ぶっ飛んだ役に挑んだベッキー、出産を控えた現在の心境も明かした

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 三池崇史監督最新作『初恋』(2月28日公開)で、復讐(ふくしゅう)の鬼と化すヤクザの女・ジュリを体当たりで熱演したベッキー。バラエティーだけでなく、女優としても新たな可能性を広げた彼女は、今、どんな思いで日々仕事と向き合っているのだろうか。「運命的な作品」と位置付ける本作への思いとともに、今春、第1子出産を控えた現在の心境、さらには近い将来のスタンスについて真摯(しんし)に語った。

 本作は、俳優の窪田正孝と三池監督がドラマ「ケータイ捜査官7」以来、約10年ぶりに主演&監督でタッグを組んだバイオレンス満載の純愛ラブストーリー。余命わずかのプロボクサー・葛城レオ(窪田)が、ヤクザと関わりのある少女モニカ(小西桜子)と偶然出会い、愛を育みながらも血まみれの抗争に巻き込まれていく顛末(てんまつ)を活写する。

■心の中の「ストレス貯金」をジュリ役で吐き出した!?

 新宿・歌舞伎町を裸足で駆け回り、憎き男たちを殴る、蹴る、ぶった斬る! 主演の窪田をはじめ、染谷将太、大森南朋、内野聖陽、村上淳らツワモノ揃いの俳優陣の中、恋人を殺害され、烈火のごとくキレまくるジュリを圧倒的な存在感で演じ切ったベッキー。「脚本の段階では、『この人、すごく怒っているなぁ』くらいにしか思っていなかったのですが、撮影現場でお芝居をしていくうちにどんどん感情が昂(たかぶ)ってきて。命レベルの問題が起きると、『わたしって、こんなにキレるんだ!』って、自分で自分に驚きました」と笑顔を見せる。

 三池監督からのアドバイスは2点のみ。「現場で生まれたものを大切にすること」、そして「初恋の気持ちを大切にすること」。それ以外の役づくりを全てゆだねられたベッキーは、プレッシャーを感じつつも、「本番前、三池監督が必ず言っていた『ベッキー、初恋だからね』という言葉をわたしがどう広げていくか……。ただ怒り狂っている人にはしたくなかったので、恋人を思う切ない気持ちや時おり見せる悲しい眼差しなど、エモーショナルな部分はすごくこだわりました」と振り返る。

 愛の深さゆえに、壊れ方も尋常じゃない。想像をはるかに超える爆発ぶりについてベッキーは、「演じているうちに、アドレナリンとか、何だかよくわからないカタカナの変なものがいっぱい出ていたかもしれませんね(笑)。途中、三池監督が心配して、楽しい世間話でクールダウンしてくれるときもあったくらいですから」と苦笑い。

 さらに、「大人になると、公の場であんなに怒ることってできないじゃないですか。だからわたしは、心の中で『ストレス貯金』をしているのですが、ジュリのような役に出会うと、知らず知らずのうちにそれを爆発させている……というのはあるかもしれませんね。ただ、今まで演じた中で一番ぶっ飛んだ役だったので、この作品で三池監督に幅を広げていただいたのは確か。『ベッキーって、こういう一面もあるんだ』ということを知っていただける、いい機会になりました」と感謝した。

■来るものは拒まず、ただし「お色気シーン」以外で(笑)

 ベッキーといえば、バラエティータレントの枠を超えて、女優、歌手、MCなど、マルチな才能を発揮しているが、その秘訣について問うと、「わたしは逆に不器用なタイプ。感情がなかなか昂らなかったり、気持ちが出来上がるまで撮影を待っていただいたり、リハではうまくいったのに本番で出来ずに時間が押したり……。わたし自身はいつも泥臭い作業の連続。それがマルチに見えているとしたら、番組や作品をきれいに仕上げてくださるプロのスタッフさんのおかげ。そこに尽きると思います」と、どこまでも謙虚。

 唯一、胸を張って言えるとすれば、「お芝居も、歌も、バラエティーも、なんでも挑戦したい!」という前向きな気持ちをいつも全面に出していることなのだとか。「技術では勝てなくても、気持ちでは負けたくない。その思いはいつもありますね。特に本作は、すごい役者さんが揃っていたので、食らい付いていく気持ちと、足を引っ張ってはいけないという気持ちが重なって。もう、とにかく必死でした」と述懐する。

 その甲斐あって、本作での演技に対して、映画ファンから絶賛の声が数多く届いているが、「ありがたい」という気持ちを持ちつつも、やはりその評価も謙虚に受け止めている様子。「新しい自分を発見出来たことは本当に嬉しいことだと思っています。ただ、だからといって『女優宣言!』みたいな寒いことは言いたくないし、たぶん、世の中も受け入れてくれないと思います。流れに沿ってオファーを受けているうちに、お芝居が多くなっていた、ということはあるかもしれませんが、逆にそうなっても、『わたしはタレントだから、これ以上お芝居は……』みたいなことも言いたくない。『来るものは拒まず』、そのスタンスは変えたくないですね」と強調した。

 仕事が充実するその一方で、今春、第1子の出産を控えているベッキー。「ライフスタイルも大きく変わるので、正直どうなるかわからないのですが、まずは『生活を守ること』。これが一番のベースにあって、それを最優先しつつ、もし可能であるならば、お仕事は続けたいですね。とにかく現場が大好きだし、わたしを必要としてくれる方がいる限り、できるだけその声に応えたい。繰り返しになりますが、『来るものは拒まず』。ただし、お色気シーン以外でね(笑)」。もうすぐママになる穏やかな笑顔から、夢と希望がこぼれ落ちた。(取材・文:坂田正樹)