蒲郡vs西尾

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蒲郡が5点差を8回、9回で追いつき、延長11回に逆転サヨナラで西尾を下す

 まだ梅雨明けしていない東海地方。この日も、朝からはっきりしない天候だった。しかも深夜に降った雨の影響で、各地で試合開始が遅れていたようだが、豊田市運動公園球場も予定より約1時間遅れの9時55分に試合開始となった。

 西尾東の昨夏の準優勝、秋のベスト4などに確実に刺激を受けている西尾。自分たちも負けていられないという思いは強いのだろうが、今年のチームは秋も春も、二次トーナメントまで進みながらも西三河地区ブロックを勝ちきれず県大会進出を果たせず悔しい思いをしてきた。それだけに、この夏に賭ける思いはよりいっそう強いものがある。

 また、蒲郡は今を時めくソフトバンクのエース千賀 滉大投手の出身校ということで、知られるようになった。そんな両校の対戦だが、初戦ということもあってか、初回はお互いにちょっと攻守にやや硬いかなという印象の入りとなった。ただ、そんな中で、西尾の上位打線のスイングの強さが目立っていた。

 しかし、蒲郡の壁谷君は臆することなく度胸よく投げて行っており、5回までは1〜3番に4本の安打を浴びつつも4番以下には安打を許さず無失点。また、西尾の鈴木輝君も初回、4回、5回と複数の走者を背負って、苦しい場面もあったが何とか食い止めて踏ん張り、0対0で試合は後半に突入することとなった。

 均衡が破れたのは6回で、西尾はこの回先頭の4番平野君が粘って四球を選ぶとしっかりバントで送る。さらに兒丸(こまる)君の遊撃強襲安打で一三塁後、山本君も粘って四球で満塁。そして8番の鈴木輝君だが、スクイズがファウルになるなどでフルカウントとなったが、ここでしっかりと三遊間を破ってこれが先制打となった。さらに二死満塁で、1番に回って上村壮君が痛烈に右前へ運んで2点目が入った。しかし、3点目は、蒲郡富田君の好返球で阻止した。

 その裏、蒲郡も先頭の竹内君が左前打、バント内野ゴロ、四球もあってまたしても三塁まで走者が進んで複数走者が溜まったが、ここも鈴木君が踏ん張った。

 7回にも西尾は、2人目となったサイドハンドの中田君に対して山崎君の中前打と失策などで一死一三塁として、天野君が救いだ。これが、ダッシュしてきた投手の頭上をふわりと越えていく打球となり記録は内野安打。さらに二死一二塁で、山本慶君が左越三塁打で2者を帰して5点差とした。

 ところが、こうなると試合が動き出して、蒲郡も反撃する。8回に2四球などで二死一二塁となったところで、6回に代打で出てそのまま9番に入っていた神本君が中越二塁打で2者を帰した。さすがに球数も多くなってきていたので、西尾の田川誠監督は鈴木君を下げて2番手として中田君を送り出した。ややサイド気味で投げる倉地君だったが、四球と2番三田君の右前打で3点目が入る。それでも、倉地君も後続を何とか左飛で打ち取っていった。

 それでも、試合の流れは蒲郡に傾きかかって来ていた。 9回は西尾はあっさり3人で攻撃を終えるが、蒲郡は先頭の古東君が四球で出ると、2者は三振となるが、失策とさらに四球で満塁。一打同点という場面で、前の打席で反撃の二塁打を放った神本君。今度は中前へはじき返して2者が帰ってついに同点とした。

 こうして延長にもつれ込んだ試合は11回の攻防で決着となった。 西尾は11回、一死から谷口君の安打と盗塁、四球などで二死一二塁として、兒丸君の中前打でリードする。蒲郡はここで4人目として岡田君が一塁からリリーフのマウンドへ。山本君を遊直に仕留めるが、抜けていたら、また違った展開になっていたところだ。

 その裏の蒲郡は、高井耕志監督も「1点差なので追いかける方が有利だと思っていた」と言うように、負けている雰囲気はなく、四球と長田君の右前打、さらに当たっている神本君四球で無死満塁。立石君は内野ゴロで本塁アウトとなったが、続く三田君のスクイズは、見事に決まり、さらに送球が走者に当たって二塁走者も生還してサヨナラとなった。こうして、3時間10分を越える大熱戦は思わぬ形で幕が下りた。

 「5点リードされての8回、9回は、選手たちの底力を見せてもらったような気がした」と喜ぶとともに驚いていた。流れを呼び込んだのが3人目として登板した長田君だった。「ムードメーカーでもあるので、8回に彼が抑えてくれたところで、ベンチも、よし、行けるぞという雰囲気になった」と、ベンチの盛り上がりを語っていた。

 展開としては勝ち試合だったものをひっくり返された西尾の田川監督。「正直なところ、今年のチームは、こういう試合が出来るまで、よく成長したと思います。ただ、このリードを守り切れない、勝ちきれないところが、やはりこのチームの力だったのだと思います」と、肩を落とした。それでも、「こういう試合を見た下級生たちにとっては、それがまた糧となっていくはず」と、新たなスタートへ気持ちを向けていた。

(文=手束 仁)