1月22日、10代の女性に睡眠薬を飲ませて性的暴行を加えた、東京都文京区の無職・後藤武彦(49)が、強制性交の疑いで逮捕された。男はツイッターに「パパ活」をしたい女性を募集する書き込みをしていたという。警視庁捜査1課は、後藤容疑者が同様の手口で50件以上の被害に関わっているとみて捜査を進めている。

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 そもそもパパ活という言葉を使いだしたのは、大手愛人クラブ「X」だ。男性と食事やデート、時には性交渉をする代わりに、女性が対価を得る「愛人契約」を「パパ活」と呼ぶことで、女性側の罪悪感を払拭した。この言葉の軽さも手伝ってパパ活は流行し、SNSやアプリ、マッチングサイトなどの登場でさらなる広がりをみせている。

 週刊文春デジタル取材班は「X」の舞台裏を取材した。

「初めてなのですが、よろしくお願いします。(男性は)優しい人がいいです。美味しい和食屋さんに行きたいですね。お酒は弱いですが飲みます。得意料理ですか……? ケーキを作るのが好きです。(最後に一言というスタッフに対して)えーと……、お誘い待ってまーす」

 動画が撮影されているのは白を基調とした部屋だ。茶色のカットソーに白いスカート姿の女性がソファに座り、カメラに向かって恥ずかしそうに笑みを浮かべている。スカートからはまっすぐな脚が伸び、セミロングの茶髪が胸元で緩いカーブを描いていた。

 この動画が掲載されているのは、大手愛人クラブ業者「X」のウェブサイト。「X」は全国に支店をもつ、日本最大規模の高級愛人クラブだ。男性から支払われる入会金、セッティング料金、年会費のみで運営されており、女性会員は無料で登録ができる。


「X」のウェブサイトに掲載されている佐々木愛子さんの自己紹介動画

 

「X」は“パパ活”という言葉の生みの親でもある。2015年頃に女性会員を増やすにはどうすればいいか話し合っていた際に生み出された言葉だと、雑誌などのインタビューで「X」の社長自らが明かしている。

 現在、会員は全国に約1万1500人。男性会員のみが閲覧できるページには女性会員の写真や自己紹介動画がずらりと掲載されており、男性会員はそれらを見て愛人候補を選ぶ。冒頭の動画は、佐々木愛子さん(仮名・34)という女性会員の自己紹介動画だ。

「大きな目と控えめな受け答えが素敵で、一目見て気に入りました。彼女は『プラチナム』クラスなので、実際に会っても美女なのだと思いました。すぐに運営側に会いたい旨を伝え、顔合わせの日程を組んでもらいました」

 そう語るのは会社経営者の50代男性、A氏だ。A氏が愛子さんを見つけたのは2017年5月頃、「X」に登録後まもなくのことだったという。

美貌で女性が格付けされ、芸能人やAV女優も在籍

 女性会員は美貌や知名度に応じて、運営側によってスタンダード、ゴールド、プラチナム、ブラックの4段階に格付けされる。一方男性会員も、3万〜30万円の入会金に応じて4クラスに分けられている。高額の入会金を支払った男性には、上位ランクの女性が紹介されるシステムだ。上位の女性会員には芸能人やAV女優なども含まれており、VIP待遇の男性にのみ直接紹介される。A氏が続ける。

「女性会員は『交際タイプ』という条件設定が選べるのですが、タイプAは『食事のみ』、Cは『初日から交際可』、Dは『条件次第で交際に発展』、Eは『お手当不要・知識や人脈作り』など5段階に分かれていました。愛子さんは2回目以降であれば交際に発展する可能性があるタイプBでした。交際というのは、端的に言うと肉体関係を持てるかどうかという意味です。愛子さんのような美女と愛人になれたら……と思うと胸が高鳴りました」

「都度5万円です」愛子さんと結んだ愛人契約

 顔合わせ当日、待ち合わせたのは東京・汐留の高級鮨店だった。「仕事帰りで……」という愛子さんはスーツ姿で現れたという。

「『X』のサイトで見ていた通りの美女で、興奮しました。でも動画の可愛らしさに反して、ツンケンしていて愛想は良くないなあというのが最初の印象です。でも『ものすごい数のオファーがくる』と言うし、これきりにするのはもったいないかなという気もしました。しかも、彼女は有名雑誌の読者モデルでもあったんです」

 愛子さんは会社員のかたわら、30代向け女性ファッション誌の読者モデルとしても活動しているという。雑誌のウェブサイトには愛子さんのブログもあり、そこには1人単価数万円の高級フレンチに、数十万円以上はするハイジュエリーブランドのピアス、南フランスでのバカンスなど、一般人には手に入らないような生活を送っている様子が綴られていた。同じく華やかな生活を送る様子を投稿しているインスタグラムのフォロワーも1万6千人を超えている。

「名前を検索したら本当に読者モデルなんだとわかり、2回目も誘いました。会ったのは渋谷区円山町の料亭です。食事の後、ホテルに行くか提案したら、『都度5万円です』と言うので、それなら払えると思って愛人契約を結びました。

 それからは1〜2カ月に1回ほどの頻度で会うようになりました。やり取りはいつもメールで。10日に1回ほど連絡をして、次に会う日程を決めたり、どんなものを食べたいかを聞いたり。彼女が指定するのはいつも予約が取れないような高級レストランばかりでしたが、僕も美女と食事するのにカッコ悪いところは見せられませんからね。1カ月前から予約するなど、準備は怠りませんでした」

 A氏が愛子さんとの逢瀬のために予約した店は、高級中華の「茶禅華」、日本料理の「いち太」、「なだ万」、フレンチの「TSU・SHI・MI」、「カンテサンス」など。どの店も人気店で1人あたりの客単価が数万円する高級料理店ばかりである。

「愛子さんはワインが好きで、値段を確認せずにボトルを頼んでしまうのには少し困りました。でも幸せそうな彼女と一緒に過ごせるのが嬉しかったので、目をつぶった。

 2人で泊まるホテルも『パークハイアット』や『グランドハイアット』、『シャングリ・ラホテル』、『ザ・ペニンシュラ』などの高級ホテルです。彼女はたいてい宿泊せずにタクシーですぐに帰っていきますが、東京で一番高いと言われるホテル『アマン東京』と高級旅館『星のや東京』ではそのまま宿泊していました。そういう“映える”場所に行った際には、たくさんの写真を撮っていました」

インスタグラムに投稿されたA氏からの贈り物

 ホテルでの写真は愛子さんのブログやインスタグラムにもたびたび登場している。A氏が撮影を頼まれることもあったという。

「『ハイアットセントリック銀座』に行ったとき、『スツールに座るから何枚か撮って』と言われたのですが、さすがモデルですよね。自然とポーズを変えていくので、連写で撮影しました。翌日に僕が撮った写真がインスタグラムにアップされていた時は、なんだか嬉しくなったのを覚えています」

 そのほかにも、A氏は愛子さんの誕生日やクリスマスのたびにプレゼントを贈った。

「2017年のクリスマスにはTASAKIの20万円のバランスピアス、2018年の彼女の誕生日には10万円のBeautiful Peopleのライダースジャケットを買いました。一番高かったのは、2019年の誕生日に買ったヴァン クリーフ&アーペルのイヤリング。最初は小さいサイズのものをリクエストされていたのですが、結局買ったのは41万円の大きいサイズでした。出会った最初の頃は、プレゼントをねだられたら関係を切ろうと思っていたのですが、『買って?』という彼女の上目遣いのおねだりが可愛くてつい……」

 愛子さんはA氏からのプレゼントを、インスタグラムだけでなく自身が読者モデルを務める雑誌のブログにも「私の人生をともに歩んでいくジュエリーを少しずつ集めています」「友人の兄のサングラスで、羨ましがっていたら譲ってくれました」などと綴っている。

「本当はアクセサリーも食事も私が買ったり奢ったりしているのですが、あたかも自分が購入したかのように投稿するのが少し可笑しかったです。それも、『海外からのお客様の宴席で』とか『友人兄』とか、その嘘いる?という謎のコメントを加えて(笑)。彼女の自己顕示欲は、僕みたいな男がいるから満たすことができるんです」

 契約通り、A氏は肉体関係を持つたびに5万円を支払ったが、「5万円を支払うのも苦じゃなかった」と話す。

性行為の最中に僕の髪を触って「いい白髪だね」と…

「彼女は性行為中に会話をするのが好きな子でした。いつだったか、胸を愛撫していたら彼女が僕の髪を触って『いい白髪だね』と言ってくれたのを覚えています。2年半で一回だけ、彼女の生理が被ってしまった日があったのですが、『私に口でさせるなんて贅沢だなあ』と言いながら、楽しそうに舐めてくれました。性行為が終わると僕が5万円を現金で渡すのですが、それが解散の前の儀式。彼女は5万をもらったら毎回すぐに帰ってしまいました。

 避妊してくれと言われたことはないので、ピルを飲んでいたのかな。彼女はホテルのベッドが大きいと、走ってダイブしちゃうような無邪気で可愛いところもある。5万円が高いと感じたことはありませんでした」

 約2年半にわたりA氏は愛子さんに尽くしてきたが、2019年10月を境にパタッと連絡が途絶えてしまった。

「僕の誕生日を忘れられていたのが悲しくて、メールできつく当たってしまったら、連絡が取れなくなってしまいました。インスタに派手な写真を投稿するには僕の存在は不可欠だったはずです。でも一切連絡が取れなくなってしまった。僕以外にも“スポンサー”がいて、面倒になったらいつでも切れるってことだったのでしょうね。

 彼女とは出会ってから十数回は会っています。身体の関係1回につき5万円。それ以外にもホテルの宿泊代や予約の取れない人気レストランでの食事、イベントごとのプレゼントをあわせたら300万円は貢いだ。たしかに“愛人契約”はそんなものなのかもしれません。しかし僕はそこに少なからず心の交流もあったと思っていた。それなのに、こんな終わり方はあんまりですよ」

 A氏はプレゼントの領収書などを保管しており、愛子さんへ相当額を貢いできたことが確認できた。

愛子さんはA氏との関係を「友人です」

 取材班は愛子さん本人にも電話で話を聞いた。

――Aさんをご存知ですか。

「はい、知ってます」

――会ったことがある?

「はい、あります」

――愛人クラブ「X」で会った?

「はい」

――2人の関係は?

「友人です」

――身体の関係はあった?

「ないです」

――会わなくなった理由は?

「いえ、特に……ないです」

――プレゼントなどを買ってもらったこともない?

「はい」

 しかし、愛子さんからのメールにはプレゼントをねだる記述が残っている。

《欲しいスカートとGジャンがあるから、早めに有楽町のルミネと東急に見に行こうと思ってたのー! 一緒に見にいく? 買ってー笑》

《Aサンタへ リモワは、○○(愛子さんの住所)までお願いしまーす》

《プレゼントはやっぱりピアスにしたいなと思ってみてるよー ショーメのダイヤのシルバーのか、バンクリの小さい黒いやつか迷い中》

売春斡旋の罪をすり抜ける「抜け穴」

 愛人契約は売春にはあたらないのか。アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士は「そもそも売春行為とは対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいうと定義づけられています。『X』が行っているような愛人クラブビジネスを売春斡旋と断じることはできませんが、非常にグレーな商売であることは確かです」と語る。

「入会時の案内やサイト上などに、性交渉の対価に関する言及があったとしたらそれは確実に売春斡旋と言えます。しかしサイトを見ると『交通費』や『デートのお礼』といった言葉でしか女性への対価については書かれていない。しかも、交際や性行為を断わられる可能性がある以上、『X』のような業者はただのマッチングサービスである、という主張をすることができます。

 しかし、愛人クラブで出会うような男女は売春行為の定義である『不特定の相手方』に当てはまります。サイト上に書かれている『愛人マッチングサービス』という文言も、警察に『不倫相手や性交渉を目的とした男女の交際ではないか』と指摘されたら摘発される可能性が高いでしょう」(同前)

 “グレーな商売”はネットやSNSの隆盛で益々身近なものになっている。読者モデルの愛子さんも、インスタグラムやブログを見るだけでは、愛人契約といった後ろ暗さは感じられない。

 愛子さんは1月3日、「2020はなりたい自分になる!」とインスタグラムに綴っているが、その目標達成のためには果たして何人の“愛人”が必要なのだろうか。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)