ミケル・エチャリのコロンビア戦レポートを読む>>

「日本のプレーはスローだった。ポゼッション率は高かったが、横パスが多すぎた。なかなか”ラインを破るパス”を入れられていない。中島翔哉(アル・ドゥハイル)、堂安律(フローニンゲン)の投入で、攻撃はスピードアップしたが……」

 スペイン人指導者、ミケル・エチャリ(72歳)は、1−0で勝利した日本代表のボリビア戦について、そう語っている。

 2012年、エチャリはバスク代表(FIFA非公認)を率いて、ボリビアを6−1と粉砕している。守りにおいては堅実なファイターだが、対応力に限界のあるボリビアを、戦術的に完全に打ち負かした。弱点を見極めるスカウティングは、まさに知将ならでは、だった。

 そのエチャリは、ボリビアと戦った日本をどのように評価したのか。


ボリビア戦で何度もインターセプトに成功していた橋本拳人

「日本はボリビア戦をテストと位置づけたのだろう。主力中心だったコロンビア戦からスタメンを全員入れ替えた。4−2−3−1というシステムで選手を試しながら、高いレベルでプレーできる個々の力量を見極める試合だったか。

 対するボリビアは、4−4−1−1を採用。守備のブロックを作って、カバーを怠らず、我慢強く守った。攻撃に関してはほとんど形を作れなかったが、守備は戦術的に整備されていた。

 日本はボールを支配し、ポゼッション率は70%を上回っている。しかし、プレーはスローだった。とくに前半は横パスが多すぎ、相手が守備ブロックを作る時間を与えてしまい、攻撃は立ち往生した。敵陣深くまで入れない時間が続いた。後半になっても、途中までは、その流れは大きく変わっていない。コンビネーションが円滑でなく、攻撃面は物足りなさが残ったと言える」

 エチャリは苦言を呈する一方、評価する選手もいた。

「ボランチに入った橋本拳人(FC東京)のプレーは特筆に値した。守備面での仕事の質は高かった。スペースを支配しながら、ボールが入るタイミングを迅速に予測。非常に鋭い出足で、インターセプトに成功していた。

 先発メンバーの中で、橋本は一番気に入った選手だ。

 中盤で橋本とコンビを組んだ小林祐希(ヘーレンフェーン)も、悪いMFではないだろう。左利きで、パスセンスには見るべきものがあった。ただ、守備面に課題があるように見えた。もうひとつ前のポジションのプレーヤーではないか。

 前線では、トップ下に入った香川真司(ベシクタシュ)の動きが鈍かった。ボールを受けに中盤に落ち、サイドにも積極的に流れていたが、効果的ではない。連係が思うようにいかず、ロシアW杯のようなプレーは見せられなかった。それは宇佐美貴史(デュッセルドルフ)、乾貴士(アラベス)も同じだろう。とくに宇佐美はほとんど存在感がなかった。

 一方で、1トップに入った鎌田大地(シント・トロイデン)は少なからず可能性を感じさせた。サイドに流れてから、ディフェンスの裏を取るように対角線に流れる動きは、感覚のよさを示していた。GKとの1対1は外してしまったが……」

 日本はボリビアの守りを崩せないまま、後半15分まで突入。そこで、中島、堂安、さらに南野拓実(ザルツブルク)を投入したことによって、局面は大きく変化している。後半31分、鮮やかなカウンターから中島が決勝点を決めた。

「得点シーンは、左サイドで橋本がサイドバックの佐々木翔(サンフレッチェ広島)と連係して、相手選手からボールを奪い返したところから始まっている。

 このカウンターで、堂安はボールをドリブルでポジション的優位なほうに運び、4対3という数的優位の局面を作ったうえで、南野へパス。さらに南野は、左サイドを駆け上がった中島へ、間髪入れずにパスを流している。中島はDFとの1対1から切り返して角度をつけ、右足でニアを破った。

 この夜のベストプレーだったと言えるだろう。

 中島、堂安、南野の3人は、その後も活溌に動き、チャンスを作り出している。

 中島はドリブルから鎌田との連係も積極的に試みていた。パスが跳ね返されても拾い、すかさず左足でGKの頭上を狙い、シュートをバーに直撃させている。そのこぼれ球を南野が狙ったシーンは、結局オフサイドになったが、連続攻撃には迫力があった。また、ショートコーナーから中島と堂安がパスをつなぎ、鎌田のヘディングシュートも演出。リードを許したボリビアが攻めに転じたことで、スペースが空いたこともあったとはいえ、3人の投入で攻撃は活性化していた」

 結局、日本は1−0でどうにかボリビアを下した。エチャリは、その戦いを以下のように総括している。

「日本はボリビアにほとんど攻撃をさせなかった。橋本を中心に安定した堅固な守りで相手に流れを与えず、オフェンシブな戦いを続けた。その点は、正しく評価するべきだろう。そして交代出場した中島や堂安で試合を決めた。

 ただし、敵陣に向かってのプレースピードを上げる、ということを課題のひとつとするべきだ」
(つづく)