「ムーミン谷は架空の場所であり、フィンランドが舞台と明示されていない」 阪大スウェーデン語研究室がセンター地理の出題に疑問
センター試験の地理Bで出題されたムーミンの舞台が話題となる中、大阪大学大学院のスウェーデン語研究室は1月15日、この問題への見解を公式サイトに掲載した。問題の解答では、ムーミンの舞台はフィンランドであるとされたが、
「『ムーミン谷』は架空の場所であり、フィンランドが舞台だと明示されておりません」
と、その不正確さを指摘している。
アニメに「フィンランドが舞台」という設定がないと問題が成り立たない
1月13日に実施されたセンター試験の地理B・第5問の問4では、「ムーミン」と「小さなバイキングビッケ」の2つのうち、どちらがノルウェーでどちらがフィンランドを舞台にした作品なのか判断する必要があった。試験後には、ムーミンや駐日フィンランド大使館の公式ツイッターが設問に言及するなど、波紋を広げている。
こうした中、大阪大学大学院の言語文化研究科スウェーデン語研究室は、「平成30年度大学入試センター試験 地理歴史(地理B)第5問問4への見解」を発表。この設問は、
「ムーミンがフィンランドを舞台にしたアニメーションだと知らなくても、バイキングはノルウェーに関わるものだから、消去法からタ(=選択肢)の『ムーミン』がフィンランドに関するものだ」
と判断できるとしている。"ムーミンの舞台がどこなのか知らないと解けない"という批判を退けた形だ。
しかしその上で、
「『ムーミン谷』は架空の場所であり、フィンランドが舞台だと明示されておりません」
とこの設問の不正確さを指摘した。原作からは、ムーミン谷が北極圏のどこかにあると推測することができるが、フィンランドだとは書かれていないというのだ。
そのため、この設問が成立するためには、
「『ムーミン』と『小さなバイキング ビッケ』の原作が日本で翻案、アニメーション化された時点で、アニメ作品のなかだけで『フィンランドのどこか』、『ノルウェーのどこか』という設定が加わっているということが前提となります」
としている。
スウェーデン語研究室は、大学入試センターに確認を求める予定
この「見解」はネットで話題となり、「研究者としちゃ乱暴過ぎる理解だという指摘はそのとおりだろうね」と共感の声が上がっていた。「小さなバイキング」の舞台も実際には、「ノルウェーとスウェーデンの海岸」とされており、"ムーミンがフィンランド"で"バイキングがノルウェー"というのはあまりにも雑な理解だということだ。
一方で、「バイキング=ノルウェーっていう勉強の中で習う知識で解ける問題」という指摘もあった。高校で勉強する内容には限界がある。ある程度、紋切り型の理解になっても仕方がないということなのかもしれない。
同研究室では、「大学入試センター試験の社会的信用を維持できるようにとの思い」から、これらの問題点について大学入試センターに確認を求めていくという。