ポイントを使いこなせていますか?(写真:serts / iStock)

年度末となる3月が迫ってくると、はっと思い出すことがある。手持ちのクレジットカードのポイントと景品との交換期限がこの時期なのだ。

多忙な世の中、貯めたポイントを使い損ねて失効する人は少なくないと聞く。ポイントを効率よく貯めるワザは世の中にあふれており、達人と呼ばれる人も多い。しかし、知恵を駆使して貯めた虎の子のポイントを、どう使えばよいのかについてはあまり話題にはならない。おカネと同等の価値を持つポイントは、その使い方次第で節約に大きな貢献をしてくれるはずなのだが。


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JCBが毎年実施している「クレジットカードに関する総合調査2017年度版」によると、クレジットカードの一人あたりの保有枚数は平均3.2枚、実際に持ち歩くクレジットカードの枚数は平均2.1枚だそうだ。さらに、保有するカードについて重視する点として、「ポイントやマイルが貯めやすい」が約50%と最も高い。

クレジットカードのポイントを愛する人にとって、最終ゴールは飛行機のマイルだとも聞く。とはいえ家族での無料旅行を叶えるマイル数をコツコツ貯めるより、LCCを予約する方が手っ取り早い世の中になった。そもそも、旅行という非日常体験のために時間をかけてポイントを貯めるのは合理的なのだろうか。そこに、気軽にポイントを使えなくしてしまうトラップがあるのではないか。

今回の記事では、ポイント使いの達人になるために、なぜ私たちはポイント好きで、かつうまく手放せないのかを考察してみたい。

ポイント=特別な価値のあるおカネ?

そもそもポイントは、使った金額に応じて0.5〜1%程度付与される“おまけ”である。ポイント相当額を割引してくれるクレジットカードもあるが、おまけとしてもらえるほうがトクした実感を感じやすいのか、多くのカードはこっちを採用している。いわば、空きビンに貯め続ける小銭貯蓄みたいなものかもしれない。

「メンタルアカウンティング」という、行動経済学でよく出てくる用語がある。「心の会計」と訳されることが多いが、それによると私たちは心の中で貯蓄しているおカネや支払うおカネをそれぞれ別のお財布に仕分けして管理しがちだという。

定期預金の低い金利には怒りを覚えるが、リボ払いに年15%近い手数料を払うことはなんとなく受け入れる。そうして、大きな買い物の際に貯蓄を崩そうとはせず、手数料のかさむ分割払いを選んでしまう。“両方の財布”をあわせて考えれば損得は明らかなのに、手持ちの貯蓄と消費で使うおカネはつい別の勘定にしてしまう。

筆者はポイントにも、この「メンタルアカウンティング」の呪文がかかっていると考えている。「なるべく多く貯めて特別なものに使いたい」「これは普段使いのおカネとは別枠だ」。この「ハレ=特別なものに使うべき」という認識が、ポイントを使えなくしてしまう心理的ハードルなのではないか。そういう意味で、マイルに交換して無料航空券を、というゴールはぴったりなのだ。特別感、非日常感、そして無料という誘惑。これではなかなかポイントは使えない。

さらに、ポイントを付与する側にとっても都合がいい。一定量までポイントを貯めようというモチベーションは、すなわち、相応の金額を自分のところのカードで支払い続けてくれるという意味だからだ。年会費を払ってでも高還元率のクレジットカードを使い続けるというお客とは、長くお付き合いをしたいと思っているはずだ。中には年間使用金額に応じて、ポイント付与率を上げてくれるカードもある。ポイントとは、たくさんご利用くださるお客様への感謝の印であり、ご褒美なのだと思えば腑に落ちるというものだ。

節約達人になれる「心の会計」を解く方法

このように、なかなか使うに至らずポイントには悩ましさがつきまとう。ただ、「いつかいつか……」と年単位で貯め続けるうちに、ポイントと交換したかったものも変わっていったりする。ますます、使うタイミングが難しくなる。

ポイントをうまく使えるようになるには、どうしたらいいか。手っ取り早い解決策は、ポイントを「使いやすい形」に変えることだ。たとえば、現金や電子マネー、共通ポイントなどに交換すれば、「特別なおカネ」から「気軽に使えるおカネ」に生まれ変われる。

まずは現金。ポイントを現金化してチャージできるプリペイドカードが増えてきた。三井住友VISAカードのポイントをチャージできる「三井住友VISAプリペイド」(1P=5円)、ドコモの携帯利用料などで貯まったdポイントをチャージできる「dカード プリペイド」(1P=1円)、LINEポイントをチャージできる「LINEペイカード」(1P=1円)などがあるが、これらのプリカを入手し、ポイントを現金に変えればVISA、マスター、JCBの加盟店で使うことができる(チャージには一定のポイント数が必要)。また、ポイントを翌月あるいは翌々月のカード利用代金からの値引きに使えるクレジットカードもある。これならポイント充当分が引き落とし口座に残るわけだから、有意義な使い方と言えるだろう。

現金に変えられない場合も、nanacoや楽天Edy、SuicaやPASMOなどの電子マネーに交換できる場合は多い。コンビニや売店、ドラッグストアなどでよく買い物する人は、これに変えれば日々の細々した出費を賄うことができるだろう。マイルを貯めている人は多いだろうが、旅行が実現しなかった時は共通ポイントに変える方法もある。JALのマイルはPontaやdポイント、ANAはTポイント、楽天スーパーポイントに交換可能なので、外食や別のレジャー代金、買い物で使って楽しめばいい。

交換する際は、日ごろ自分がよくおカネを使っている場面や場所を思い浮かべて、そこで使いやすい電子マネーや共通ポイントを選ぶのがコツだ。交換率だけにこだわると失敗することもあるからだ。

筆者は以前、クレジットカードのポイントでやたらとPontaが貯まってしまい、使い先に困ったことがある。頼みのコンビニも、ローソンだけが近所になかったのだ。最寄り駅エリアにローソンが開店した時は、実にホッとしたものだ。それからは、ワインやビール類をPontaで購入し、小遣いを節約している。

ポイントをモノに変えるなら、高級牛肉はご法度

使途の汎用性が高い現金や電子マネー、共通ポイントに形を変えるのが、ポイントを使いやすくするコツだと書いたが、違う選択肢もある。必ず使うモノや用途に交換しつつ、日ごろの節約につなげる方法だ。

クレジットカードの中には、ポイントをコーヒーチェーンのプリペイドカードにチャージできるものがある。dカードはたまったdポイントを、ドトールバリューカード、スターバックスカードにチャージできる。JCBのOki Dokiポイントも同様、また、三井住友VISAワールドプレゼントポイントはスタバに加えてタリーズのカードにもチャージが可能。頻繁にカフェでコーヒーを飲む人なら、その分出費が減らせるだろう。

モノに交換する場合も、ぜひ同じ考え方をしてみよう。筆者はポイントを食品に交換する場合は、特別感のある鰻や牛肉などではなく、オリーブオイルや味噌など毎日使う調味料を選ぶようにしている。必ず必要になるもので、かつ自分ではなかなか買えない価格帯のワンランク上の品物が手に入るからだ。男性なら、こだわりの豆を使ったコーヒーや、地ビールや焼酎などの嗜好品もいいかもしれない。家計費から代金を支払うことなく、いつもよりちょっと良いものが手に入るわけだから、満足度の高い使い道だと思う。

自分が毎日のように買っているものをポイントで代替えできれば、その分大事なおカネを目減りさせずにすむ。ポイントを特別な日のためのモノではなく、普段のモノのために使える人が、「節約達人」の呼び名にふさわしいのではないだろうか。