<かつては戦火を交えた両国だが、今では韓国にとってベトナムは貿易輸出で第3位となり、密接な関係を築いている。そんな両国関係に水を差すような事件が発覚した>

韓国を公式訪問したベトナム国会外交団のメンバーが、韓国滞在中に行方不明となり、現在ベトナム公安当局が韓国に対し、行方不明者の捜索と送還を求めていることが明らかになった。

これは9月に韓国メディアが報じたことを受ける形で、ベトナム側が事実関係を一部訂正しながらも事件を認めたことで明らかになった。

このベトナム国会外交団は2018年12月4日から7日まで韓国を公式訪問した。一行はベトナムのグエン・ティ・キム・ガン国会議長を団長とするメンバーで、韓国のムン・ヒサン国会議長の招待で韓国を訪れ、貿易投資促進フォーラム(ベトナム計画投資庁、韓国商工会議所、在ベトナム韓国大使館などが開催)に参加した。

同フォーラムにはベトナム韓国両国から約300の企業が参加、ベトナム側は44企業72人が参加したという。

ところが訪問から1年近く経った2019年9月23日になって韓国のメディアが「ベトナム代表団の9人が韓国滞在中に失踪していたことがわかった」と報じた。それまで一切報道がなかったのはベトナム政府と韓国政府の間で「報道発表自粛措置」が取られたためとみられている。

「失踪したのは外交団メンバーではない」

韓国での報道を受けてソーシャルメディアなどで情報が拡散したことからベトナム政府も9月25日にグエン・ハン・フック国会書記長がベトナムのメディアに対して「失踪したベトナム人は国会議長の率いた国会外交団のメンバーではない。韓国での貿易投資促進ファーラムに参加した企業の幹部である。政府は彼らを韓国に向かう外交団が搭乗する専用機に同乗できるように手配しただけで、韓国へは外交ビザで入国した訳ではない」と発表。外交団ではないとしながらも、同行したベトナム人が韓国で失踪している事実を間接的に認めた。

失踪した9人を含めたベトナム企業の幹部参加者の選定や韓国での宿泊先などの手配をしたのはベトナム計画投資省だったという。

フック国会書記長は当時の状況について、韓国での日程を終えて航空機でベトナムに出発しようとしていた時に「代表団9人のメンバーの行方が分からなくなっていることがわかったが、離陸時間が迫っていたので待てなかった」という。

そのうえで「国会事務局として公安省に対して失踪したメンバーを発見してベトナムに移送するように関係者や韓国当局と調整を急ぐよう要請している」と述べ、「失踪者のベトナム人に対してはベトナムの法律に従って捜査をして厳密に対応する」と、断固とした姿勢を示している。

これまでの韓国での報道などによると、失踪した9人のベトナム人のうち1人が2019年初めに韓国当局に出頭しベトナム帰還を求めたことで、韓国当局が「失踪事件」を正式に認知したという。その後さらにもう一人のベトナム人が身柄を確保され、ベトナムに強制送還されており、現在も行方不明なのは7人となっている。

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チュック・グェン(フリーライター)