちを理解した。が、音は、男性に全然媚びることができず、客の岡崎社長(春海四方)に本音をしゃべって、ママ(黒沢あすか)に叱られてしまう。

夜、酔って帰ってきた音は、「社交場に咲く、花になる」と宣言し、裕一をまごつかせる。

その頃、鉄男は

なぜかちょくちょく東京に行っているらしい鉄男(中村蒼)は、どうやら新聞社の堂林社長(斉木しげる)の娘・仁美(春花)に気に入られているようで……。仕事場のえらい人の娘との恋(?)は、この手のドラマでは波乱万丈なもの。さてどうなる?


今日の窪田正孝

バンブー劇場を見ているときの、裕一のややキョドった様子。この状況が奇妙であることを身を以て伝えてくれていた。音がカフェーに働きにでることを気に病み、コーヒーに角砂糖をいくつも入れてしまう仕草。

なんといっても、夜、玄関でしゃがんで音を待っている姿。体育座りやしゃがんで背中を丸めた瞬間、哀愁スイッチがオンになる窪田正孝。

「お酒なんて喉に悪いからさ」「歌の練習したほうがいいよ」は素っ頓狂なこの回のなかで、唯一、まともな台詞であった。
(木俣冬)

登場人物

古山裕一…幼少期 石田星空/成長後 窪田正孝 主人公。天才的な才能のある作曲家。モデルは古関裕而。
関内音→古山音 …幼少期 清水香帆/成長後 二階堂ふみ 裕一の妻。モデルは小山金子。

小山田耕三…志村けん 日本作曲界の重鎮。モデルは山田耕筰。

廿日市誉…古田新太 コロンブスレコードの音楽ディレクター。
杉山あかね…加弥乃 廿日市の秘書。
木枯正人…野田洋次郎 「影を慕ひて」などのヒット作をもつ人気作曲家。モデルは古賀政男。

山藤太郎…柿澤勇人 人気歌手。モデルは藤山一郎。
小田和夫…桜木健一 ベテラン録音技師。

梶取保…野間口徹 喫茶店バンブーのマスター。
梶取恵…仲里依紗 保の妻。

佐藤久志 …山崎育三郎 東京帝国音楽大学の3年生。あだ名はプリンス。モデルは伊藤久男。
村野鉄夫 …中村蒼 裕一の幼馴染。川俣で新聞記者をやっている。詩を書くことが好き。モデルは野村俊夫。

夏目千鶴子 …小南満佑子 東京帝国音楽学校の生徒 優秀で「椿姫」のヒロインに最も近いと目されている。

筒井潔子 …清水葉月 東京帝国音楽大学で音と同級生。パートはソプラノ。
今村和子 …金澤美穂 東京帝国音楽大学で音と同級生。パートはアルト。

先生 …高田聖子 東京帝国音楽大学の教師。
双浦環 …柴咲コウ 著名なオペラ歌手。


番組情報

連続テレビ小説「エール」 
◯NHK総合 月〜土 朝8時〜、再放送 午後0時45分〜
◯BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜、再放送 午後11時〜
◯土曜は一週間の振り返り

原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和