横のブロックに入った、イングランドにとっては、願ったり、叶ったり。初戦のカメルーンは、イングランドにとってそれほど難しい相手ではない。次に当たるのはオーストラリアかノルウェー。オーストラリアには監督交代の影響が残り、ノルウェーは韓国戦で負傷したグラハム・ハンセンの出来次第。フランスのブロックに比べれば、はるかにマシだ。準決勝まで勝ち進めば、コンディションを利して戦えそうだ。
 
 3年前のリオ五輪を制したドイツだが、その後のチーム体制変更で混乱。マルティナ・フォス=テクレンブルク監督が立て直しにかかっているが、もう少し時間はかかりそうだ。今大会では決定力不足が目につく。3試合で56本のシュートを放って6ゴールという数字以上に深刻だ。ケガで戦線を離れているジェニファー・マロジャンが戻ってこないと、早期敗退の可能性もある。
 
 ドイツの入ったブロックもなかなか骨っぽい。カナダ、スウェーデンといった世界大会の上位経験国もいる。スタイル的には“アンシャンレジーム(旧体制)”に属し、現在でもフィジカルが最大の武器と言えそうだ。ナイジェリアには、大物食いの期待がかかる。グループリーグで2敗しているが、フランスには、試合終盤に与えたPKによるもの。ノルウェー戦も0-3のスコアよりも、競った内容だった。観ていて楽しいのはここだ。
 
 日本が入ったブロックは、鮮明に二分された。世界大会の経験豊富で決勝の舞台にも上がっている、日本と中国。ベスト4すら経験していない欧州の新興勢力、オランダとイタリア。今大会のトレンドでは後者が優勢だが、ここは先輩の顔を立ててもらおう。
 
 日本とベスト16で当たるオランダは、女子EUROのチャンピオンチームだ。日本は高倉体制になってから1勝2敗。アルガルベカップでは2連敗し、特に昨年の2対6という大敗は、下馬評における根拠になっているかもしれない。
 
 もともとアルガルベカップは2月から3月が開催時期のオープントーナメント。秋春制の国々がシーズン中で、日本がオフ明けの時期にあたり、コンディションの不利がある。ゲーム内容も(あくまでこの試合の中の)決定力の差がスコアにつながっただけだ。高倉麻子監督が、当時のようなオープンゲームのプランで臨むとは考えられない。
 
 オランダのサイド攻撃は確かに強力だが、やりようはある。また、アジリティに長けた日本のアタッカー陣のようなタイプを、オランダの守備陣は苦手とする。FIFAランキングでも7位と8位で、紙一重だが日本が上。いたずらに恐怖心を持つ必要はない。
 
 日本のブロックには、アメリカなどの抜けた強敵が見当たらない。オランダを倒した余勢でイタリアあるいは中国を蹴散らし、リヨンに乗り込めれば3大会連続ファイナルの頂も見えてくる。若いなでしこジャパンに、大方の予想を覆し、世間をあっと言わせてほしい。
 
文●西森 彰(フリーライター)