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美しい引退へ向けてのロードマップを引こう!

僕の会社のエラい人はやたらとロードマップを引きたがります。1年、2年先の展望を考えなければ俺の許可は出せないのである、という論調です。「1年先までの間に環境は激変するのでは…?」とか「どうせその場その場で話は変わるんだから考えても無駄では…?」とか「そもそも僕は1年先まで会社にいるのでしょうか…?」などという見解の相違は受け入れられることはありません。そしてまた僕は「守れそうもない約束」を提案書に書き入れるのです。

今日の提案書のお題、それは「平成の小横綱・稀勢の里、いかに引退すべきか」。

「成り行きでいいじゃん」という意見があるのはごもっともですが、横綱は務め方も重要であるけれど、辞め方も重要な仕事。美しく名を残し、いい印象で辞める。それは結果的に協会に残ってからの求心力であったり、選挙のときに誰がくっついてくるかというところにも影響していきます。「え!?もっといろんなこと考えて選挙するんじゃないんですか!?」みたいな意見があるのもごもっともですが、そんな難しいこと相撲取りが考えてるわけないでしょうが!腕力、印象、金、声のデカさ!この4つしかないに決まってます!

腕力はまぁさすがにある程度年数を重ねれば協会に残っている自分以外の全員に対して「俺のほうが強かったな?な?」と言えるでしょうから心配はしていません。金を持ってるかどうかは舞台裏の話なので一旦置いておきます。声のデカさに関してはまったくもって不足しており、積極性とかリーダーシップはカケラもありません。となると印象、「立派な神輿だなぁ」と思ってもらえるようでないと、立派な理事長(※神輿)はつとまらないのです。

横綱の引退には大きく4つのルートがあります。

●美しく退く「美学型」
●気力体力尽きて散る「限界型」
●周辺から追い詰められる「圧力型」
●デンモクで他人を殴って辞める「不祥事型」

※上のものほど見栄えがいい

まず絶対に避けたいのは不祥事型です。コレで辞めるとそもそも引退後に角界に残ることは難しく、ただのデブに戻ります。飲酒運転、控え室での付け人殴打、デンモク、借金、ちゃんこが不味いので揉める、八百長、野球賭博、大麻、あーす、内閣府に告発状提出、勝手にテレビ出演、訴えは事実無根であることを認めない、兄貴と絶縁、宮沢りえに愛情がなくなった、知らない宗教…とにかく全部ダメです。品行方正、波風立てずに生きていくことは大前提として必要です。

一番イイのは美学型ですが事実上無理です。これは世間や横綱審議委員会がまだ引きとめるくらいのタイミングで、自ら切り出すパターン。たとえば千代の富士などがそうですが、千代の富士は「優勝⇒負傷により途中休場⇒全休⇒出場するも場所中に引退」と最後の優勝からわずか3場所後に引退を決めています。成績自体はかげりも見えていましたし、本人のなかには前々から葛藤もあったのでしょうが、まだまだチカラは残しており、優勝回数記録にもあと1と迫っていたところ。ここで現役に執着しないあたりが、あの美しい引退会見となり惜しまれつつ土俵を去る美しい引き際となったのです。

ただ、美しく退くためにはどこかで1回優勝なり準優勝なりをして惜しまれないといけないわけですが、どうもこれは無理そうであります。11日に初日を迎えた九州場所などは、本来であれば白鵬・鶴竜休場によって優勝チャンスの場所なのですが、初日から貴景勝とのボクシング勝負に敗れ、前のめりでK.O.(※格闘ゲームの声で)されました。優勝チャンスというか、ひとり横綱で休むに休めない心理があだとなって金星を大量に配給したあげく、無駄に引退への猶予を失っていきそうなピンチ場所となりました。稀勢の里のチャンスではなく、平幕力士のチャンスです。「鶴竜だけ出場して、優勝争いは鶴竜にさせながら、自分は10勝くらいでお茶を濁す」がベストの延命策だったのに、先に休まれてしまってつらい!

↓しかも、また新しい苦手力士が誕生してしまった!

うーむ、貴景勝に完全に間合いをコントロールされたまま、足を滑らせてしまったか…!

通算対戦成績2勝3敗と普通に負け越してるし…!

まったくつかまえられないので、何度やっても苦労しそうだな…!

突き放してるんじゃなくて、まわしをとりたいのに、とれないんだよ!

そして次善の策である限界型というのも難しい。これは怪我や病気によってチカラを出せなくなり、最後は「無様」と言えるような成績となって砕け散る道ですが、これをやるんだったら去年でした。横綱昇進、翌場所大怪我をしながら逆転優勝、その後成績不振が2場所ほどつづき、そこから全休モードに入り、平成三十年初場所に自ら進退をかけて出場し、ボロボロに負けて辞める。これならば「怪我が愛すべき横綱を短命に終わらせた…」とみんな泣けたと思うのです。

しかし、怪我は治ってしまった…。治療している間にちょっと太ったり稽古不十分で弱くなっただけで、怪我は治ってしまった…。先場所は中途半端に勝ってしまったし、秋巡業も皆勤したし、稽古で好調なところを見せてしまった…。「怪我がもう限界だ!」という雰囲気は薄れ、「ただただ弱くね?」という雰囲気になってしまった。株で損切りタイミングを見逃したような痛恨の事態でした。

その点、貴乃花などは「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!」の優勝から7場所全休⇒12勝3敗で準優勝⇒怪我がぶり返して全休…ときた平成十五年初場所でもとから痛めていたヒザに加えて肩にも怪我を発症し、一旦休場、しかし再出場とまさに自らを試すように土俵にあがりつづけ、最後は「心の底から納得しております」と土俵をおりました。7場所全休するほどの大怪我から復帰を目指したけれど、完治にはいたらずさらなる怪我もあって…というところが何とも言えず美しい。真っ白になったジョーのように、砕け散る感じがいかにも貴乃花らしい散り際です。

しかし、稀勢の里の怪我は治ってしまった…。

本当に完治したかはともかく「治った雰囲気」になってしまった…。

↓やめろ!好調とか書き立てるの!XJAPANのYOSHIKIさんの首みたいに「一生治らない怪我」を抱えていることにしようや!


「稀勢の里は残り少ない土俵生命を燃やし尽くすかのように稽古場で奮戦し…」とか!

「ロウソクは消える前に一瞬燃え盛ると言うが…」とか!

「稽古とは言え妙義龍相手に2敗を喫するなど限界説は根強く…」とか!

もうちょっと言いようがあるだろうが!


こうなると現実路線としての「圧力型」が浮上してきます。本人にまだ意欲や余力、改善の見込みがあったとしても周辺が追い詰めていき「次の場所は心に想うところがあるかと思いますが」「稀勢の里にとって大事な場所になるだろうね」的な圧力をかけていくパターンです。角界にとって圧力はほとんど法律のようなものですので(※ハッキリとは言わないだけの有形無形の圧力)、圧力即進退です。

この圧力は周辺状況によって左右されるところもあり、ほかの横綱が土俵を支えていて人気面で困っていなかったり、ほかに横綱がいなくて今辞められると人気面で困る状況であれば「もうちょっと様子見ようか」となってみたり、若手の新星が台頭してきていれば「もうポンコツはクビでええんちゃう?」と幕引きモードに入ったり、その場その時で判断も変わります。

このパターンでパッとしない成績のもとで引退するような場合、非常に印象というものは悪くなります。「横綱にさせたこと自体が間違い」みたいな立ち戻っての非難なども出てくるでしょう。どうせパッとしないなら、派手に怪我でもやりまして、「体力の限界、やる気もなくなり…」と限界型に無理やりにでも移行したほうがマシ。「やめろや」と言われて辞めるのは、タダでさえ薄い横綱感がますます薄れてしまい、将来へのマイナスとなります。

まさに八方塞がり。辞めるに辞められない状況。

こうなったら、新たなパターンで美しい引退ロードを引くしかありません。とにかく印象さえよければ実態はどうでもいいのですから、雰囲気、雰囲気だけイイ感じにして引退する道を模索しましょう。そして、怪我という引退ビッグチャンスを見逃した反省を踏まえ、今度は機を見て敏に動きましょう。好球必打、チャンスは絶対逃さないの心で!

↓「これなら引退も仕方ないし、惜しまれつつ送り出すしかないな」という次のチャンスはコレだ!

●ノーカウント型
成績とか怪我とかじゃなく、なんもかんもなかった感じにするパターン。一番わかりやすいのは「事故とかで急に死んじゃう」というパターンですが、これだとせっかく引き際の印象をよくしても将来につながりません。技術の発展が今日明日で間に合えば「妊娠」とかでもいいのですが、さすがに今日明日では稀勢の里を妊娠させる技術は無理でしょうか。

ここはひとつ子育てによる働き方の変化ということでどうでしょう。急に今日明日でひょんなことからシングルファザーとなりまして、日々の子育てなどがどうしても土俵とは両立できないということで、指導者に転身という形ではいかがか。他人の赤ちゃんは頻繁に抱っこしているのですから、たまには自分の赤ちゃんを抱っこすることを最優先する力士がいたっていいはず。そういうの全部女将さんに任せるってのも古いですしね!

●善行型
不祥事型と正反対に、善行の結果として土俵を去るパターンはどうでしょう。「新幹線に轢かれそうになっている子犬を助けた結果、二度と相撲が取れない身体に」とか、「海獣に襲われている少年を助けた結果、片腕を失い」とか、「寒さに震えている子どもに自分のまわしを分け与えてしまってチカラが出ない」とか、善行のために自身の土俵生命を絶ってしまうということであれば、印象はグッとよくなるはず。デンモクで殴られそうな力士がいたら、間に割って入ってそのデンモクを額で受けにいくような心構えでチャンスを待ちたいところ。

●世代交代型
千代の富士と貴乃花の因縁で「すごくイイ話」みたいに語られているアレはどうでしょう。千代の富士が貴乃花の父・貴ノ花を引退に追い込み、今度は息子の貴乃花が千代の富士を引退に追い込んだという、美しい世代交代で土俵を去るというのは。これなら限界とも圧力とも関係なくなりますし、ちょっとカッコよくなります。

「俺の時代はもう終わりさ」「見ろよ、あの若いチカラを」「新時代を作るのはアイツらさ」とでも言いながら、パッと引退すれば逆に格が高まったりする感じさえあります。「若いヤツの将来性を見抜いた俺すげー」的な。期待の若手と戦い、見事に破れたら即座に引退する。そんな機会を探す日々としていきましょう。


あらかじめ意識してないと見逃してしまうチャンスを見逃すな!

チャンスは不意にやってきます!

そして僕は気づきました。番付を眺めながら、幕内最年少でありながら三役というなかなかの地位につき、しかもドラマを背負った力士の存在に。その名は貴景勝光信。現在、幕内最年少の22歳でありながら、9月場所は小結の地位で9勝の好成績をあげた期待の新鋭。そして彼は、惜しまれつつ砕け散った平成の大横綱・貴乃花の忘れ形見です。

貴乃花の「貴」と、景子の「景」、そこに勝氏の「勝」の字を合わせた息子・分身とも言える弟子は、貴乃花親方が角界を去ったのちも胸の奥にその教えを宿し、相撲道に打ち込んでいます。貴乃花イズムを継いだ、最後の弟子たちのひとりです。貴景勝に敗れたのを機に土俵をおりれば、真剣勝負を旨とした大横綱・貴乃花、小横綱・稀勢の里、継ぐ者・貴景勝の世代交代ストーリーとして美しい系譜を描くのではないでしょうか。

「よし、貴景勝に負けたら引退だ!」
「次に対戦するのは…」
「ていうか、昨日してた」
「昨日負けてた」
「今がチャンス!!」

今日、今日です。今日が千載一遇のベストタイミング。今なら強いとか弱いとかが確定する前にウヤムヤにできますし、世代交代感も演出できます。貴乃花親方が引退したばかりという時期も、合わせ技一本で世間の涙を誘いそう。貴景勝に自分の四股名から強引に一文字を贈り、「貴の景勝」とでもしてもらえば、貴イズムの継承という立てつけでの引退にも説得力が生まれるでしょう。

引退しよう、今日しよう。

もうすぐ今日の取組が始まっちゃうので、30分以内くらいで協会にファックスで連絡を入れましょう!

もう一度優勝して美学型の引退をできそうもないのであれば、今日が引退ベストタイミングだと僕は思います!

↓完璧やん!これぞ世代交代という完璧な見栄えやん!もはや座布団さえ飛ばない!(※九州場所の座布団はデカくて投げられないからだけど)


「真剣勝負で負けました」
「私には横綱のチカラはありません」
「ただ、若手は育っているという」
「頼もしさも感じました」
「横綱・稀勢の里は役目を終えた」
「今は素直にそう思えます」
「これからは新しい夢」
「理事長という夢に向かって」
「一歩ずつ歩んでいきます」
「そこで何をするかは」
「今はまだ胸に秘めておきますが」
「不惜身命、不撓不屈の精神で」
「角界の改革に取り組む所存です」

よしできた!

ロードマップが今できた!


もう一回優勝する、また怪我する、今日辞める、三択でどうぞ!