BMW3シリーズはかつての5シリーズ並みのサイズに!

 2019年3月9日より日本国内での販売が始まったBMWの新型 3シリーズのボディサイズは全長4715mm・全幅1825mm・全高1430mm。全幅が3ナンバーサイズなのは今に始まったことではないが、全長まで小型車枠(4.7m)を飛び出してしまった。もはや、かつての5シリーズ並みのサイズだ。VWポロも現行モデルは全幅が1,750mmと3ナンバーサイズとなった。広大な大地を持つアメリカのクルマならまだしも、狭い道も少なくないドイツ車でさえ肥大化している。

 道路インフラを一から整備しなおすのは難しい。ゲームのように更地から街を作り出すなら道幅も自由に設計できるかもしれないが、古くからの街道の名残があるような街では道幅を広げる余地はほとんどない。それは日本だけの話ではなく、欧州でも古い都市などでは似たような状況にあるはずだ。それなのに、ドイツ車も着々とボディを成長させている。

 冒頭で記したような3シリーズ、ポロといったモデルであればボディを大きくしたところで、上級モデルを超えるわけではないから取り回しなどの実用性をスポイルすることはないだろうが、エントリーモデルが大きくなればおのずと上級モデルも大型化するわけで、全体としてクルマはモデルチェンジごとに肥大化する傾向になっている。

 道幅はそのままにボディが大きくなれば取り回ししづらくなるのは自明。たしかに、無理やり小型車の幅に抑えるよりは、そうした制限をなくしたほうがステアリングの切れ角が大きくなって最小回転半径が小さくなるという個別のケースはあるだろうが、物理的なサイズアップにより取り回ししやすくなるのは考えづらい。

 日本車が5ナンバー(小型車枠)の呪縛から逃れ、グローバル基準でのクルマ作りが進んだ頃から徐々に軽自動車のシェアが増えてきたのには、肥大化をきらうユーザーマインドが示されているのかもしれない。

安全性とスタイリングの差別化がおもな理由

 しかし、仮に日本市場では肥大化を嫌うユーザーがそれなりの数いたとしても、グローバルには大型化は良しとされている。ロジカルにいえば、どんどん厳しくなる衝突安全基準に適合するためにはボディを大きくしてクラッシャブルゾーン(つぶすことを前提とした領域)を増やすしかなく、それがボディの大型化につながったという見方もできる。

 また、クルマに嗜好品としての性格があるかぎり、ライバルと差別化する必要がある。しかし燃費規制、CO2排出規制などによりパフォーマンスでの差別化はインテリジェンスではなくなってきた。そうなると心に訴えかけるようなスタイリングが差別化のポイントとなる。前述のように骨格は衝突安全性から大きくなっている上に、デザイン代も多くとればボディは肥大化せざるを得ない。

 ユーザーは大きくなることで「新型モデルが立派になった」とポジティブに評価しているのかもしれない。自動車メーカーは典型的な営利企業であり、新車を販売することで商売をしている。結果につながっているから大型化のトレンドは止まることはないのだろう。

 逆にいうと小型化することで販売が伸びるような状況になれば、肥大化のトレンドにストップがかかるだろう。いずれにしても、このままボディの肥大化が進んでいけば、いつかは道路インフラからクルマがはみ出してしまう。

 そうなる前に、小型になることがスマートで知的な印象を与えるというトレンドが生まれるであろう。パワートレインの価値がパフォーマンスからエコロジーにシフトしたように、ボディのダウンサイジングが始まるはずだ。しかし、そうなるのは数年内とはいえない市場マインドであることも、また事実だ。