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副業元年と言われた昨年から、さまざまな副業が注目されているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多いのが現状だ。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験をいかし、自分の得意なことで収入を生み出している人を紹介していく。

第31回は、金融機関社員として勤めながら、当時始めたビーズフラワー教室を本業にしてしまったという、清水美佐さん(50代)を紹介する。

現在、自身で立ち上げた「ローズリブラン」という教室でビーズフラワーを教えている清水さんだが、複数箇所のカルチャースクールや、百貨店催事、某有名ホテルでのマルシェ、さらには自宅教室開催など、人気講師として飛び回る日々を過ごしている。

○体調不良からの一念発起

そんな清水さんは、もともと手作りが好きで、編み物やパッチワーク、ビーズなどの手芸を楽しんでいたそうだが、本格的にこの「ビーズフラワー」を仕事にしようと思ったのには、こんなきっかけがあったのだという。

「毎日の家事とフルタイムの仕事、親の介護で、時間にも気持ちにも余裕がなく、ただ『大切な家族のため頑張らないと』と必死でした。やがて原因不明の体調不良で休職、自宅療養が2カ月続いたのです。当時40代、無理がたたって身体と気持ちのバランスが保てなくなっていました。そうなって初めて、豊かな生活とは金銭的な豊かさではなく、心が豊かになる生活と考えるようになったのです」

少しずつ体力が戻ってきた頃、部屋の掃除を始めた清水さん。趣味で作っていたビーズ作品の数々を見つけ、もっと何か作ってみたいと思い、インターネットで検索したのだそうだ。

「インターネットで探していましたら、ビーズフラワーの画像が飛び込んできたのです。ビーズでお花作り! かわいいし、きれいだし、見事な作品の数々に魅せられてしましいました」

○じっくりと培った技術

それからビーズフラワー教室に通って、少しずつ技術を身に付けていった清水さんだが、途中、通っていた教室が閉鎖になるなど、さまざまなアクシデントに見舞われた。それでも「いつかビーズフラワーの教室を持ちたい!」との一心で乗り越え、5年がかりで師範過程を終了、ようやく教室を持てる状態となった。

筆者も数々のハンドメイド教室開催をサポートしてきたが、技術を取得し終えるまでに5年という期間は、非常に長く、大変だったであろうことは安易に想像がつく。しかし、それを辛抱強く続けてこられた清水さんには、かなりの情熱があったのだろう。そして、それは恐らく、先の体調不良の経験が支えになっていることは間違いない。

○成功の陰には目に見えない努力が

ただ、それでも一筋縄でいかないのが「教室の運営」だ。誰もが最初に躓くのが「集客」、つまり生徒さんを集めることである。しかし清水さんは、その情熱と作品力でここも乗り越えていく。

「オリジナル作品を教える教室を作ろうと思った頃、コンテストで受賞させていただきました。その作品が雑誌に掲載されたあと、体験レッスンの依頼があったんです。ちょうど美容室でレッスンを始めたこともきっかけとなって、それから自然に教室が広がってきた感じです。当時それに伴って、カルチャースクールからの作品掲載や講師依頼があり、少しずつ軌道に乗っていきました」

ここだけ聞くと、なんとなく運とセンスがいいだけのように聞こえるかもしれないが、実は清水さんの作品力が磨かれるまでには相当の努力があり、その努力が結果を引き寄せたといっていい。

「新しい作品作りは、毎日が失敗の連続で、たくさんやりかけの作品がたまっていきます。そして、時間をかけて何度も何度も納得いくまでやり直し、ようやくひとつの作品が完成するのです。もちろん見た目の美しさだけでなく、受講者様目線で、どうしたら作りやすいかも考えながら進めますので、納得のいく作品が完成するまでは、失敗の連続なんです」

そうして講座内容も、初級から認定コースまでを構築、季節に合わせたかわいいお花作りを楽しんでもらえるよう工夫したことも成功の要因といえるだろう。

○遠方の方にも楽しんでほしい

そうまでして頑張る清水さんにとって、やはり受講者さんたちが作品を完成された時のあふれる笑顔がエネルギーの源になっているという。

そしてもちろん、本業とのバランスも大切だ。まだ会社員だった頃、通勤時間は教室と作品のことを考える時間に充て、そしてスキマ時間を使ってブログを書くなど、工夫をして、家事、仕事、副業のバランスを取っていたのだそうだ。

「そして、副業が大変になってきた時に、副業を本業にしました」

まさに理想的な退職のタイミングと言えるだろう。

「神戸・愛知など、遠方から長く通ってくださる方や、わざわざ私の作風が良いと言ってコンタクトを取ってくださる方が増えてきましたので、ご自宅でも一緒に楽しく物作りに励んでいただけるよう、システム作りに力を入れたいです。また、教室のコンセプト『一期一会』を大切にしつつ、『優しい思い』になれるビーズフラワーを楽しんでいただき、近い将来には自分と生徒様の作品展も開催したいと考えています」と、展望を語る清水さん。

これまでも夢を叶えてきた努力家だからこそ、その言葉にも現実味がある。

○執筆者プロフィール:戸田充広

趣味起業コンサルタント。全日本趣味起業協会代表理事。

趣味起業のパイオニアとしてこれまで300名以上の趣味起業家を育て、現在は全国でのセミナー、講演活動のほか、数々の講座でさらに趣味起業家を育て続けている。著書に『稼げる! 自分に合った副業が必ず見つかる! 副業図鑑』(総合法令出版)、『決定版! 趣味起業の教科書』(マガジンランド)、『消費税率アップから家計を守る! サラリーマンのための安全「副業」のススメ』(すばる舎)などがある。「全日本趣味起業協会」