映画「ガールコップス」のスチール写真(配給会社提供)=(聯合ニュース)

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【ソウル聯合ニュース】韓国の映画界で近ごろ広がっている、前売り券を購入するが映画館には行かない「魂を送る運動」を巡って論争が起こっている。

 この運動は映画をすでに鑑賞した人や映画館に行けない人が作品に対する支持を表明するために行い、主に最前列や隅の方など人気のない座席を購入して他の観客に迷惑がかからないようにする行為。

 これを巡り、積極的な消費行為であり新しい応援文化だとする意見と、市場秩序を乱す行為だとの意見が対立している。

 「魂を送る運動」が話題になったのは、韓国映画「ガールコップス」(原題、以下も)の公開がきっかけだった。

 女性警察官が主人公だという理由で封切り前から反フェミニズム団体に非難され、主要ポータルサイトでもわざと低い評価をつけられるいやがらせを受けた。

 それでも同作は9日の公開から観客動員で上位を維持し、19日までの観客数は延べ123万人を記録した。損益分岐点は約180万人だ。

 この作品の躍進は女性観客の支持のおかげだ。シネマコンプレックス(複合型映画館)大手のCGVによると、同作の観客の男女比は女性74%、男性26%で圧倒的に女性が多い。

 女性観客は「ガールコップス」が韓国社会にはびこるデジタル性犯罪を扱った点に共感し、女性映画発展のために前売り券を購入している。あるネットユーザーは「『ガールコップス』の封切り日に8人分の座席を予約した」として証拠写真を投稿した。

 「魂を送る運動」は、昨年10月に公開された韓国映画「ミス・ペク」で本格的に知られるようになった。児童虐待と傷付いた女性たちの連帯を扱ったこの作品は、主演ハン・ジミンの熱演もあり好評を得た。公開当時には大きな注目を集められなかったが、繰り返し鑑賞する観客や複数枚の前売り券を購入する観客が多く、最終的に72万人を動員して損益分岐点の70万人を超えた。

 このほか、韓国映画「ハー・ストーリー」や「抗拒:柳寛順物語」なども運動の対象になった。「ミス・ペク」は商業映画ではあるものの独立映画の性格が強い反面、「ガールコップス」は典型的な娯楽映画だという点でさらに論争が激しくなったとみられる。

 「魂を送る運動」を巡ってはさまざまな意見があるが、観客の積極的な意思表現の一つの方法であり、新たな文化運動の一環だという見方が優勢だ。

 映画界の関係者は「自分が応援する映画に寄付するのと同じ行為だ」と話す。その上で「韓国は女性中心の映画の興行が低調で、あまり作られない」とし、「フェミニストたちが自ら市場を守ろうという防御行動の側面もある」と分析した。

 一方で市場の秩序を乱し、逆効果となる可能性があると懸念する声もある。ある観客は「映画館で鑑賞する面白さの一つが他の観客たちと共感しながら一緒に見ることだが、前売りの際と異なり映画館がガラガラだったので驚いた」と話した。

 映画評論家のカン・ユジョン氏は「意思表現の一つの方法として意味のある試みだが、実質的な文化的影響力を育てるには限界がある」とし、文化的影響力は単純に販売枚数で決まるのではなく、観客が実際に映画を見て発生した口コミが広まった時に大きくなると指摘した。

 映画サイトでは「魂を送る運動でヒットした映画だと分かると、むしろ反感を持つ」と逆効果が懸念される書き込みもみられる。