アクション映画では事件の現場となり、ホラー映画では殺人マシンとして襲いかかってくることもあるエレベーター。映画で描かれるエレベーターの描写は実際に起こりうることなのか?ということについて、エレベーターの技術者が次々に突っ込みを入れていくムービーが公開されています。

Goin' Down! Myths of Movie Elevators - Reelistic - YouTube

画面左側に座る男性が「エレベーターマスター」ことJohn Holzerさん。本職はエレベーターの技術者だそうです。



まず登場したのは映画「シャイニング」



シャイニングにはエレベーターの扉の隙間から大量の血が流れてくるシーンがあります。現実的に見て、どのくらいの量の血液をエレベーター・シャフトは維持することができるのでしょうか。



Holzerさんによるとエレベーター内に入る液体は2000ガロン(約7570リットル)ほど。しかし、映画の中ではエレベーターそのものではなく昇降路から血液が流れ落ちてきているように見える、とのこと。



「昇降路とは何ですか?」



昇降路はエレベーターが行ったり来たりする場所、車でいう道路に当たる部分です。つまり、映画シャイニングではエレベーターのかご内ではなく、昇降路から血液が溢れているため、約7570リットル以上の大量の血液を溢れさせることも、実際に可能なわけです。



続いての映画は、「スパイダーマン:ホームカミング」



この映画で、スパイダーマンは落下するエレベーターをクモの糸でキャッチし……



階上から落下を防ごうとします。



Holzerさんによるとエレベーターのかごの重さはプリウスほどなので、プリウス1台を支えられるほどにスパイダーマンの糸が強くスパイダーマン自身も強靱であれば、この描写は正しいわけです。



また、同映画ではエレベーターのカゴの上部から学生たちを救うシーンが描かれました。



エレベーター内部に閉じ込められた時、内側からハッチを開けて脱出することは現実に可能なのでしょうか?



この点、エレベーターには実際に規則で定められたサイズの「脱出用ハッチ」が備えられており、避難に使われます。



避難用ハッチが見当たらないエレベーターはつり天井になっており、天蓋を外すことが可能。



そして避難用ハッチは内側から開けるのは簡単ですが、外から開けるのは非常に難しいということも語られました。



「ミッション:インポッシブル」では「エレベーターをハッキングする」というシーンが描かれました。



このシーンでは、エレベーターの昇降路の上部にスパイクが設置されており……



イーサン・ハントの同僚にスパイクが刺さる、という描写がありました。



「エレベーターシャフトにスパイクって取り付けるもの?」と聞かれて「エレベーターが作られたら一番最初に取り付けるのがスパイクだよね」と答えるHolzerさん。



もちろんこれは冗談。「エレベーターにスパイクって、全く意味が分からない」そうです。エレベーターのかごの上に上ったからといってスパイクが目に刺さることはまずなく、安心してよさそう。



また、同映画にはエレベーターの下に人が隠れるシーンもありますが、これは現実にありうるとのこと。エレベーターの多くには「エレベーター・ピット」と呼ばれるスペースがあり、技術者がエレベーターシャフト内にいる時にトラブルがあっても安全に逃げられるようになっているそうです。



「夢のチョコレート工場」では縦方向だけではなくさまざまな方向に移動することができる「ウォンカベーター」が存在します。



垂直・水平のどちらにも移動できるエレベーター「MULTI」は実際に作られており、現実のものとなりつつあります。



ただし映画に登場するような空中を漂うウォンカベーターは、ウィリー・ウォンカの魔法なしでは作れません。



「ダイ・ハード」でジョン・マクレーンがてこの原理を使ってエレベーターの扉を開けたシーン。これは実際に可能なのでしょうか。



現実には、エレベーターの扉を無理やり開けようとすると、安全性のため自動的にエレベーターが停止してしまうとのこと。消防士などは火災の現場でエレベーターの扉を開けるツールを持っていますが、これにはドアの破壊が必須だそうです。



「スピード」では、エレベーターを攻撃するために「ケーブルを破壊する」という方法が取られました。



映画で犯人はエレベーターの掛け金を狙っているように見えますが、これは非常に「いい仕事」とのこと。



ケーブル部分で火花が散り……



時間をかけてエレベーターは停止。この時、エレベーターは安全装置によって支えられています。



この状態で安全装置を攻撃すると支えるものがなくなったエレベータは落下。大事故につながります。スピードはエレベーター攻撃の見本とも言える正確性だったわけです。



そしてエレベーターが破壊された後も階数を知らせるライトは高速で変化しつづけますが、これはエレベーターの種類にもよるものの、実際にありうることだとHolzerさんは語りました。



そして、最後はエレベーターが意志を持って人々を攻撃する「ダウン」という映画。ここでは、エレベーターが女性の首を扉に挟んだまま急降下を行うという恐ろしいシーンが描かれますが……



恐ろしいことに、実際にこのような事態はありうるとのこと。世界各国の監視カメラで同様の事件が起こった時の様子が記録されているとHolzerさんは語ります。エレベーターは国によって標準が定まっていないことがあり、映画とは逆に「意志を持たないために」事故が起こってしまうそうです。