季節ごとの日本の美しい伝統色

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 鶯色、東雲色、朽葉色、縹色・・・。
(うぐいす、しののめ、くちば、はなだ)

古代から始まり昭和中期くらいまでの歴史資料に出展された、日本人特有の色彩感覚で付けられた色を伝統色といいます。

千種類以上の伝統色があるとされ、十二単の色合いをみたフランス人が驚いたといわれます。

数ある伝統色の中から、春夏秋冬ごとに少しだけご紹介します。


◆春

桜(さくら)色
私たち日本人が愛してきた桜の花びらの色です。現代では薄いピンクのソメイヨシノやヤエザクラがおなじみですが、この名前が誕生した平安時代は、赤い若葉と白い花びらが特徴の山桜が主流でした。

鶯(うぐいす)色
ウグイスの羽に似た渋い黄緑色で、ウグイスを飼うことが流行した江戸時代に誕生しました。派手な色が御法度であったこの時代で、渋好みの江戸っ子の間でブームとなりました。

◆夏

藍(あい)色
藍はタデ科の一年草で人類最古の染料とされています。日本の青色系統の伝統色は、ほとんどが藍によるものです。藍染めは発色を鮮やかにするためキハダと呼ばれる染料で下染めをしますが、「縹(はなだ)色」は藍のみで染めた強い青色です。

裏葉(うらは、うらば)色
その名のとおり、葉の裏側の色を指します。欧米にも植物に由来する色名はありますが、葉の裏側に注目し名付けるのは繊細な感性を持つ日本人だからでしょう。裏葉色の食べ物といえば、初夏に旬を迎えるそら豆です。

◆秋

黄金(こがね)色
金色のような光沢のある美しい黄色です。錆びることなく退色しない金は、古くから金属の中でも最上のものでした。黄金色の秋の風物詩といえば、稲刈りがはじまる頃の重そうに頭を垂れる稲でしょう。

葡萄(えび)色
「葡萄」と書いて「えび」とよみます。葡萄色は、ヤマブドウの一種のエビヅルの実が熟した紫みの強い赤です。時代が進み「えび」の漢字に「海老」があてられるようになり、伊勢エビのような赤色と混同されるようになりました。

◆冬

漆黒(しっこく)
伝統色の中でも最も暗い色合いです。漆器のような深みと光沢が特徴です。最上の黒ともいわれ、「純黒」という別名もあります。

利休鼠(りきゅうねずみ)
千利休とは関係はなく、江戸の町人が高尚な色という思いで名前を付けたそうです。茶の湯のイメージからか、緑がかった鼠色です。

季節の移り変わりを自然から感じ取り、微妙に違う色合いを見分ける感性が日本人にはありました。その種類の多さだけでなく色を表現する言葉がまた美しいですよね。

身近で奥深い伝統色に触れることで、日本人に生まれたことの喜びを感じることができるのではないでしょうか。

【参考文献】
長澤陽子(2014)『日本の伝統色を愉しむ』東邦出版.

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