FC東京、2年連続“失速”で晒した選手層の不安 史上最高2位も…「低迷危機」と紙一重
【識者コラム】2年連続でJ1リーグ戦終盤に息切れ、顕著だった久保離脱の影響
J1リーグ最終戦での逆転優勝へ、一縷の望みをつないでいたFC東京は、結局一度もゴールを奪うことなく横浜F・マリノスに0-3で完敗した。
試合後に長谷川健太監督は、「首位の数は一番でも、最後にトップでなければ何も残らない。来年は実を結ぶシーズンに」と語り、日産スタジアムに足を運んだサポーターもリーグ2位というクラブ史上最高成績を労うようにエールで讃えた。
だが、2年連続の終盤の息切れは、厳しい現実も晒した。昨年就任した長谷川監督は堅守速攻路線に舵を切り、柏レイソルから獲得したディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑の2トップを最大限に活かすスタイルで序盤から快調に勝ち点を積み上げた。ところが永井が故障で離脱すると、後半戦は得点力の低下とともに順位を下げて6位に終わっている。
そして2年目の今年も戦術、メンバーともにほぼ前年を踏襲。それでも再度前半戦をリードできたのは、当時17歳の久保建英(現マジョルカ)が大ブレイクを果たしたからだった。久保がレギュラーに定着したことで、攻撃の質は試合ごとに高まっていった。技術が突出した久保は、状況を見て緩急のリズムを調節し、サポートが少なければ自力突破を選択し、機を見て2トップのスピードも巧みに活用した。
しかし18歳の誕生日を迎えた久保が去ると、目に見えて得点力は低下した。久保は大分トリニータに3-1で勝利した第14節までの13試合に出場し、この間のチームの1試合平均得点は「1.54」。それに対し、残りの久保不在の21試合は「1.24」にとどまった。結局、前半戦で久保とチャン・ヒョンスが移籍したわけだが、チャン・ヒョンスの代わりには成長過程の渡辺剛がチャンスをつかみ定着したものの、久保がプレーしたサイドハーフだけは日替わりだった。
一方、大きな懸念材料となるのは、逆に他のポジションのメンバーが2年間、ほとんど変わっていないことである。GK林彰洋、DF室屋成、森重真人(故障がなければ小川諒也も)、MFでは橋本拳人、郄萩洋次郎、東慶悟、それに前述の2トップが固定。振り返れば首位を明け渡した第32節湘南ベルマーレ戦(1-1)から優勝戦線の流れが変わったわけだが、残留争いをしていた対戦相手の浮嶋敏監督もFC東京を「戦い方のはっきりしたチーム」と評している。実際この試合はホームのFC東京が、敗色濃厚な状況から後半アディショナルタイム4分に森重のミドルシュートで勝ち点1を拾い上げるのが精一杯だった。
ステップアップを望むなら、勇気ある大胆な変革が不可欠
リーグ2位でフィニッシュしながら、実はFC東京は非常に危機的な状況と紙一重に映る。終盤に入り長谷川監督は何度も「決め切る力」に言及したが、そこに絡む永井、ディエゴ・オリヴェイラ、郄萩、東が、来年には全員30歳代に入り、反面、下からの突き上げが乏しい。しかもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が入ってくることを思えば、選手層の厚みが不十分なことは明白だ。
Jリーグの振幅は激しい。ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)を先駆けに、ジュビロ磐田、名古屋グランパスなど一度は黄金期を迎えたチームが、代謝期を見誤り次々に失墜していった。サンフレッチェ広島で4年間で3度目のJ1制覇を達成した森保一監督が、2年後には途中退陣に追い込まれたのも記憶に新しい。
FC東京がさらなるステップアップを望むなら、おそらく勇気ある大胆な変革が不可欠だ。もし3年目も同じ選択に固執すれば、それは逆に大きな低迷の入り口になるリスクも孕んでいる。(加部 究 / Kiwamu Kabe)