Jリーグが22日に開幕。”アジアカップ組”が語った強い思い。「シーズン前半戦で10ゴール決めてこそ、代表に戻れる」
2月22日に開幕するJリーグ。
2019年シーズンには、”今年ならでは”というテーマがある。
「アジアカップを戦ったメンバーは、どんな思いでリーグに挑むのか」
先のアジアカップでは、森保一監督が主力組とサブ組を分けるような戦い方を実践した。その構図はおおよそ、13人いた欧州・中東組を主力とし、9人の国内組はサブに回るというものだった。
結果、カタールに1−3で敗れた決勝は「先発の11人全員が海外組(GK権田修一が決勝前に欧州移籍を発表)」という構成になった。サブ組の多くは、グループリーグ最終戦ウズベキスタン戦の1戦のみ出場という結果に終わった。
日本代表のJリーグ組とは、すなわち国内で戦うトップ選手だ。
彼らが傷ついた状態でシーズンに臨むのではないか。はたまた、強いリベンジの気持ちを抱いているのか。
この話を聞き出す、格好の機会があった。14日に行われたJリーグキックオフカンファレンス。J1の各チームから選手1人ずつ、監督が集まり、メディアと歓談する場が設けられたのだ。
9人のうち、その場に5人が集まった。
FW北川航也(清水エスパルス)は言う。
「リーグの前半戦で10ゴールは決めたい。それくらいの活躍を見せてこそ、再び代表に呼ばれると思うので」
それぞれに思いを聞いた。
大会5試合出場の北川「自分を出すか、合わせるか。そのバランスが難しかった」
北川は、先の大会の国内組でも大きな注目を集める存在だった。最大の5試合に出場。先のロシアW杯でも実績を残した大迫勇也(ブレーメン/ドイツ)の負傷という側面もあり、多くのチャンスを得たのだった。
しかし結果は大会を通じてノーゴール。ずばり聞きにくいことを聞いてみた。大会の早い段階で1ゴールを決めていれば、流れは変わったのではないか。
「その思いは確かにあります。特に(グループリーグ第3戦)ウズベキスタン戦ではターンからいい形がひとつあったのですが。そこで決めていれば、より自分から気持ち的に入っていけたと思うんですが」
前線の大黒柱とも言える大迫に代わっての出場。大会での北川には”自分らしさ”を前面に出すのか、あるいは周囲のそれまでのスタイルに合わせていくことを選ぶのか。大きな判断が必要なようにも見えた。
「自分の得意なところ、いつもと変わらないプレーをしようと心がけていましたけど、それだけだと(チームとして)上に行けない。周囲を活かすことも考えないと。そこを合わせていくのが、正直なところ難しかったですね」
大会は、悔しい感情として自分の中に残っている。いっぽう今は、清水での新しい戦いに取り組んでいる。代表ではない、Jリーグで成長出来る部分はどんなところだろうか。
「個人のレベルは代表の方が高い、という面はあります。いっぽうでJリーグのチームは通年でやっているので、組織力が高い。そこをどう破るのかという点を考え、成長していきたいです。自分自身はアジアカップを通じ”ボールを失わないプレー”という課題を見つけたので、そこを克服しつつ。体の当て方、向き、ボールの置き方。そういったところです」
佐々木翔 「もっと早く経験できていれば。そういう思いはある」
いっぽう、DF佐々木翔(サンフレッチェ広島)、GKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)、DF三浦弦太(ガンバ大阪)はそれぞれ1試合の出場に終わった。
佐々木、シュミットの二人は森保監督の下で代表デビューを果たした。「フレッシュな感覚」。2人の言葉はそんなことを思わせた。
「チームとしては準優勝という結果もありますが、やはり個人的には試合に絡めなかった点が悔しい。連戦のなか、力になれなかったので。もちろん、自分の力が足りないということですが。一方でアジアでの戦いは自分にとって初経験でした。もっと早く自分はこういった場を経験したかったな、そうすればもっと成長できたかも、と思ったりもします。大会でのあの感覚を忘れちゃいけない。欧州で戦っている選手たちとのトレーニングも含めてです。広島は、ここ数年タイトルから遠のいています。だからタイトルを獲ります」(佐々木)
「アジアカップからは一旦気持ちを切り替え、チームで結果を出すことを考えてトレーニングを積んでいます。代表では、日頃から海外でやっている選手たちと一緒にトレーニングをしました。そのレベル、強度、感覚を忘れずにいかにJリーグでの日常を過ごせるか。そういうことを考えています。今年の自分の成長にとっても大切だと考えています」(シュミット・ダニエル)
三浦弦太もまた、1試合の出場に留まった。
「チームとしても優勝を目指しながらああいう結果になった。個人的にも1試合の出場に終わりました。当然、悔しい思いが強いです。大会での経験を踏まえて、フィジカル面の点を上げていき、そしてよりプレーを突き詰めていくことを考えています。今、Jリーグでは世界で活躍してきた選手と対戦できる。代表チームとはまた違った成長の場だと考えています」
槙野智章「国内組と欧州組。率直なところコンディションの差はあった」
ベテランの槙野智章(浦和レッズ)は、より俯瞰的目線から当時のチームの状況を口にした。
「W杯が終わり、新しい森保ジャパンがスタートするなかで、もちろん自分がピッチの力を示せれば一番でした(2試合に出場)。ただ、それ以外の役割も大きかったと思っています。若い選手に”日本代表とはどういうものか”という点を伝えること。長友(佑都)とともに。だからやるべきことが多い大会でした。食事の際には、槙野、長友の周辺に若い選手を集めて、心構えを話したりとか」
大会当時のコンディションについても、率直に話した。
「正直なところ、海外組と国内組のコンディションの差はかなりあったと思います。自分のなかでも、大会中に試合に出られずに練習だけでコンディションを上げるのは難しいと思いました」
コンディションは国内組の多くがサブに回った背景の一つだったのではないか。この日話を聞いた若い選手たちがそれぞれ「リーグ終了後、しばし休み、その後体を動かしていたから問題はなかった」という内容を口にしていた点とは、対照的だった。
槙野は「準優勝は悔しいが、試合を積み重ね、日本のアジアでの現在地が分かった点は良かった」ともいう。大会を経て、ベテランもまた、Jリーグの場で成長を期す。
「与えられた環境でやるべきことをすること。レッズではそこが目標です。ACLでは優勝したけれど、リーグ優勝は出来ていないので、そこも達成したい。各自が与えられた環境でいかに自分を高める意識を持つか。そこで成長できると思っています」
Jリーグの新たな“顔”。タイ代表たちが語るアジアカップ、そして今季のJリーグ
いっぽう”アジアカップ組”とは、日本代表だけではない。この日は大会でベスト16入りしたタイ代表の3人も顔を揃えた。Jリーグの新しい時代を感じさせる風景だった。
横浜F・マリノスのDFティラートンは昨年のヴィッセル神戸から、チームを移りJでのプレーを続ける。アジアカップでの思いをこう語る。
「ベスト16で対戦した、中国戦のことを思い出します。前半31分に先制するなど、自分たちの良いサッカーで戦っていた。しかし後半に2ゴール奪われ、逆転負け。こちらは同じクオリティの戦いを維持できていたけれど、相手はマルチェロ・リッピ監督が違う戦略を立て、それを実践してきた。悔しい記憶として残っています」
タイサッカー協会の目標は「ベスト16」だったが、選手たちは決して満足していないという。
「アジアカップの結果には満足していません。もう少し上に行けたと思う」
代表チームの仲間からJリーグについて聞かれることもある。タイではこの点に興味津々なのだという。
「私のことよりも、他の選手についてです。中でも去年はイニエスタについて聞かれました。”本当にテレビで観たとおりすごいのか?”、”どうすごいのか”と」
Jリーグ=”イニエスタがいる場所”というイメージは、やはり鮮烈か。ただティラートンは「Jリーグ組」がタイに増えることに決して浮かれているわけではない。
「だからといって、タイ代表が強くなるわけではない。タイの国内組も含めた全体のベースアップが必要。Jリーグでは、フィジカルやスタミナの重要性を学んでいます。代表にも還元していきたい。今季はとにかく少しでも、チームの力になることを目指します」
会場には大分トリニータに加わったMFティティパンも姿を見せた。
「アジアで一番有名な大会に出られたことは光栄。今年はとにかく、J1残留。できることならチームが10位以上になること、そして自分がいっぱい試合に出ることを目指します。Jリーグで学んだ規律、時間を守ることなどの文化をタイ代表にも還元していきたいです」
そしてコンサドーレ札幌で3年目を迎えるMFチャナティップ。タイ代表の大エースだ。
「アジアカップについては、悔しい思いです。タイサッカーの歴史ではベスト16はいい結果かもしれないけれど、もっといい結果を狙っていけたと思うので。Jリーグでは、判断力、フィジカル、ゴールを狙う意識、そして日常生活での規律に学ぶところが多いです。そういった点で成長し、チームに貢献していきたいと考えています」
思う結果が得られなかった悔しさ。アジアカップ代表たちは、それぞれの感情を今季のJリーグにぶつける。
【撮影 岸本勉(PICSPORT)/取材・文 吉崎エイジーニョ】
2019年シーズンには、”今年ならでは”というテーマがある。
「アジアカップを戦ったメンバーは、どんな思いでリーグに挑むのか」
先のアジアカップでは、森保一監督が主力組とサブ組を分けるような戦い方を実践した。その構図はおおよそ、13人いた欧州・中東組を主力とし、9人の国内組はサブに回るというものだった。
結果、カタールに1−3で敗れた決勝は「先発の11人全員が海外組(GK権田修一が決勝前に欧州移籍を発表)」という構成になった。サブ組の多くは、グループリーグ最終戦ウズベキスタン戦の1戦のみ出場という結果に終わった。
彼らが傷ついた状態でシーズンに臨むのではないか。はたまた、強いリベンジの気持ちを抱いているのか。
この話を聞き出す、格好の機会があった。14日に行われたJリーグキックオフカンファレンス。J1の各チームから選手1人ずつ、監督が集まり、メディアと歓談する場が設けられたのだ。
9人のうち、その場に5人が集まった。
FW北川航也(清水エスパルス)は言う。
「リーグの前半戦で10ゴールは決めたい。それくらいの活躍を見せてこそ、再び代表に呼ばれると思うので」
それぞれに思いを聞いた。
大会5試合出場の北川「自分を出すか、合わせるか。そのバランスが難しかった」
北川は、先の大会の国内組でも大きな注目を集める存在だった。最大の5試合に出場。先のロシアW杯でも実績を残した大迫勇也(ブレーメン/ドイツ)の負傷という側面もあり、多くのチャンスを得たのだった。
しかし結果は大会を通じてノーゴール。ずばり聞きにくいことを聞いてみた。大会の早い段階で1ゴールを決めていれば、流れは変わったのではないか。
「その思いは確かにあります。特に(グループリーグ第3戦)ウズベキスタン戦ではターンからいい形がひとつあったのですが。そこで決めていれば、より自分から気持ち的に入っていけたと思うんですが」
前線の大黒柱とも言える大迫に代わっての出場。大会での北川には”自分らしさ”を前面に出すのか、あるいは周囲のそれまでのスタイルに合わせていくことを選ぶのか。大きな判断が必要なようにも見えた。
「自分の得意なところ、いつもと変わらないプレーをしようと心がけていましたけど、それだけだと(チームとして)上に行けない。周囲を活かすことも考えないと。そこを合わせていくのが、正直なところ難しかったですね」
大会は、悔しい感情として自分の中に残っている。いっぽう今は、清水での新しい戦いに取り組んでいる。代表ではない、Jリーグで成長出来る部分はどんなところだろうか。
「個人のレベルは代表の方が高い、という面はあります。いっぽうでJリーグのチームは通年でやっているので、組織力が高い。そこをどう破るのかという点を考え、成長していきたいです。自分自身はアジアカップを通じ”ボールを失わないプレー”という課題を見つけたので、そこを克服しつつ。体の当て方、向き、ボールの置き方。そういったところです」
佐々木翔 「もっと早く経験できていれば。そういう思いはある」
いっぽう、DF佐々木翔(サンフレッチェ広島)、GKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)、DF三浦弦太(ガンバ大阪)はそれぞれ1試合の出場に終わった。
佐々木、シュミットの二人は森保監督の下で代表デビューを果たした。「フレッシュな感覚」。2人の言葉はそんなことを思わせた。
「チームとしては準優勝という結果もありますが、やはり個人的には試合に絡めなかった点が悔しい。連戦のなか、力になれなかったので。もちろん、自分の力が足りないということですが。一方でアジアでの戦いは自分にとって初経験でした。もっと早く自分はこういった場を経験したかったな、そうすればもっと成長できたかも、と思ったりもします。大会でのあの感覚を忘れちゃいけない。欧州で戦っている選手たちとのトレーニングも含めてです。広島は、ここ数年タイトルから遠のいています。だからタイトルを獲ります」(佐々木)
「アジアカップからは一旦気持ちを切り替え、チームで結果を出すことを考えてトレーニングを積んでいます。代表では、日頃から海外でやっている選手たちと一緒にトレーニングをしました。そのレベル、強度、感覚を忘れずにいかにJリーグでの日常を過ごせるか。そういうことを考えています。今年の自分の成長にとっても大切だと考えています」(シュミット・ダニエル)
三浦弦太もまた、1試合の出場に留まった。
「チームとしても優勝を目指しながらああいう結果になった。個人的にも1試合の出場に終わりました。当然、悔しい思いが強いです。大会での経験を踏まえて、フィジカル面の点を上げていき、そしてよりプレーを突き詰めていくことを考えています。今、Jリーグでは世界で活躍してきた選手と対戦できる。代表チームとはまた違った成長の場だと考えています」
槙野智章「国内組と欧州組。率直なところコンディションの差はあった」
ベテランの槙野智章(浦和レッズ)は、より俯瞰的目線から当時のチームの状況を口にした。
「W杯が終わり、新しい森保ジャパンがスタートするなかで、もちろん自分がピッチの力を示せれば一番でした(2試合に出場)。ただ、それ以外の役割も大きかったと思っています。若い選手に”日本代表とはどういうものか”という点を伝えること。長友(佑都)とともに。だからやるべきことが多い大会でした。食事の際には、槙野、長友の周辺に若い選手を集めて、心構えを話したりとか」
大会当時のコンディションについても、率直に話した。
「正直なところ、海外組と国内組のコンディションの差はかなりあったと思います。自分のなかでも、大会中に試合に出られずに練習だけでコンディションを上げるのは難しいと思いました」
コンディションは国内組の多くがサブに回った背景の一つだったのではないか。この日話を聞いた若い選手たちがそれぞれ「リーグ終了後、しばし休み、その後体を動かしていたから問題はなかった」という内容を口にしていた点とは、対照的だった。
槙野は「準優勝は悔しいが、試合を積み重ね、日本のアジアでの現在地が分かった点は良かった」ともいう。大会を経て、ベテランもまた、Jリーグの場で成長を期す。
「与えられた環境でやるべきことをすること。レッズではそこが目標です。ACLでは優勝したけれど、リーグ優勝は出来ていないので、そこも達成したい。各自が与えられた環境でいかに自分を高める意識を持つか。そこで成長できると思っています」
Jリーグの新たな“顔”。タイ代表たちが語るアジアカップ、そして今季のJリーグ
いっぽう”アジアカップ組”とは、日本代表だけではない。この日は大会でベスト16入りしたタイ代表の3人も顔を揃えた。Jリーグの新しい時代を感じさせる風景だった。
横浜F・マリノスのDFティラートンは昨年のヴィッセル神戸から、チームを移りJでのプレーを続ける。アジアカップでの思いをこう語る。
「ベスト16で対戦した、中国戦のことを思い出します。前半31分に先制するなど、自分たちの良いサッカーで戦っていた。しかし後半に2ゴール奪われ、逆転負け。こちらは同じクオリティの戦いを維持できていたけれど、相手はマルチェロ・リッピ監督が違う戦略を立て、それを実践してきた。悔しい記憶として残っています」
タイサッカー協会の目標は「ベスト16」だったが、選手たちは決して満足していないという。
「アジアカップの結果には満足していません。もう少し上に行けたと思う」
代表チームの仲間からJリーグについて聞かれることもある。タイではこの点に興味津々なのだという。
「私のことよりも、他の選手についてです。中でも去年はイニエスタについて聞かれました。”本当にテレビで観たとおりすごいのか?”、”どうすごいのか”と」
Jリーグ=”イニエスタがいる場所”というイメージは、やはり鮮烈か。ただティラートンは「Jリーグ組」がタイに増えることに決して浮かれているわけではない。
「だからといって、タイ代表が強くなるわけではない。タイの国内組も含めた全体のベースアップが必要。Jリーグでは、フィジカルやスタミナの重要性を学んでいます。代表にも還元していきたい。今季はとにかく少しでも、チームの力になることを目指します」
会場には大分トリニータに加わったMFティティパンも姿を見せた。
「アジアで一番有名な大会に出られたことは光栄。今年はとにかく、J1残留。できることならチームが10位以上になること、そして自分がいっぱい試合に出ることを目指します。Jリーグで学んだ規律、時間を守ることなどの文化をタイ代表にも還元していきたいです」
そしてコンサドーレ札幌で3年目を迎えるMFチャナティップ。タイ代表の大エースだ。
「アジアカップについては、悔しい思いです。タイサッカーの歴史ではベスト16はいい結果かもしれないけれど、もっといい結果を狙っていけたと思うので。Jリーグでは、判断力、フィジカル、ゴールを狙う意識、そして日常生活での規律に学ぶところが多いです。そういった点で成長し、チームに貢献していきたいと考えています」
思う結果が得られなかった悔しさ。アジアカップ代表たちは、それぞれの感情を今季のJリーグにぶつける。
【撮影 岸本勉(PICSPORT)/取材・文 吉崎エイジーニョ】