マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界第二十回 ヤマダイ「ヴィーガンヌードル」 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」を紹介する連載の第二十回目。今回は、東京・自由が丘の「T'sレストラン」監修によるヴィーガン(完全菜食者)向けの商品。動物性食材を一切使用していないカップ麺をレビューします。

「ヴィーガンヌードル」担担麺と酸辣湯麺

動物性食材を一切使わないカップ麺

ヴィーガンとは、完全菜食主義者を意味する言葉です。欧米で広がりを見せる食文化ですが、日本でもここ数年でこの言葉を多く見かけるようになりました。

ヴィーガンはベジタリアンのカテゴリのひとつとされ、肉や魚に加え、乳製品やたまごなども食べない人のことを指します。ヴィーガン食を取り入れる理由は、主に動物の命を尊重し権利を守るためとされていますが、健康や美容を意識して取り入れる場合もあるようです。

東京自由が丘の「T'sレストラン」監修

今回の「ヴィーガンヌードル」は、東京自由が丘にある「T'sレストラン」監修による、完全菜食主義者向けの動物性食材を一切使用しないカップ麺。「担担麺」と「酸辣湯麺」の2種類がラインアップされています。

ラーメンには通常、多くの動物性食材が使われており、チャーシューやたまごなど目に見えるものに加え、スープにも鶏ガラ、豚骨、魚介、さらにはチーズやクリームが入ってくることもあります。

これら抜きでカップ麺を作るのはかなり厳しそうですよね。飛車角抜きで竜王戦に挑むくらい無理ゲーに見えます。

さらには、化学調味料やアルコールを使わず、麺もノンフライ麺を使用することで健康に配慮されています。カロリーは、担担麺は222キロカロリー、酸辣湯麺は200キロカロリーで、どちらも低カロリーです。

内容物 左:担担麺 右:酸辣湯麺

ヴィーガンヌードルの内容物を確認

ポップなデザインのタテ型紙カップにプラスチックのフタ付き。ヤマダイのカップ麺は無骨なデザインのものが多いのですが、今回はカップヌードルみたいにおしゃれです。カップの中には麺の他に、どちらも液体スープとかやくが入っています。

先入れのかやくを麺の上に開けた状態 左:担担麺 右:酸辣湯麺

かやくはどちらも緑や白が主体で、だいぶやさしい色ですね。担担麺は枝豆やすりごま、酸辣湯麺は豆腐が大きな特徴と言えそうです。

麺はどちらも白くて細めの麺が入っています。同じ麺が使われているようです。こちらもやさしそうなイメージ。

動物性食材を使っていないスープ

両者ともスープに一切の動物性食材が使われておらず、本来ならラーメンスープには必須の鶏ガラ、豚骨、魚介などが入っていません。ヴィーガン食としてどのように味を補っているのでしょうか。

ヴィーガンヌードル 担担麺

担担麺のスープは、濃厚な練りごまをベースに豆板醤や甜麺醤(テンメンジャン)を加え、唐辛子や花椒で刺激が加えられています。唐辛子や花椒はそれほど強いわけではないですが、練りごまの濃さはカップ担々麺の中でもトップクラスではないでしょうか。

一般的な担々麺のスープ入っている鶏や豚が使われていないため、奥行きがなく多少表面的な味だと感じましたが、練りごまのコクや花椒のシビレによって味の奥行きを補おうとする意図は窺えました。

何度か食べて慣れれば違和感がなくなってきそうです。ヴィーガン食だからといって薄味ではありません。

ヴィーガンヌードル 酸辣湯麺

一方の酸辣湯麺は、お酢の強烈な酸味を効かせたしょうゆ味で、ごま油やガーリックの風味を効かせています。唐辛子の辛味が強く、酸味と辛味でかなりパンチの強い酸辣湯スープに仕上がっていました。思いのほか激しい味にびっくり。

酸辣湯麺ではベースに鶏を使うことが多いですが、今回は鶏抜きでも味の不足感はまったくなく、むしろ酸味と辛味の激しさは他の酸辣湯商品以上だと感じました。酸味や辛味は動物性食材を補うのにとても適した味だと思います。

中細のノンフライ麺

ヴィーガン食以上のこだわりを詰め込んだ麺

担担麺と酸辣湯麺共通で、中細で緩やかに縮れのついたノンフライ麺が使われています。ソフトな食感でスープとよく馴染んでおり、麺がスープの味を邪魔することなくしっかり馴染んでいます。

ヘルシーなノンフライ麺を使用している上、麺を短くすることで啜った時にスープが飛び散らない工夫がされています。また食物繊維が練り込まれていたり、色素を添加せずに小麦の自然な色にしていたりと、ヴィーガン食に留まらないこだわりを詰め込んだ麺となっています。

難点は麺量。一般的なカップ麺に比べるとかなり少なく、普通のカップ麺のつもりで食べると物足りなく感じてしまうかも知れません。健康に気を使っている方に向けたサイズになっているので注意が必要です。

肉は入っていないが充実した野菜

具も当然、動物性食材を使用していませんが、両者それぞれに特徴的な具が入っていて、ヴィーガン食を盛り上げています。

担担麺の具

担担麺には、枝豆、大豆ミート、チンゲン菜、すりごまなどが入っています。特徴的なのが枝豆で、カップスープだと前にもあったものの、カップ麺で入っているのはこれまで経験がありません。挽肉を模した大豆ミートも入っていて、担々麺の雰囲気を醸し出しています。

酸辣湯麺の具

酸辣湯麺には、豆腐、コーン、チンゲン菜などが入っています。こちらは豆腐が特徴的で、細かくカットされたものがたくさん入っていました。豆腐にもヘルシーなイメージがありますよね。豆腐やコーンの甘みが酸味や辛味の強いスープの中でよく映えていました。

ヴィーガン食らしからぬパンチ力が魅力

ヴィーガン食でありながらパンチの強い味に仕上げており、特に酸辣湯麺の酸味と辛味は強烈。日常的にカップ麺を食べていて濃い味に慣れてしまっている私でもしっかり楽しめるスープでした。決して薄味ではありません。

麺量が少ないのは気になるところですが、健康や美容を念頭に置いて食べるのならば許容できる範囲でしょう。正直、ヴィーガン食でこれだけ楽しめるものとは思いませんでした。

入手しにくさが最大のネック。たまにスーパーで見かけることはあっても、日常的には手に入れ難いものと思われます。

もっと認知度が上がれば人気が出そうな商品ですが、大手他社のように大々的な宣伝活動をしないのが質実剛健のヤマダイらしいところ。ネット通販では手に入れられるので、気になる方は探してみてはいかがでしょうか。

筆者:オサーンカップ麺ブロガー。十数年前に出会った「日清麺職人」のおいしさに感激したことがきっかけでブログを開設。「カップ麺をひたすら食いまくるブログ」で毎週発売される新商品を食べて毎日レビューしています。豚骨スープとノンフライ麺の組み合わせがお気に入りですが、実はスープにごはんを入れて食べるのが最も至福の時です。Twitter(@ossern)