すでに加盟組合のトヨタ自動車では今春闘で家族手当について期間従業員に対し、正社員と同等の子ども1人つき2万円を支給することを決めている。 すでに先行してこの問題に着手している企業もある。クレジットカード大手のクレディセゾンは、非正規社員を含めた雇用形態による社員区分を撤廃して全員を無期雇用とし、賃金を含むすべての処遇制度を役割等級制度で一本化した「全社員共通人事制度」を2017年9月から導入している。

 同社の従業員数は約3900人。従来の同社の社員区分は無期雇用の総合職社員、専門職社員、有期雇用の嘱託社員、メイト社員の4つに分かれていた。総合職は全体の4割強の約1700人、専門職社員が約1200人、嘱託社員が約150人、メイト社員が約900人という構成だ。

 専門職社員や嘱託社員は特定の職務を担当し、メイト社員は定型的な事務や電話応対・営業サポートを担うなど業務範囲が限定されていた。また、メイト社員の労働時間は1日5.5時間の短時間勤務から7.5時間の間で選択できる仕組みであった。 従来の人事制度は無期雇用の総合職と専門職社員は職能等級と職務等級があり、課長までは職能給・職務給の2本立て(部長職以上は昨年5月に職能等級を廃し、給与は職務給に一本化)。有期雇用の嘱託社員は職務に応じて個別に年収額を決定する月給制。同じく職務限定のメイト社員はスキルや習熟度別の賃金体系による時給制だった。給与以外の処遇では総合職と専門職には賞与や退職金制度があったが、メイト社員の一部を除いて嘱託社員・メイト社員には賞与・退職金制度はなかった。

 新たな役割等級制度の役割グレードは、一般職層がG1 〜G5の5段階。管理職層は大きくM(課長職)とGM(部長職)の2階層に分けた。グレードごとに期待する役割を定義しているが、G1は旧メイト社員の事務業務、G2は同じく電話応対・営業サポート業務と位置づけ、旧総合職・専門職・嘱託社員はG3以降に配置した。 大きく変わったのは基本給以外の部分で、旧総合職にあった賞与などの手当、退職金制度、福利厚生も同一処遇とした。同社の賞与は年初に業績目標を設定し、その達成度を評価する目標管理の結果で決まる。G1、G2に多く所属する旧メイト社員も同様の仕組みで支給される。また同社の退職金制度は04年に確定給付型から確定拠出年金に移行しているが、会社拠出分として年収の7%を12カ月に分割して支給している。しかも拠出金は全額を確定拠出に振り向けるか、あるいは前払いとして受け取ることもできる(確定拠出50%、前払い50%の選択も可能)。それ以外の手当として「子女教育手当」も支給される。

 同社は昨年5月の制度改定でいわゆる属人手当を基本的に廃止している。従来の配偶者と子どもを持つ社員に扶養手当を支給していたが、配偶者分の手当を廃止し、子どもの数に応じて支給する子女教育手当に再編した。この手当は扶養義務に関係なく支給される。 もう一つの注目点は労働時間も全社員統一の仕組みに整備したことだ。前述したように旧メイト社員は5.5 〜7.5時間の間の勤務が多かった。また旧総合職の所定労働時間は7.75時間。そして育児・介護を理由にした2時間、1.5時間、1時間短縮の短時間制度があった。これをメイト社員に合わせる形で所定労働時間7.5時間に短縮。さらに育児・介護以外の理由でも5.5 〜7.5時間の間で30分単位で短縮できる短時間勤務制度に変えている。

 今回、同社が人事処遇制度を1本化し、同一労働同一処遇に踏み切った最大の理由は、主力のクレジットカード事業のビジネスモデルの変革に伴う社員の活用と戦力化にある。人件費は以前より4%膨らむが、新制度の運用によってこれまで以上に社員の仕事への意欲を引き出したいとの狙いがある。 時間外労働の削減はすでにだいぶ前から多くの企業がノー残業デーや定時退社の奨励などの施策を実施しており、全体の残業時間も徐々に減少している。ただ改正労働基準法の「罰則付き時間外労働の上限規制」が法制化されると、1人の違反者が発生するだけで労基法違反になる。今以上により徹底した労働時間管理が求められてくる。