動物界を襲う“超高齢化”の波、元気がなくなった動物たちをどうする?
人間社会だけではなく、動物園でも高齢化が進んでいるのをご存じだろうか。
年老いた動物たちをどうする?
その理由は、日本の場合とまったく同様で、出生数が少ないためだ。また獣医技術の向上により、飼育動物の寿命が延びてきているため、超高齢社会を迎えている。
従来は、足りない動物を海外からの輸入によって補っていたが、ワシントン条約により、ライオンなど、絶滅のおそれがある生き物は取引が制限されているのも一因だ。
上野動物園に続き日本で2番目に歴史のある『京都市動物園』でも高齢化の波が。なかでも、ライオンのナイルは国内最高齢の24歳。市民らに長年愛され続ける人気者だ。園の「種の保存展示課」課長で獣医師の和田晴太郎さんは、
「ライオンの飼育下での寿命はおよそ20歳なので、ナイルはかなりの高齢。えさを地面に置いても、首を下げると痛いのか、飲み込みにくいのかで、食があまり進みません。そこで、首を下げなくても食べられるように工夫をしています」
人気の動物が年老いて元気がなくなったからといって、新しい動物を迎え入れるよりも、残りの生活を手厚くサポートし、ありのままを見せることを重要視。ライオン舎には「お知らせ」を掲示。「高齢のため、やせて動きがスムーズでないこと、生活の質が低下しない限りは安楽死はしないこと」を伝えている。
貴重な動物たちの個体を守るため、動物園では長年にわたり、さまざまな努力を続けている。そのひとつが、絶滅の危機にある生き物を保全するため飼育・繁殖する“種の保全”だ。
京都市動物園も、この取り組みに積極的。2008年に京都市と京都大学で、野生動物保全に関する研究と教育の連携協定を結び、種の保存や環境教育に取り組んでいるのだ。
“性教育”もしっかりと
例えば、ニシゴリラは、日本で初めての繁殖に成功。ゴリラの研究で著名な京都大学総長・山極壽一先生には特別学術顧問に就任してもらい、相談に乗ってもらっている。
「飼育員は常に観察できるわけではないので、ビデオカメラで撮影し、大学とも協力し映像を解析するなどしています。健康管理に役立てるほか、夜間の交尾がいつ、どういう環境で行われたかなど、日常の飼育管理や繁殖について有益な情報が得られます」(和田さん、以下同)
繁殖がうまく進み、ゴリラは現在3世代目。最近は動物を自然に近い形で飼育・展示する動きがあり、群れの動物は群れ、家族で暮らす動物は家族で見せる。
「ゴリラ舎では、モモタロウ&ゲンキ夫婦と、長男のゲンタロウが暮らしています。ゲンキは妊娠中で12月に出産予定。ゲンタロウは6歳で“お年ごろ”。パパとママの交尾を見て興味を持っており、自然な“性教育”もできています」
そのほか、世界的に希少なアジアゾウについても、ラオスと共同で「ゾウの繁殖プロジェクト」に取り組んでいる。
動物の命や動物福祉等への取り組みは、すぐに答えが出る問題ではないが、知恵を出し合えば、前に進むことはできるのだ。