テネリフェ島の東側、州都であるサンタ・クルスから南へ20kmほどの場所にカンデラリアという町があります。人口が3万人に満たない小さな町ですが、この町が遂げてきた発展はカナリア諸島の歴史や宗教を語るうえでは欠かせないもの。都会的なサンタ・クルスとはまた異なる、のどかな海辺の散策が楽しい町です。

青い空に白い壁がよく映えている建物は、町のシンボル的存在でもあるバジリカ。カナリア諸島の守護聖人である「カンデラリアの聖母」像が祀られていることから、カナリア諸島における重要な巡礼地にもなっています。

内部に足を踏み入れると、そこに広がるのは息を呑むほどの荘厳な空間。装飾がとりわけ豪華という訳ではありませんが、バジリカが持つ神聖な雰囲気が体中で感じられ、意識せずとも背筋がぴんと伸びてしまいます。

そして前方に祀られているのが聖母像。周りの壁に描かれているのは、聖母を守る役割を仰せつかった天使や農婦、そしてスペインの宣教師たちです。

この聖母像にまつわる伝説が、像は海に流されてしまい、祀られているのはレプリカだというもの。19世紀初めにこの町を嵐が襲い、本物の像は高波によって海にさらわれてしまったというのです。

伝説が真実なのかは誰も分かりませんが、町を彩るミステリーとして訪問者の想像を掻きたてるのは確か。

バジリカの前に広がる広場では、海岸沿いにグアンチェ族の王たちの像が置かれています。カナリア諸島では、原住民であるグアンチェ族がスペイン入植者たちから残虐な扱いを受けたという悲しい歴史もあります。これらの像にはその歴史を忘れてはならないという思いと、グアンチェ族への敬意が示されているのです。

バジリカ前の広場から伸びる通りには、土産物店やカフェなどが並びます。

テネリフェ島が描かれた大きなタオルはビーチで使用している人も多く、実用的なお土産として人気。ほかにもサボテンのジャムやスパイスといったこの地ならではの商品もおすすめです。

小さな町でありながら様々な歴史が詰まったカンデラリア。この町を形作る歴史に思いを馳せながら、のんびり海辺を散策してみてはいかがでしょうか。

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